第13話 月曜日の憂鬱




日曜日には体調が回復して、月曜日の今日、未羽君はいつも通り家庭教師に来てくれる。嬉しい。普段なら、そう思う。でも、今日だけは憂鬱だった。未羽君に合わせる顔がないからだ。未羽君が来るのを、お母さんとお姉ちゃんも待っている。なんでお姉ちゃんまでいるの?って思うが未羽君はお姉ちゃんの紹介だから文句は言えない気がする。


部屋のインターホンが鳴り、普段なら笑顔になる私だが、今日ばかりは暗い表情を変えられない。


「未羽君、ご苦労様です。申し訳ないのだけどみなに勉強を教えてもらう前にお話があるのだけど…」

「わかりました。みなちゃんは同席しますか?」


未羽君はお母さんの方ではなく私の方を見て聞いてくれた。嫌だったら部屋にいていいからね。と言ってくれているような気がした。未羽君の言葉に甘えて逃げてしまいたかった。だけど、逃げたら未羽君に申し訳ない。私が頷くのを見て未羽君はわかりました。と言い靴を脱いで私たちとリビングに向かう。


リビングについて私と未羽君が並んで座り、私たちと向き合うようにお母さんとお姉ちゃんが座る。お母さんとお姉ちゃんがお茶を淹れている間、無言の時間が続いてリビングにある時計のカチカチ音が鳴り響いた。カチカチ音を聞く度に私の心臓がドクンドクン。と鼓動を早めている気がした。病み上がりなのに心臓に悪い……


「みなちゃん、大丈夫?」

「うん。大丈夫」


私のことを心配してくれた未羽君に返事をした直後にお母さんとお姉ちゃんがお茶を持って戻って来た。


「それで、話とはなんでしょうか?」

「未羽君、申し訳ないのだけど、やはりみなには文系に進んでもらうわ。この前、みなが早退した時に担任に今の成績や、みなの特性上、理系への推薦は難しいし本人のためにならないと言われました」

「それは本人が納得してのことでしょうか?」


単刀直入に、お母さんは言いづらそうに未羽君に言った。すると、未羽君は淡々と私の意志について訊ね返してくれた。その未羽君の態度が、私にはとても心強く感じた。


「未羽、あんたもわかってるんじゃないの?みなに理系は無理だって」


未羽君の問いかけにお姉ちゃんがそう返した。


「話を変えないでいただきたいです。みなちゃんは納得してるんですか?」


お姉ちゃんの言葉にすら、力強くそう返事をしてくれた未羽君を見て、私は泣きそうになる。お母さんとお姉ちゃんにこの話をされたら、未羽君はどういう反応をするのか、わからなくて不安で怖かったから…未羽君が迷うことなく私の意志を聞いてくれて私は安心した。


「本人は理系に進みたい。と希望してます。それを踏まえて未羽君にもみなに文系を選ぶように説得し……」

「お断りします」


お母さんの言葉を最後まで聞かずに未羽君は答えた。それを聞いて私は、泣いてしまった。


「………お母さん、ゆき先輩、この話は今日の勉強が終わった後にしていただいていいですか?」

「わかりました」


泣く私の背中をさすりながら未羽君は私を連れて私の部屋に向かう。未羽君の対応が、優しすぎて私は、なかなか泣きやめなかった。未羽君は私が泣き止むまで私に今日、教えようとしていたことをメモに書きながら優しく私に声掛けをしてくれていた。





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