第20話 それからの月日
月曜日、今日も未羽君と勉強した。
水曜日、今日は図書館で未羽君と自習した。
金曜日、今日も未羽君と勉強した。
ずっと、それの繰り返しだった。私が誕生日の日も未羽君が誕生日の日もクリスマスも、ずっと未羽君は私の側にいて勉強を教えてくれた。
そうしていたら、時はあっという間に流れて、現在、私は高校2年生、未羽君は大学3年生、私は無事、理系に進級して、未羽君に1つ、胸を張れる結果を残せた。
あと1ヶ月で私は高校3年生、未羽君は大学4年生になる。私は受験で、未羽君は教採、この1年の私たちの目標は決まっていた。未羽君は数3の科目は今までやってきた数学とは別世界だから、頑張ろう。と言ってくれていた。未羽君も教採で忙しいはずなのにまだ、私の面倒を見てくれるのだからありがたい。
だが、今日1日だけは、未羽君は別の決意をしていた。
「頑張ってね」
こう言うのはかなり複雑な気持ちだった。
「ありがとう。頑張る」
金曜日の家庭教師が終わり、未羽君は深呼吸をして、お姉ちゃんの部屋の扉をノックする。
私の姉は既に卒業式を終えていて、あと数日したら就職先の都合で家を出て1人暮らしを始める。未羽君が、お姉ちゃんに想いを伝えられるのは、今日が最後かもしれない。だから、未羽君は決意をしていた。
その相談を未羽君にされた時の私の気持ちは言うまでもないだろう。私が、未羽君に胸を張れる教師になるまで私の想いは封印しているのを未羽君は知らない。だから、未羽君にデリカシーがない。とか言うつもりはないが、一言だけ言ってやった。
「未羽君のばか…」
と…それは、あの日、未羽君と大学に行った日以来使っていない言葉だった。それを聞いた未羽君は笑いながら「久しぶりにそれ言われた気がする」と言っていた。本当に、私の気持ちには気づいてないんだな。と思い、ちょっと寂しさを感じたが、今、私に未羽君を止める資格はない。
だって、今の私に恋をしている余裕すらないのだから、理系に進級する時も、2年生から3年生に進級する最後の試験も、私はかなりギリギリの結果だったから…今、恋をしたら、未羽君を…未羽先生を裏切ってしまう。私のために、と自分の時間を割いてくれていた私の大好きな、憧れの先生を裏切ることはしたくなかった。
だから、私には、応援するしか出来なかった。本当はやめて。って言いたかった。私を見て。と言いたかった。でも、今はダメだ。今、私は未羽君に見合う女ではない。なのに、未羽君に私が未羽君の隣に胸を張って立てるまで待ってて。と言うのはすごくわがままだ……
辛い、すごく辛いよ。でも、私は、未羽君には幸せになって欲しい。私を一生懸命支えてくれた未羽君には報われて欲しい。お姉ちゃんと結ばれて未羽君が幸せになるなら…私はそれでも構わない。ただ、未羽君を幸せにしてあげるのは私がよかったな。とどうしても思ってしまう……
未羽君がお姉ちゃんの部屋をノックして少しするとお姉ちゃんが扉を開けた。そこまで見て、私は部屋に戻る。これ以上、2人のやり取りを覗き見るのはすごく、無粋だと感じたから…
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