第8話 水曜日の予定





「ねえ、未羽君…ひ、人が多いからさ……迷子にならないように手、繋いでいいかなぁ?」

「え?あ、そうだね。たしかにこうしていた方が安心だもんね」


未羽君はそう言いながら私と手を繋いでくれる。未羽君の手はすごく温かくて大きくて、優しい感じがした。これが、お兄さんとしてではなくて…恋人として…だったらどれほど幸せだっただろうか。


「みなちゃんの手、ちっちゃいね」

「そうかな……」

「女の子と手を繋いだのお母さん以外ないからわからないけど、みなちゃんの手はちっちゃくて温かいって思ったよ」

「わ、私と手繋ぐのいやじゃない?」

「え、全然大丈夫だよ」


未羽君はそう返事をしてくれたが、たぶん、いや、絶対、私のことを生徒とかそう言う目線でしか見てないからそう言うんだろうな……


「みなちゃん?」

「未羽君のばか…」

「えぇ…また……」


どうしよう。さっきから未羽君にばか。って言いまくってる。嫌われたらどうしよう。やばい。ばか。って言うの封印しよう……


「え、えっと、みなちゃん。お、お手洗い我慢してるなら行って来なよ」

「ほんっとうにばか!」


今日1番の勢いでばか。って言ってやった。これ、私、悪くないわ。私にばか。って言わせる乙女心全くわかってない恋愛経験ゼロの未羽君が悪いわ。私は悪くない。ほら、今だってなんで罵倒されたんだろう。って表情してるし…そういうところだぞ…


「え、えっと、みなちゃん、今からどこ行くの?」

「ボーリング、ゲーセン、嫌?」

「ううん。みなちゃんが行きたいところに連れてってくれればいいよ」


………やっぱりさぁ、未羽君がエスコートしてくれないのおかしくない?ほんっとうに乙女心わかってないなこの人……たぶん、私に合わせることが私にとって1番とか考えてそうだけど私が望んでるのは未羽君がエスコートしてくれる状態でのデートだからね。


「あの、なんかその、ごめん」

「私が怒ってる理由わからないのに謝らないで」

「やっぱり怒ってるんだ…」

「っ…」


はめられた……


「ごめんね。理由は…僕があまりに無計画だったから?とかかな?」

「半分正解で半分不正解…未羽君が私のお願い聞いてくれたら…機嫌直すし許してあげる」

「わかった。お願いって何?」

「ら、来週の水曜日も…お出かけ…次は、未羽君が計画して!」

「わかった」

「いいの?」


いいの?なんて言っているが、私がああ言えば未羽君は断らないって私はわかっていた。私、ずるいなぁ。未羽君の優しさを利用して……


「いいよ。じゃあ、来週もお出かけしよう」

「うん!それじゃあ、機嫌直す」


私はそう言いながら、どさくさに紛れて未羽君の腕をギュッと抱きしめた。その時、未羽君がどんな表情をしていたのかは怖さと恥ずかしさが相まって見ることが出来なかった。





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