Eighth poison Ⅰ

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 またダメだった……。


 どうしてだ?


 前回と前々回で何が違った?


「シャロール……」


 どうして僕の思ったとおりに動いてくれないんだ……。


 シャロールの考えていることが何もわからない……。


「どうしたの?」


 シャロールは心配そうに尋ねてくれたが……。

 シャロールに訊いても答えてくれないだろうな……。


「何かあったのかい?」


 きっとヒュイさんに訊いても前みたいに聞き流されるだろう。


 こうなったら……。


――――――――――――――――――――


「女の子の攻略法!?」


 トルさんは大声で訊き返した。


「も、もうちょっと小声で……」


 シャロールに聞かれちゃう。


「すまん、すまん」


「わかりますか?」


「う〜ん、そいつは難しいな〜……」


 トルさんは上を向いて考えている。


「そうですか……」


 どうやら諦めるしかないようだ。


「どうせ喧嘩でもしたんだろ?」


 突然僕の顔を見て、ニヤリと笑ったトルさんに僕は驚いた。


「え! どうして……!」


「おいおい、そんなに大声出したら彼女に聞かれちまうぞー」


「あ……」


「どうしたの、佐藤?」


 前を歩いていたシャロールが振り向いた。


「い、いや〜、今サソリの鳴き声を考えてたんだよ」


 ごまかすついでに、伝えとこうかな。


「サソリの鳴き声?」


「そう! サソリはスコスコって鳴くんだよ!」


「そう……なの?」


「そんなわけ……」


 シャロール親子は疑いの目を向けているが、まだトルさんとの話が終わってないから……。


「鳴き声の話はまた後にしていいかな!?」


「う、うん」


「そうか……」


 まだ納得していないようだが、また前を向いて歩き出してくれた。

 これで話を続けられる。


「それで……どうしたら仲直りできますかね?」


 何か役に立つことを教えてくれないかなと期待を込めて尋ねた。

 しかし、トルさんは首を横に振った。


「申し訳ないが、俺に理屈はわからねー」


「……え?」


 じゃあ……。


「だが、一つ大事なことを教えてやるよ」


「なんですか?」


「女の子には誠意を持って、接することが大事なんだぜ」


「誠意……」


「自分の気持ちに正直になるんだな」


「……」


「さ、行ってこい!」


 そう言って、トルさんは僕の背中を押した。


――――――――――――――――――――


 タイミングがつかめない……。

 どうやってシャロールに話しかけたらいいんだ?

 いつもはそんなこと考えたことなかったから、逆に難しい……。


「あ、あの……さ、シャロー……」


「あれだな〜」


「そうですね」


 まずい。

 このセリフが聞こえたということは……。


 前方にスロウタースコーピオンが見える。


 もう!

 大事なところなのに!


 ビュッ!


 毒液なんか飛ばしやがって!


「そろそろだぞ〜」


 スロウタースコーピオンが間近に迫る。


 ビュッ!


 またまた毒液を避けて……。

 今度こそ、シャロールが話してくれればいいのだが……。


「シャロール!」


「……」


 シャロールは前回同様黙っている。

 これじゃあ、前回と同じだ。


 どうして言ってくれないんだ?


 ガァン!


「どうした、嬢ちゃん!?」


「……佐藤は」


 またあのセリフを言うのか?


 シャ!


 ガッ!


 ヒュイさんが右のハサミを受け止める。


「シャロール!」


 いや、シャロールが変わらないなら僕が変わればいいじゃないか。


 シャ!


 前回同様、左からハサミが来る。


 ガッ!


 受け止める。

 が……。


「シャロール?」


 やはりそうだ。

 どうやら変わっていないらしい。


「自分のことしか考えてない……」


 よし、決めたぞ。


「どうせ佐藤は私を利用してるだけなんでしょ!」


 僕はそのセリフを待っていたんだ。


「そんなことない!」


 すかさず、言い返す。


「へ?」


「どうして今僕がこのハサミを受け止めてると思う!?」


「どうし……」


「シャロールを守りたいからだよ!」


 言葉だけでなく、剣を持つ手にも力が入る。


「私を……?」

「でも、どうせ……」


「お前が好きだからだよ!」


 僕は必死に踏ん張って攻撃を耐える。

 僕の後ろにシャロールがいる限り、ここで引くわけにはいかない……!


「ス……キ……?」


「クソっ……!」


 前回よりは頑張ったが、もう……ダメだ……!

 手が震えている。


 何も変わらずにまた死ぬのかよ……!


「ごめんな、シャロール……」


 今度は守ってや……。


「スコスコ!」


 シャロールの力強い声が背中から聞こえた。

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