第50話 悩むこと
「二瓶さん、今日も休みか……」
職員室で未羽先生がボソッと呟く。りんちゃんが数日、学校に来れていないことに対する罪悪感とかいろいろな感情を感じ取れた。
そんな状況の中、私は今日も1度だけだが、授業を任せてもらった。
「うん。ちゃんと授業出来てたね。その調子で残りも頑張ってね」
実習の巡回に来てくれたゼミの先生にそう言われて、私は嬉しかったが、りんちゃんの一件もあり、あまり喜べなかった。
「さて、みなちゃんはいいとして…未羽君、何かあったのかな?」
未羽君 先生と久しぶりに会ったのにも関わらず先生は未羽先生の異変に気づく。こういう、ちょっとした気づきが、一人前の教師に必要なのだろう。と私は思い知る。先生に聞かれた未羽先生は観念した様子であったことを話す。
「なるほどねぇ…いやぁ。若いって大変だねぇ。悩むといいよ。悩んで、どうすればいいか考えなさい。それが成長に繋がり次への一歩になる。小さな一歩かもしれない。でも、確実に一歩、進めばいい。逃げずにいろいろ考えて、実行するといい。一人前の教師は悩むものだ。悩んで悩んで悩みまくりなさい。でも、それを周りに悟らせてみなちゃんに心配かけるのはよくないなぁ。まあ、未羽君なら大丈夫。未羽君は私の自慢の教え子だ。頑張るといい」
未羽先生の話を聞いた先生は未羽先生にそう言って肩を叩く。まるで、私が壁にぶつかった時に、未羽君が私にしてくれたように、大丈夫。と言っていた。きっと、今頃、未羽先生は心を落ち着かせているだろう。先生と話す前まで、いろいろ考えて余裕がなさそうにしていた未羽先生の表情が和らいだから。
「じゃあ、私はそろそろ他の実習生の巡回に行くよ。みなちゃん、最終日の授業楽しみにしてるからね」
「頑張ります」
私と未羽先生は先生を高校の正門までお見送りする。
「あ、そうだ。未羽君、みなちゃんと結婚する時は結婚式呼んでね」
最後に、先生に笑いながらそう言われて私と未羽先生の顔は真っ赤になっていた。真っ赤に染まった顔で先生を見送って職員室に戻り、未羽先生と先程の授業の振り返りや反省会をした。
「あれ、未羽先生、今日はもう上がられるんですか?」
生徒たちが部活をしている時間帯に未羽先生が外に出る準備をしているのが珍しくて私は未羽先生に声をかけた。
「いや、また戻ってくるよ。ちょっと家庭訪問するだけ」
「二瓶さんですか?」
「うん。このままは二瓶さんのためによくないから、ちゃんと向き合わないと…」
「私も、同席させていただけないでしょうか?」
私なんかいない方がいい。自分でも、そう思う。でも、私もこのまま二瓶さんと何も話さないで事態が収束するのを待つのは嫌だった。
「わかった」
未羽先生はすぐに理解してくれた。もうりんちゃんの親御さんとは話がついていて、未羽先生が家庭訪問することは了承済みらしい。私と未羽先生は学校を出て、りんちゃんの家に向かう。
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