Sixth statue Ⅲ
「それはですな……」
「実は数日前からホロソーの住人と連絡がとれなくなってしまいました」
石になってるから……かな?
「そこで我々が調査に来たのです」
調査に……。
でも……。
「ギルド職員のトワイルさんはわかるんですけど、なんでキャイアさん達まで?」
隣でシャロールがうなずく。
同じことを考えていたのかな。
「それはじゃな……」
「敵が強いからよ」
「敵が……強い?」
それがどう関係しているんだ?
「どういうこと?」
シャロールもやっぱり僕と同じことを考えているようで首をかしげている。
すると、オリーブさんが口を開いた。
「石化魔法を使うモンスターはとても強い傾向にあるんです」
「そこで、私の父のように十分な実力を持った冒険者が万が一のためにトワイルさんに同行することになったんです」
ボディガード……みたいな?
「元冒険者じゃがな。今はリンゴを作っておるわ」
ホントに大丈夫なのかな?
「それでも、ノーチルさんは娘さん共々トップクラスの……」
でも、ドラムを追い払……。
「お母さんも!?」
シャロールがトワイルさんを遮って、叫んだ。
「バレちまったね」
キャイアさんは言葉とは裏腹に全然気にしていない様子だ。
そして、トワイルさんから衝撃の事実が淡々と語られた。
「キャイアさんは昔伝説のパーティ『シャドウフレア』の一員としてノーチルさん、そしてヒュイさんと共に活動されていたんですよ」
「「えー!?」」
伝説のパーティ!?
キャイアさんってそんなに強かったの!?
「そんなもん、過去の栄光よ」
あっさりと言いのけるキャイアさんを見ると、信じられない。
「……そのわりには、さっき派手に爆発させておったじゃないか」
ノーチルさんが苦笑している。
どうやらまだまだ現役のようだ……。
「話がそれましたね」
「ということで、我々は今から調査に向かいますが、あなた達はどうしますか?」
どうしますか、と言われても……。
「どうする、シャロール?」
シャロールも困り顔だ。
「でも、僕達だけじゃ寂しいしな」
「シャロールはお母さんといたいだろ?」
「うん」
それじゃあ……。
「僕達もついていきます」
「わかりました」
――――――――――――――――――――
「はー、疲れたよ……」
「そうだな……」
あちこち町を回って、やっと家に帰れた。
「ここがヒュイの家かい」
キャイアさんは家に入る。
「そうです」
「そして、これがお父さん……」
台所に……いたんだけど、邪魔だったので(ごめんね)部屋の隅に置いたヒュイさんにシャロールが目を向ける。
「見事に石になってるわね」
「そうですね……」
「ま、心配ないわ。すぐに戻るから」
すぐに戻る?
「ポーションでも持ってるんですか?」
「いいや、あんな高いもの買えないわよ」
「それよりもっと簡単な方法があるわ」
「「?」」
「元を叩くのよ」
「元を……」
「叩く……?」
僕達は首をかしげた。
「この石化魔法を使ったモンスターを倒せば、石化も解除されるわ」
「なるほど」
そんな方法が……。
「けど、そのモンスターって?」
シャロールの言うとおりだ。
それがわからなければ意味がない。
すると、キャイアさんは得意顔になった。
ということは、もうわかってる?
「それは知らないわ」
「「……」」
一瞬場が凍りつく。
「ダメじゃん!」
シャロールのきつい一声が響く。
「そんなこと言われたって……」
「あたしは戦うのが専門よ」
若干開き直っている気がする。
う〜ん、そうなのか?
「考えるのはこいつの仕事だったのよ」
キャイアさんはヒュイさんの石像をコンコンと叩く。
「ま、誰かがいい案を浮かぶまで気長に待つことだね」
今のところはそうなるのかな……。
仕方ないな。
「今日はもう寝るわよ、疲れたでしょ?」
「はーい」
シャロールが寝室に入っていく。
その手の中にはもちろんクロイムも……。
「ちょっと待った」
キャイアさんがシャロールの肩を掴む。
「クロイムも一緒に寝るのかい?」
「そうだよ、お母さん」
それを聞くと、キャイアさんの顔が曇った。
さっきまではそんな顔一度もしなかったのに。
「いやー……どうしようかね……」
「ダメなの?」
「いや、ダメってわけじゃないわ……」
「ただ……」
「お母さん! 離して!」
「一緒に寝るんだから!」
「わかったわよ」
お母さんはしぶしぶといった様子で手を離す。
そして、なぜか僕の肩を叩いて
「明日までの辛抱よ」
とささやいた。
まったくわけがわからない。
「どういうことですか?」
「あんな奴に奪われたくないでしょ」
「私が取り戻してあげるわ」
ますますわからない。
「あの、なんの……」
「あら、気づいてないのね」
僕が詳しく訊こうとする前に、キャイアさんは一言そう言い残して寝室に入っていった。
一体何だったんだ?
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