第47話 気づかないふり




「みな先生の授業、未羽先生の授業にそっくりですね」


私の夢への最短ルートを進むと決めた翌日、その目標を達成するために今日も私は実習を頑張っていた。放課後、教室に残り、授業の片付けなどをしているとりんちゃんと2人きりになり、りんちゃんが私に声をかけてくれる。


「まあ、私の目標は未羽先生だから…大学のゼミの先生も同じで師匠が同じ弟子みたいなものだから、どうしても似ちゃうんだよね」

「そうなんですね…」


なんとなく気まずい。私の姿を見ながらりんちゃんは教室に残って本を読み始めた。私はまだ教室でやりたいことがあったからしばらくこの時間が続くのなぁ…と、一瞬憂鬱になってしまうが、こんなことを思ってしまってはダメだ。と自分に喝を入れる。


「りんちゃん、授業でわからないところとかある?よければ教えるよ」

「結構です。未羽先生に教えていただくので♡」


♡って…この子、今、語尾に♡付けたぞ…大人しそうな顔して大胆なことを……


「みな先生、ぶっちゃけ、未羽先生とはどんな関係なんですか?」


りんちゃんにそう聞かれて反応に困った。何て返せばいいのかわからない質問に私は戸惑いを感じる。


「私は未羽先生の元生徒で今はゼミ生OBの先輩で、私の実習指導の担当をしてくださっているってだけの関係だよ」

「でも、好きなんですよね?」

「…………」

「みな先生がどれだけ未羽先生に気に入られていても、私はいつか必ず未羽先生に振り向いてもらいます」

「だから、わざと赤点取ってるの?」


私の言葉を聞いたりんちゃんは時が止まったように固まってしまう。


「みな先生、何を言っているのかわかりません。この前の話、忘れたんですか?」

「未羽先生も気づいてるよ。二瓶さんが、本当は数学出来るってこと…」

「どうして…」

「二瓶さんが高校受験した時の記録を見たら一目瞭然だよ。未羽先生、少しだけど戸惑ってたよ。どうしてあげればいいんだろうって…」

「いつから…」

「詳しくはわからないけど、未羽先生は最初から知っていたと思う。未羽先生は自分のクラスの生徒のデータは絶対頭にインプットするタイプだから…」

「じゃあ、どうして、あの時…あんなことを……」


あの時、きっと、りんちゃんが未羽先生と以前に話した時のことだろう。


「二瓶さんのことを考えて気づかないようにしていたって…たぶん、何か事情があるんだろうな。って、見て見ぬふりをしていたんだと思う。未羽先生は優しいから…」

「嘘…いや……」


りんちゃんはそう言って教室を出ていった。私は黙ってりんちゃんの後を追いかける。りんちゃんを放ってはおけないから…








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