第24話 金曜日の報告(2回目)





それから追試まで、未羽君の授業以外の私の勉強の時間はただひたすら単純な計算をするだけだった。スマホのアプリで足し算とか引き算、かけ算、わり算を一問一答で出してくれて、桁数の調整もできて、何秒で解けたかを表示してくれるものがあったので、それを活用しまくった。


それでも、私の弱点は克服できず、これが私の抱えたハンデか…と絶望するが、そんな時間すらもったいなく感じてひたすら計算する。


「みなちゃんにプレゼント」


そう言って未羽君は私にそろばんを渡してきた。


「目で計算できるようになろうか。それでひたすら計算して、そろばんを脳内にイメージして脳内で動かせるようになりな。脳内そろばんなら持ち込んでも文句は言われないからね」


未羽君は笑いながら言う。そしてそろばんの使い方を教えてくれる。出来ること、可能性のあることは迷わず試す。未羽君はそうやって私にあった方法を探し続けてくれた。


そろばんを使った感覚の計算、それは私でも慣れればだいぶ早くなった。なんせ、頭の中でそろばんをイメージすれば簡単な計算はすぐできる。2桁の足し算ですらたまに間違えるし数十秒の時間がかかっていた私からすればかなりの進歩だった。


その状態で、追試に臨む。そうしたら、前のテストよりもかなり楽に問題を解くことができた。その結果……




「うん。よくできたね。おめでとう。やっぱりみなちゃんはできる子だよ」


合格点を超えた解答を見た未羽君はそう言って私の頭を撫でてくれる。


「未羽君のおかげだよ。ありがとう」

「みなちゃんが頑張った成果だよ。みなちゃん、明日明後日は予定あるかな?」


明日は土曜日、明後日は日曜日、私は部活も辞めているので、特に予定はない。


「暇…というか、勉強する予定だけど…」

「お出かけしようか。追試頑張ったご褒美だよ」

「で、でも…」


たしかに、頑張った。でも、私は、未羽君に胸を張れるだけの教師になるまで、遊ぶ時間はない。だから、いくら未羽君のお誘いとはいえ……


「大丈夫。今のみなちゃんに必要なこと」

「え?」

「大学のオープンキャンパスだよ。来てくれる?」

「う、うん!行く!絶対行く!」


オープンキャンパス、大義名分を得た気分だが、たしかに、私に必要なことだった。だから、私は未羽君と一緒にオープンキャンパスに行くことにした。


最近、ずっと頑張りっぱなしだったから、オープンキャンパスに未羽君と行くくらいのことは許して欲しい。休む余裕はない。と言いながら都合が良いと言うのはわかっている。もし、受験の神様がいるのなら、目を瞑って欲しい。そう思いながら私は翌日、未羽君とオープンキャンパスに出かけた。






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