第37話 実習の後





「みなちゃ…みな先生、さっきからボーっとしてどうしたの?」


りんちゃんと話した後、私は未羽先生が顧問をしているバレーボール部に顔を出した。未羽先生の横で生徒たちが練習しているのを眺めていると、未羽先生が私に尋ねる。


「え、あ、なんでもないよ…じゃなかった…なんでもないです」


私は慌てて反応をする。りんちゃんのことを未羽先生に言うなんてとてもできないので、慌てて誤魔化したが慌てていたので、つい未羽先生と2人きりの時の口調で話してしまった。


「そう?なんでもないならいいけど、何かあったら相談してよ。あと、口調気をつけてね」

「はい」


未羽先生に実習指導の担当をしてもらうことになり、私は未羽先生と業務時間内は立場をきちんと理解して関わることを未羽先生と約束した。当たり前のことだけど、いざ、実践してみるとなかなか難しい。つい、無意識のうちにいつも未羽君と関わっているような感じになってしまう。


「今日、金曜日だし、明日からみな先生は休みだから今日終わったら食事にでも行く?」

「え…あ、はい!是非!」


未羽先生にみな先生と呼ばれるのはなんか背中がくすぐったい感じがするけど…少しだけ、未羽先生に近づいている気がして嬉しい。たぶん、私が疲れていると思ってくれたのか食事に誘ってくれる未羽君優しい。


「一応、プライベートとは言え、内密でお願いね」

「わかりました!」


テンション高めな感じで返事をすると未羽先生が優しく微笑んでくれた。たぶん、こういうところから、私が未羽先生に好意を持ってることがバレるんだな…と思い、実習の時間内は気を引き締めるように反省した。


バレーボール部の見学を終えた後は、実習の記録や、見学した授業などのまとめを記入したりして私は実習指導担当の未羽先生にチェックをお願いした。


「うん。OKだよ。お疲れ様」


実習は17時までだが、部活の見学などをしたため、予定より少し遅くなり19時過ぎに未羽先生にOKをもらう。冬の期間は部活は基本的に18時半には終わるように言われているので先生たちも早く帰れるみたいで職員室には先生が半分以上いなくなっていた。夏だと帰るのもう少し遅くなるらしいし、教育現場ってかなりブラックだよねぇ…


「もう少し仕事に時間かかりそうなんだけど、どうする?疲れてるなら後日でもいいけど…」

「待ってます。え、えっと…もしよろしければ未羽先生の仕事、見学させていただいてもいいですか?」

「な、なんか緊張するなぁ…」


私は未羽先生の仕事を見学する。仕事、と言ってもやっていたことは他校の先生と部活の練習試合の日程調整だった。部活の顧問になるとこういう仕事もあるから大変だなぁ…


「「お先に失礼します」」

「お、なになに?これからデート?いくら昔からの知り合いでも今は立場弁えなよ〜」


まだ職員室に残っていた学年主任の先生や、教頭先生に挨拶をすると学年主任の先生がニヤニヤしながら私と未羽先生に言う。恥ずかしいなぁ…


「ちょっと食事行くだけです」

「あら、そうなのね。お疲れ様〜」


未羽先生が返事をすると学年主任の先生はまだニヤニヤしながら未羽先生に言った。私と未羽先生は頭を下げてから職員室を出て食事に向かう。





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