第30話 金曜日の想い





クリスマス、クリスマスプレゼントは未羽君との勉強

お正月、未羽君と合格祈願を初詣で願い、お年玉は未羽君との勉強

そうして新年を迎え、1月の中旬、いよいよ明日はセンター試験…


「今日はこの後すぐ寝るんだよ。今からは勉強一切禁止だからね」


明日に備えてきちんと休む。明日、電車の中でも勉強は禁止にされた。電車の中での勉強は自分に余裕がない。と自分に認識させてしまい、焦りに繋がるから…と、未羽君は言っていた。でも、実際、私には…


「大丈夫。今までずっと、頑張ってきたでしょう。ずっと隣にいた僕が保証する。大丈夫。自分を信じて、頑張って」


そう言われると自然と自信が湧く。私は、出来損ないだ。だから、頑張るしかない。ただ、どれだけ頑張っても、私が出来損ないと言う事実は変わらない。だから、私は自分に自信が持てない。でも、今日まで一緒に頑張ってくれた未羽君の大丈夫。は信じられる。


「未羽君…お願いがあるの…」

「言ってみて」

「明日、会場まで着いてきてくれない?行きだけでいいから…」


めちゃくちゃわがままでめちゃくちゃ迷惑なお願いだと言うことはわかってる。きっと、断られるんだろうな。と私は思っていたが、未羽君はあっさりといいよ。と言ってくれた。


「じゃあ、また明日ね。今日はちゃんと寝ること!わかった?」

「うん…ありがとう。未羽君」


私は未羽君を見送ってすぐに眠りについた。いよいよ、明日は本番、たぶん、未羽君がいなかったら私は今頃焦って勉強していたかもしれない。いや、未羽君がいなければ、明日はセンター試験でなかったかもしれない。未羽君と出会って目標を得たおかげで私は今、ここにいる。未羽君がいなかったら、きっと私は本物の出来損ないだった。


未羽君と言う憧れに出会ったおかげで、私は出来損ないなりに足掻いてみた。必死に足掻いた。たぶん、未羽君が一緒にいてくれなかったら少しで飽きていた、諦めていた。未羽君と出会えて、未羽君が一緒に頑張ってくれたこの時間は、私の人生で1番の宝物だ。


だけど、この時間ももうすぐ終わる。センター試験が終わり、最高の結果であれば私の受験は終わる。今までの長い努力が報われる。でも、それは、私が未羽君の生徒を卒業する瞬間であることも意味する。複雑な気持ちになる。私が未羽君の生徒でいられるのは今日が最後かもしれない。


長かった今までの日々が懐かしい。また、未羽君と出会った頃に戻りたい。未羽君と頑張ってきた幸せな時間を永遠に味わいたい。でも、永遠なんてない。過去には戻れない。あるのは未来だけ。私は、未来に向かって進むことしかできない。最高の未来を目指して…




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