第68話 最終日前日
それからはあっという間だった。あっという間に1週間が終わり、金曜日はまた理由をつけて未羽君の部屋でお泊まりして、土日はゆっくり休んで、実習最後の1週間が始まる。
あっという間に時間は経ち、木曜日、水曜日に行われた小テストの結果が返される。未羽先生が、生徒1人1人にコメントしながら小テストを返して行く。
「よく頑張ったね」
そう言われて未羽先生から小テストを受け取った後、りんちゃんは笑顔で教室の後ろにいた私を見てくれる。昨日までずっと、2人で頑張った成果が出たみたいだった。私はおめでとう。と言うように口を動かすと、りんちゃんはありがとうございます。と言うように口を動かして頭を下げてくれた。
この時のりんちゃんの嬉しそうな顔は、私の中でずっと残り続ける。
「どうしたの?そんなにニヤニヤして…」
職員室で昼食を食べていると未羽先生に声をかけられた。ニヤニヤしているつもりはなかったのだが…ニヤけてしまっていたのか…お恥ずかしい……
「あ、いや、えっと、なんでもないです」
私がりんちゃんに勉強を教えていたことは未羽先生には言ってない。りんちゃんが頑張った結果だもん。私はただ、少しだけお節介をして力を貸しただけ。それを自分が出した成果のようには言いたくない。それに…
「そっかそっか、みな先生、ありがとうね。毎日大変だったでしょう」
私が言わないでも未羽先生は全てお見通しですよね。
「二瓶さんが頑張った成果ですよ。私はただ、側にいてちょっとサポートしたくらいです。褒めたり労ったりするなら私より二瓶さんにしてあげてください」
「そんなこと言いながらめっちゃニヤけてるよ。嬉しいなら素直にありがとうございます。って言いなさい」
未羽先生に笑いながらそう言われて顔が赤くなる。また、ニヤけてしまっていたのか…いや、まあ、未羽先生に褒められたのが嬉しいから……
「実はね。二瓶さんからいろいろ話聞いてたんだ」
「え!そうなんですか?」
「うん。みな先生、実習のこととかで遅れたりしてませんか?っていきなり言われてビックリしたよ。もし、みな先生が何か遅れたりしてたら私のせいですからみな先生を怒らないでください。って、お願いされたよ。まあ、みな先生は記録とか遅れることなく出してくれてたから二瓶さんは安心してたけど」
そんなことがあったんだ。なんか、嬉しいな。りんちゃんが私を心配して、私のために行動してくれて…
「生徒に慕われるいい先生になったね」
「私なんてまだまだですよ…それに慕われている=いい先生じゃないと思います」
「よくわかってるじゃん。まあ、でも、また一歩追い付かれちゃったかなぁ」
その一言は、私にとって何よりも嬉しい一言だった。
「さて、じゃあ、あとは…明日の最後の授業、期待してるよ」
私の実習は明日で終わり、明日、最後の授業をして記録やまとめを書いたら終わる。かなり、寂しい。あっという間だったから…せっかく、打ち解けてきた生徒たちともお別れ…いっぱい、いろいろなことを学ぶことができたこの環境ともお別れ、寂しさを感じる。
明日の最後の授業、私は精一杯やろう。りんちゃんが小テストで結果を残してくれたみたいに、私も精一杯やって、未羽先生が今まで私に教えてくださった成果をしっかり見てもらおう。
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