第45話 授業後の告白




実習3週目の月曜日の夜、今日も未羽君に食事に誘われたので私は未羽君と食事に出かける。今日も未羽君の方から私と手を繋いでくれたり、いろいろとエスコートをしてくれた。


「ねぇ、未羽君って今、好きな人とかいるの?」


聞いてみたかった。ここで、未羽君が何と答えるのか、私に何を言うのかで、きっと、私の今後は大きく変わっていたと思う。


「いるよ」


駅から私の家まで歩く途中の少しだけ薄暗い道で未羽君は短く答えた。


「どんな人?」

「内緒」

「教えてよ」


私は、いつになく真剣な表情で、声で、未羽君を問い詰めるように尋ねた。少しの間を置いて、未羽君は深く深呼吸をしてから未羽君は私の質問に答えてくれた。


「すごく、頑張り屋さんな人だよ」

「へー、他には?どうしてその人を好きになったの?」

「好きになったきっかけ…かぁ…前にね。好きだった人にフラれた時に、気づかないだけで僕に取って大切な人は意外と側にいる。って言われたんだ。それで、いろいろ考えてさ…最近さ、久しぶりに再会した子がいたんだ。すごく頑張り屋さんで僕なんかを慕ってくれてるかわいい子と…それでさ、その子と一緒にいると楽しくて、落ち着けて、頑張ろう。って思えるんだ。将来さ、一緒になるとしたらそう言う安らぎや頑張ろう。って気にさせてくれる人がいいじゃん。きっと、以前は関係的に恋愛のフィルターから外れていたと思う。正直、今も関係的にどうなんだ。って思うけど、久しぶりに会って一緒にいて、もっと一緒にいたい。って思った。自分はこの人のことが大好きなんだな。って思たんだ」

「そうなんだ…告白、とかしないの?」


私の手も未羽君の手も先程より明らかに熱くなっている。でも、お互いそんなことに気づきもせずに歩きながら話し続けた。


「したいよ。しようとも思った。でも、僕が好きな子はずっと、夢に向かって頑張ってきたことを僕は知ってるんだ。誰よりも近くで頑張る姿をずっと見てきたから…だから、その子の夢が叶う日まで僕は邪魔したくない。だから、待つことにしたよ。僕が大好きな人の夢が叶うまで…その子とね。約束したんだ。その子の夢が叶ったらお願いを一つ聞く約束を果たす前に、僕のお願いを一つ聞いてもらう約束。だから、告白はそこまで待ってるよ。何年後かな。大好きな人の夢が叶った時、告白としては最高のタイミングじゃない?」

「そう……だね……」


気づいたら私も未羽君も立ち止まっていて、私は自分でも信じられないくらい泣いていた。大好きな人にそう言ってもらえたことが嬉しすぎて涙が止まらなかった。泣き続ける私を、未羽君はそっと抱きしめてくれた。






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