第42話 授業後の食事





「未羽先生、今日もありがとうございました」

「いえいえ、気をつけて帰るんだよ」

「はい。みな先生も遅くまでありがとうございます。失礼します」


礼儀正しく礼をしてりんちゃんは教室から出て行く。私と未羽先生は気をつけて帰るようにね。と再度伝えてりんちゃんを見送った。


「さてさて、僕がいない間、任せちゃってごめんね」

「己の未熟さを痛感しました…」

「そっかそっか、補習ちょっと引き受けてくれたお礼と初回授業のお疲れ様会を兼ねて今日も食事とかどうかな?」

「え?今日もいいんですか!?」

「あ、でも、みなちゃんが疲れてるなら…」

「だ、大丈夫です!全然元気です!是非、ご一緒させてください。あと、未羽先生、校内ではみなちゃんはタブーですよ」


未羽先生はあっ…と言いながら慌てた表情を見せる。反応がかわいい。


というわけで、今日も私と未羽君は食事に出かける。学校を出て駅に入り電車から降りる。前回は私の家の最寄り駅の飲食店だったので、今回は未羽君が一人暮らししているアパートの最寄り駅の飲食店に行くことになった。駅について電車から降りると、今日は未羽君の方から手を繋いできてくれた。なかなか珍しい出来事でちょっとびっくりした。やっぱり、私、まだ未羽君に子どもって見られてるのかなぁ?


「今日の授業、すごくよかったよ。みなちゃんが立派に先生してるって思った」

「それは褒めすぎだよぅ…」


未羽君がおすすめしてくれたお洒落な感じのお店で食事をしながら未羽君は笑顔で私の授業を絶賛してくれた。私の反応を見て、未羽君はそんなことないよ。と言ってくれる。褒められて嬉しかったが、内心はそれどころではなかった。ちょっとお洒落な感じのお店だけあってなかなかに高くつきそうで怖い。前回、未羽君に出してもらったから今日は私の分だけでも絶対に出さないといけない。お金足りるかな…とかなり不安だった。


「ねえ、みなちゃん」


私が不安を感じながらも笑顔で食事をしていると未羽君が真剣な表情で私を見つめてきた。なんだろう。


「今日の授業、すごく立派だった。約束、もう果たさせてくれないかな?」


そう言われて嬉しかった。でも、私はつい先程、未羽先生との距離を痛感したばかりだった。


「ごめんなさい。授業を認めてくれたのはすごく嬉しいです。でも、いい授業が出来ればいい教師というわけじゃないと思うから…」

「そ、そうだよね。ごめん。ちょっと、急いじゃったかな」

「ほんとだよ。私なんか、まだ、未羽先生の足元にも及ばないから」


まだまだ、私なんか未羽先生に敵わない。だから、申し訳ないけど、まだ、言えない。


「みなちゃん、お願いがあるんだけどいいかな?」

「お願い?」

「みなちゃんとの約束を果たす時が来たらさ…みなちゃんのお願いを聞く前に僕のお願いを1つ聞いて欲しい」

「いいよ。って言うか未羽君のお願いなら今からでも聞くけど?」

「い、いや、約束、果たす時でいいよ」

「わかった」

「ありがとう。じゃあ、そのお礼ってことで今日は僕の奢りね」


………え、もしかしてこれ、私に奢る理由作り?まじか、私、はめられた?と思い未羽君の表情を見ると、なんか今まで見たことがないような不思議な表情をしていた。







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