第52話 余計なお世話





「みな先生…そろそろ行かないと遅刻…ですよ」

「うん。困るから早く学校行く準備して!」


未羽先生と一緒にりんちゃんの家を訪れた翌日の朝、私はりんちゃんの家を再び訪れていた。


「なんで、私なんかのためにいろいろしてくれるんですか?昨日の未羽先生のプリントとか…何で、私なんかのために……」

「大切な生徒だからに決まってるじゃん。先生はね。生徒のことが大好きな生き物なの。自分が大好きな生徒のために尽くすのは当然のことだよ」

「そう…ですか……」


求めていた答えと私の答えが違ったからか、りんちゃんは少し落ち込んだ様子になる。


「未羽先生の特別じゃなくてがっかりしてる?」

「はい…」


今朝はりんちゃんの部屋に通されたのだが、りんちゃんの部屋の机には、昨日未羽先生がりんちゃんに渡したプリントやノートが広げられていて、ページをめくった跡や付箋が貼られていたり、いっぱい目を通した跡があった。これが、りんちゃんのためだけに特別に作られたもの…と思い込んで現実から目を逸らしたい。きっと、私がりんちゃんの立場だったらそうしている。大好きな未羽先生を自分じゃない誰かに取られている現実を受け入れたくないだろうから……


「ごめんなさい。まだ、まとめ終わってなくて、今行ってもついていけない気がするので、今日はまだ行けないです…」


逃げるように、りんちゃんは私にそう言う。怖いのだろう。辛いのだろう。苦しいのだろう。この子の気持ちは痛いほど理解できる。あの時、お姉ちゃんに未羽君を取られていた時ときっと同じ気持ちだろう。


「わかった。じゃあ、今日はもう失礼するね。でも、二瓶さん、逃げてばかりいる人を、未羽君は絶対に好きになんてなってくれないよ。未羽君は頑張っている人が好きだから。私、二瓶さんに言われたこと、忘れてないからね。二瓶さんに負けないから」


以前、りんちゃんに言われたみな先生に負けませんから。と言う言葉を思い返しながら私はりんちゃんに言う。


「また、明日来るね」


そう言って私はりんちゃんの家を出て、一人で学校に向かう。かなりギリギリの時間までりんちゃんの部屋にいたのでかなりやばくて走りにくいヒールで頑張って走って暑苦しいスーツで涼しい季節なのに汗をかいて学校に登校した。


「寝坊でもした?」


席にカバンを置いて息を整えていると、未羽先生がカバンからまだ開けていない水のペットボトルを私に渡してくれる。


「私は寝坊してません」

「じゃあ、誰が寝坊したの?」

「とある子がなかなか準備ができていなくて…」

「そっか…明日も行くの?」

「はい。未羽先生は大人しく待っててくださいね」

「うん。ありがとう」


翌日も私はりんちゃんの家にりんちゃんを迎えに行く。自分でも、余計なお世話だと思う。でも、良い教師への第一歩は余計なお世話からだと、私は思う。





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