第7話 水曜日の目的地
「そういえば今日はどこに連れてってくれるの?」
ICカードを使って電車に乗った為、私はまだ目的地を知らない。
「…………」
「未羽君?」
私の質問を聞いて未羽君は固まってしまう。どうしたんだろう……
「まだ決めてないって言ったら怒る?」
「え?えぇ!?」
まだ決めてない。って?ん?どういうこと?だって電車には乗ってるよね?ん?わけわかんない。
「その、女の子と2人で出かけるの初めてだからどこに行けばいいのかな〜って…とりあえず、街中でようと思ってこの電車乗ったんだけど……」
まじかぁ…未羽君…えぇ……
ん、待てよ。え、行き先決めてなかったのは一旦置いといて…あれ、これ、もしかして未羽君の初デートの相手は私ってこと!?しかも未羽君、女の子と2人って言ってくれた!え、つまりこれはえ…えぇ……
「み、未羽君、女の子とお出かけしたことないんだぁ」
「うん。ないよ。そもそも女の子とあまり関わらないしねぇ…」
「へ、へえ…お姉ちゃんとすごく仲良さそうにしてるからちょっと意外だなぁ……」
嬉しくてにやけそうになるのを必死に我慢しながら私は未羽君に言う。そっかぁ、未羽君、まだお姉ちゃんとデートしたことないんだぁ。
「ゆき先輩は一回お出かけに誘ったんだけどなかなか予定が合わなくて…今度、予定があったらお出かけする約束してるんだけどねぇ……」
それは知りたくなかった。未羽君、お姉ちゃんのこと話すと本当に幸せそうな表情するなぁ……
「みなちゃんはどうなの?みなちゃんかわいいし男の子とお出かけしたことあるんじゃない?」
「私も未羽君が初めてだよ。今日はお互い初デートだねぇ」
「あはは。デートかぁ」
未羽君は私が冗談でデートと言ったと思っているんだろうな。私は本気なのに…でも、未羽君と私の関係を考えたら未羽君の反応は当然だ。所詮、私は未羽君の生徒で未羽君は私の家庭教師でしかないのだから……
「未羽君、今日のデートどこ行く?」
私はちょっとだけ声を高くしてあざといって思われるかもしれないけど萌え袖をした手を未羽君の手に重ねて未羽君にもたれかかる。本気だとアピールしたかった。
「どうしようね。みなちゃんは何かしたいことない?みなちゃんのためのお出かけだからみなちゃんが行きたいところに行こう」
普通に冷静な感じで返された……少しくらいドキドキしたり慌てたりしてよ。
「みなちゃん?」
「あ、なんでもない。えっと、じゃ、じゃあ、次の駅で降りよ」
「あ、うん」
さっき、私はどんな顔をして考え込んでいたのだろう。私は必死に笑顔を作って未羽君に答える。未羽君は心配そうな表情で私を見ていたが、たぶん、私が暗くなっていた理由には気づいていないだろう。
未羽君のばか……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます