第10話 水曜日のお願い
「お互いひどかったねぇ…」
「あはは…未羽君がボール投げるのかわいかったよ」
ボーリングが終わった後、私はこそっと撮影しておいた未羽君がボールを投げるシーンをスマホで再生してみせる。
「え、ちょっと、恥ずかしいじゃん。消してよ」
「やーだ」
死んでも消さないから。私の宝物にするんだい!
「お願いだから消してよ〜」
「やーだ。しつこいよ。そんなことよら、ほら、ゲーセンいこっ」
納得していなさそうな未羽君の手をギュッと握って未羽君を引っ張ってボーリング場の下の階にあるゲーセンに向かう。エスカレーターに乗ってる途中も消してよ。と言ってきたが、無視…困ってる未羽君、かわいい。
「未羽君、エアホッケーやろーよ」
「いいよ」
「未羽君、上手?」
「エアホッケーで負けたことない」
自信満々に未羽君は言った。
「じゃあ、行くよ〜」
パックが先にこちら側に落ちて来たので私からスタート、私がマレットでパックを打ち出す。とりあえず様子見で一直線に打ってみた。
「え、ちょ、はやっ…」
ぶん。と音が鳴りそうなくらい勢いよくマレットを振るが、空振りに終わった。パックは勢いよく未羽君側のゴールに入った。ねえ、何、今の、かわいすぎ、動画に撮りたかった。
「負けなし…とは?」
「は、初エアホッケーだから……でも、なんとかなるかなぁって…」
「エアホッケーなめすぎだよ……」
エアホッケーを初プレイする未羽君を私が惨殺する展開になった。横に当てて角度をつけてみたりパックを打ち出すスピードを意図的に変えて翻弄したりしたが、全て綺麗に引っかかってくれて楽しかった。
「も、もう一回!」
私に遊ばれてムキになった未羽君が一矢報いようと、もう一戦挑んできた。かわいいかよ。
「えー、私、疲れたぁ」
「お願い、後一回だけ!」
「じゃ、じゃあ、みなちゃんが勝ったらなんでも言うこと聞くから!」
……………………
「二言はなしだよ」
最高の条件すぎたので受けてやった。そして、また惨殺した。
「もう一回!」
負けるたびに何度ももう一回を繰り返す未羽君かわいい。
「未羽君、私の言うこと6個も叶えてくれるんだよねぇ…」
「うっ………」
流石に疲れたので座って休んでいる時、私が未羽君に確認すると未羽君はドキッとした表情をする。何お願いしてやろうかなぁ。
「二言はないよ…6個だけ、お願い聞いてあげる」
「じゃあ、再来週の水曜日から6週連続お出かけして…来週も約束してたから7週連続でお出かけ!あ、でも、用事ある日は延期可能だから安心して…」
お願い。それを考えた時、私は、未羽君と一緒にいたい。と思っていた。
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