第55話 夜中の報告
「ゆき先輩、お久しぶりです」
久しぶりにお姉ちゃんと会えたからか、それとも昔の感情を思い出したからかはわからないが未羽君は嬉しそうにお姉ちゃんに挨拶する。
「あのさぁ、いい加減先輩呼びはやめてよ。ゆきも未羽ももう学生じゃないんだからさ」
「そ、そうですね。えっと…じゃあ、ゆき…さん?」
「なんか未羽にさん付けで呼ばれるの慣れないわ〜」
「僕もすごく違和感あります…」
そんな感じで久しぶりに会うとは思えないくらい仲よさそうに話しているお姉ちゃんと未羽君を見て昔みたいに複雑な気持ちになる。
「それより、未羽、実習中のみなをこんな時間まで連れ回してどういうつもりなのかな〜デートとか?」
お姉ちゃんは揶揄うような表情で未羽君に尋ねる。
「デート…ではないと思います。僕とみなちゃんは今はまだ、そういう関係じゃないので…僕がなんだかんだ理由付けてみなちゃんを連れ回してるだけです」
今はまだ…その言葉を聞いて安心した。今はまだでもいずれは………
「そっか、お似合いだと思うよ。未羽、みなのこと、よろしくね。ばかでどうしようもない妹だけど、面倒見てあげて…」
「はい」
未羽君がお姉ちゃんに即答してくれたのを聞いて、私は反射的に未羽君の手を強く握ってしまう。未羽君は優しく私の手を握り返してくれて私は幸せを感じた。
「そういえば、お姉ちゃんは何しに来たの?平日に実家帰ってくるの珍しいよね」
「え、あ、うん…えっとね……」
お姉ちゃんは少しだけ顔を赤くしながら次の言葉を発するか少しだけ悩んでいる様子だった。
「結婚報告…」
「「………………え!?」」
私も未羽君も若干の間を空けた後驚きの声を上げる。結婚報告って…え?結婚の報告だよね?お姉ちゃんが?結婚?するの???え、そんな感じの雰囲気一切なかったじゃん。
「えっと、ゆき先輩…じゃなくて…ゆきさん、結婚するんですか?」
「うん。少し前から同じ職場の先輩と付き合ってて…この前、プロポーズされたからさ、今度、婚約者連れてくる。って両親に報告しに来たの。このまま順調に結婚できたらさ、結婚式に未羽も呼んでいい?」
「あ、はい。もちろんです」
幸せそうな表情で言うお姉ちゃんに聞かれて未だに驚きが収まっていない未羽君が答える。
「義弟枠と後輩枠どっちがいい?」
「お姉ちゃん!」
義弟枠って…気が早いよぅ。私、まだ付き合ってもいないからね。もしかしたらこのまま…そういう関係にならない可能性だってあるんだから!
「義弟枠で…」
未羽君、こんな質問に答えなくていいから。しかもちゃっかり義弟枠希望しとるし…あーもう。幸せだし、どうでもいいや。
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