第2話 辛い時の記憶






「みなちゃん?聞いてる?」

「え、あ…ごめん……」

「最近、ずっとそんな感じだけどどうしたの?何かあったなら相談に乗るよ。ちょっと休憩しようか」


週に2回の家庭教師の時間、今の私にとって唯一の救いの時間にも影響が出るくらい、私は傷ついていた。




高校1年生の夏、私は理系の勉強をしたい。と高校に希望を出す為にお母さんと話した。止められたが、私は絶対に諦めなかった。


気づいてはいた。私が、他の子とは違うことを…

それでも諦めない私に、お母さんは現実を突きつけてきた。数的処理の知能障害という現実を……


私の心は…折れていた。現実を突きつけられ、無理だと理解したが納得はできずに抗おうとしても…私にはそんな度胸はない。




結果、私は……精神を病んでいた。何回か高校をサボった。部活も辞めて、閉じこもった。たばこにも手を出したりした……結果、それが高校にバレてたぶん、大学への推薦は不可能…私の人生終わった。


そんな状況の時に、未羽君は私を見放さなかった。未羽君に、何で話したのかはわからない。けど、未羽君になら話してもいいと思った。死にたい。と……


「今日はもう勉強やめようか。楽しい数学をしよう」


私の話を全部聞いた後、未羽君は私に笑顔で言った。楽しい数学、高校1年生の始まりの時、大学2年生の未羽君を家庭教師としてつけられた時に、未羽君が初めて私に教えてくれたこと。私はこの楽しい数学が大好きだ。


やっていることは単純、数学と言う名の算数だ。だけど算数をいろいろな方法で工夫して教えてくれる。


今思うと、初めて会った日から未羽君は私に数的処理が苦手な知能障害があると気づいていたのかもしれない。だから、楽しい数学を教えてくれていたのかもしれない。考えすぎかな……


「そうやって笑っていられるなら大丈夫。みなちゃん、死にたいとか、あまり言わないで…悲しいからさ…みなちゃんが辛いことは…伝わったよ。頼ってくれていい。僕はみなちゃんの先生だから、頼っていい。安心して、みなちゃんには僕がついてる」


頭を撫でながら笑顔で言われて、少しだが落ち着けた気がした。


「こんな私の話を聞いても、まだ家庭教師続けてくれるの?」

「もちろんだよ」

「よかった。未羽君と勉強してられる時だけは…落ち着ける気がするし、生きていたい。って思える」

「ありがとう。嬉しいな」


未羽君はいつでも私の味方で、私を大切にしてくれていた。本心で言ってくれているか当時の私はわからなかったけど、私は本心で言ってくれていると、信じたかった。




だから、お母さんとお姉ちゃんと私の進路について話していることを盗み聞きした時、私は心底嬉しかった。未羽君の言葉は私の前の建前でなく、本心だと理解できたから。


未羽君が大好きなお姉ちゃんに反抗してまで、私の進路を考えてくれたこと…本当に嬉しかった。





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