第44話 休日の考え事





「あんた、それ完全に脈ありでしょ……」


実習2週間目が終わった週の日曜日、たまたま実家に帰って来ていたお姉ちゃんに最近の未羽君とのやり取りを話すとあっさりとそう言われた。


「え?えぇ!?」


最近の未羽君の言動に何か不思議な感じはする。と思っていたけど…え?お姉ちゃんのコメントが予想外過ぎて頭が追いつかない。脈ありって…えぇ?


「それはない!絶対ない!ありえない!」

「あんたねぇ、未羽のこと鈍感とかばか。とか散々言ってだけどあんた未羽のこと悪く言えないよ……」

「いや、だって、未羽君だよ!?私、数年間アピールしたりしてたのに何もなかった未羽君だよ!?ありえないよ」

「実習終わりに何かと理由をつけて一緒にご飯行って、夜あまり遅くない時間、遅い時間関わらず必ず家まで送ってくれて、しかも、夜遅くまであんた家に連れ込んで映画観て、毎回必ず手を繋ぐとか脈あり以外何があるの?」


今週、月曜日に未羽君の部屋で映画を観た日以外だと、水曜日と金曜日に食事に出かけた。その時はいつもなら私から未羽君と手を繋ぐのに未羽君の方から私と手を繋いでくれたりした。月曜日から…いや、たぶん実習が始まって数日後くらいから未羽君はやたら私を気にかけてくれているように見えた。脈あり…って言われるとそうかも。と思ってしまうような未羽君の行動の数々を思い出して私は顔が赤くなる。


「まあ、よかったんじゃない。告っちゃいなよ。たぶん、上手くいくと思うよ。じゃあ、私は帰るから」

「あ、うん。またね…」


アパートに帰るお姉ちゃんを見送って私は自室に戻ってベッドに横になる。


「告白…かぁ……」


もし、本当に脈ありなら…いや、でも、今の私は未羽君に相応しくない。未羽先生に追いつく。未羽先生の隣に立つ。その日が来るまで…未羽君には伝えるつもりはなかった。もし、仮に、未羽君から告白されても今はまだ断るって前から決めていた。でも、こうして、未羽君から手を差し伸ばしてくれると、未羽君の手を取ってしまいたくなる自分がいる。


きっと、今、この手を取って未羽君に告白したり、未羽君に告白されて首を縦に振ったら私は未羽先生に二度と追いつくことはできない気がした。


やっぱり、恋って難しい。一度意識しだすとブレーキが効かない。私は、どうしたいのだろう。


「みなちゃんとの約束を果たす時が来たらさ…みなちゃんのお願いを聞く前に僕のお願いを1つ聞いて欲しい」


急に、頭の中に以前、未羽君に言われた言葉が思い浮かんだ。私の考え過ぎかもしれない。都合良く考えているだけかもしれない。でも、もしかしたら未羽君は私が自分が未羽君に相応しいって思える日まで、待ってくれると言ってくれたのかもしれない。


いろいろなことを考えてしまった。せっかくの休日、ゆっくり休みたかったけど、私の脳はフル回転してそのまま月曜日を迎える。







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