第15話 私を見捨ててくれない。
お母さんとお姉ちゃんと向かい合って座り再び、話し合いが始まる。話し合いと言ってもお母さんとお姉ちゃんが私を説得するように未羽君に言っているだけだった。
だが、何度お母さんとお姉ちゃんが説得しても未羽君は首を縦に振らないで常に私の意志を聞いてくれた。未羽君が好意を持っているお姉ちゃんに反論してまで私のことを考えてくれている。その期待に私は応えないといけないと考えるとプレッシャーを感じるが…私は未羽君を裏切りたくない。本気でそう思った。
「何度も言いますが、僕はみなちゃんの意志に従います。当然、みなちゃんが進もうとしているのは、みなちゃんにとっては本当に大変な道だと言うことも伝えてあります。それでも、頑張る。と言ってみなちゃんが頑張る限り僕はみなちゃんをサポートします。知ってますか?みなちゃん、僕が出した宿題よりも多い量の勉強を毎回して来てくれるんですよ。毎回毎回、みなちゃんの教科書やノートを見る度にみなちゃんが本気で頑張っていることが伝わってくるんです。だから、僕は、みなちゃんを見捨てない」
最近、未羽君と交換ノートをしている。私がわからないことをメモしたノートを未羽君が見た時に提案された交換ノート、わからないことをメモしたノートを次回、未羽君に渡す。その時に前回未羽君に渡したわからないことノートにアドバイスや解き方をわかりやすくまとめてくれたものを受け取る。
未羽君から返してもらったノートにはいっぱい書き直された跡や、いくつものパターン、私が理解できるように工夫してくれていることが伝わって来て、初めて未羽君にノートを返してもらった時はつい、泣いてしまった。未羽君にとっては家庭教師の時間外で必要のない作業なのに…未羽君はそんなこと関係なしに一生懸命、私と向き合ってくれた。未羽君がこういう人だから、私は未羽君に憧れて未羽君を好きになった。
「もし、今日、お母さんとゆき先輩に納得していただけないのなら僕はみなちゃんの家庭教師を辞めます」
「え……」
未羽君の突然の言葉に私は動揺する。そんな私に気を遣い未羽君は私の手を握ってくれた。安心して。と言うように…
「辞めるって…」
お姉ちゃんも慌てた表情をするが、未羽君は淡々と言葉を発した。
「はい。家庭教師辞めれば、いつ、何を僕がみなちゃんに教えても問題ないですよね?」
真顔でそう言う未羽君が本当にかっこよかった。
未羽君の言葉を聞いて、お母さんは説得を諦めて、「みなが諦めるまで付き合ってやってください。」と未羽君に言った。お母さんに対して未羽君は「大丈夫です。みなちゃんなら大丈夫って僕は信じています」と即答した。
こうして未羽君と私は今まで通り勉強が出来ることになった。当然、未羽君は家庭教師を辞めていない。
「みなちゃん、またね」
「うん。ありがとう」
いろいろな意味を込めてありがとう。と言った。
「みなちゃんなら大丈夫。一緒に頑張ろう」
いろいろなありがとう。を察してくれたのか未羽君は笑顔でそう言い、駅に入る。
未羽君は私を見捨ててくれない。それは本当に嬉しいが、未羽君の期待に応えたい。と言うプレッシャーが私にのしかかる気もした。
精一杯頑張ろう。本気でそう思った。勉強だけでなく…恋も頑張りたい。と、本気で思ってしまうくらい、今日の未羽君を見て私は未羽君に惚れなおしてしまった。
私の家庭教師は私を見捨ててくれない。
私の大好きな人は私を見捨ててくれない。
私の憧れの人は私を見捨ててくれない。
未羽君は私を見捨ててくれない。
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