第54話 久しぶり。





「みな先生、あの…二瓶さんがお世話になっちゃったからさ、お礼も兼ねて久しぶりに食事でもどうかな?」


りんちゃんが久しぶりに学校に来てくれた日の帰り、未羽先生は私に声をかけてくれる。りんちゃんが学校に来なくなってから一緒に食事とか行ってないなぁ


「是非ご一緒させてください。でも、久しぶり…って言うほどでもないですよねぇ?」

「そ、そうだけどさ…その…ほら、えっと…みな先生と毎日一緒にいたいというか…えっと、ほら…」

「あはは。未羽先生、何言ってるんですか?意地悪言ってごめんなさい」


私と毎日一緒にいたい。かぁ…幸せだなぁ。でも、やっぱり今はそれは難しい。だから、たまに、食事に行くくらいしかできない。


「えっと、何か食べたいものとかある?」

「未羽君には申し訳ないけど、ちょっと軽い感じで済むところがいい…」


学校を出て2人で歩きながらそんなやり取りをする。学校の先生方さぁ。みんな優しいから実習生の机の上にいっぱい差し入れ置いてくれるんだよね。スイーツとかチョコとかお菓子とか…これ全部食べたら絶対太る!って思うくらいの量を毎日わんさかといろいろな方が差し入れてくださる…めちゃくちゃありがたいけど…量が……


というわけで行き先はいつものイタリアンのお店に決まった。あそこなら頼み過ぎることはないだろうからなぁ。行き先が決まって電車から降りると未羽君はすぐに私と手を繋いでくれる。


「未羽君、待たせちゃうけど、本当に私でいいの?」


私は未羽君の毎日一緒がいい。って要望には応えられない。こんな私でいいのだろうか。と一瞬、思ってしまった。


「みなちゃんがいい。みなちゃんじゃないと嫌、待ってるから大丈夫」


未羽君は迷わずに笑顔でそう言ってくれた。


「みなちゃん、次、そういうこと聞いたら怒るからね。僕はみなちゃんじゃないと嫌だから」

「うん。ごめんなさい。ありがとう…」


まだ、正式に付き合っているわけでもないのに、こんなやり取りをして顔を真っ赤にしてしまう。


そして、いつものようにいろいろお話しながら食事を終えて、未羽君は私を家まで送ってくれる。


「未羽君、わざわざありがとうね」

「全然大丈夫だよ。今日もありがとう。明日も頑張ろうね」

「うん」


私は未羽君にさよならを言って家に入ろうとすると、家の扉が開いた。


「あ、みな、お帰り。あれ、未羽じゃん。久しぶり」


たまたま家に来ていたお姉ちゃんが私と未羽君に声をかける。昔のことを思い返して私はちょっとだけ怖くなる。また、未羽君をお姉ちゃんに取られちゃわないか不安になってしまった。




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