第48話 生徒の告白②





「えっ…」


りんちゃんが私から逃げるように廊下を走ると、たまたま教室に向かって来ていた未羽先生と廊下でぶつかってしまった。


「二瓶さん…待って…」

「え、あ……」


私がりんちゃんに追いつくとりんちゃんは慌てた様子を見せる。すぐに何かあったことを悟ってくれた未羽先生は私とりんちゃんを連れて教室に戻る。そして、何があったのかを私とりんちゃんの両方に聞いて、りんちゃんが、未羽先生に好意を持っていることを隠そうと今はしていたので、私もりんちゃんに合わせてその部分だけは伏せて未羽先生に説明し、大体の事情は把握してくれたが、りんちゃんが未羽先生のことを好きで、私と話したことをカットすると私が余計なことを聞いてりんちゃんを一方的に傷つけてしまったみたいな感じになってしまう。


「なるほどね。まず、みな先生、二瓶さんのことも考えずに二瓶さんが聞かれたくないことを聞いたことはよくないかな。先生という立場を目指すのなら、そういう生徒との関わり方もきちんと把握しないといけないよ」

「ごめんなさい…」

「僕じゃなくて、二瓶さんに謝ること」

「二瓶さん、ごめんなさい」

「いえ、私も悪いので…」


私が未羽先生に怒られるのを見て少し罪悪感を感じてくれたのかりんちゃんはすぐにそう答えてくれた。


「みな先生、みな先生はまだ実習生という立場です。現場に立つのが初めてだから生徒との関わり方が上手くできなくて当然、今回のことをしっかり反省して成長すること。わかった?」

「はい」

「僕もごめんね。もっとちゃんと教えてあげてればよかったね。実習生の不備は担当者である僕の不備だから。だから、みな先生はもう謝らないで、これからの対応とかは全て担当者の僕の仕事だから」


少し、私に注意をして、未羽先生は私を慰めてくれて庇ってくれる。本当に優しい先生で、私なんかじゃやはりまだまだ届きそうにない。


「さて、じゃあ、二瓶さん…みな先生が話したから単刀直入に聞いてもいいかな?何で、できないフリをしていたか…」

「理由なら、補習の時に何度も言いましたよ。未羽先生と一緒にいたいからです」


りんちゃんは迷うことなく未羽先生に答える。未羽先生は困惑した表情を見せるが、すぐにその表情を消してりんちゃんと向き合う。


「もう、隠してても不信感を持たれるだけなので言いますけど、私、未羽先生のこと好きです。恋愛対象として好きです。好きな人と一緒にいたい。そう考えてしまい、私はできない子を装うことにしたんです」


りんちゃんは顔を真っ赤にして、涙が流れそうな表情をして、震えながら、未羽先生を真っ直ぐ見つめて答えた。






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