Sixth poison
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「シャロール、昨日は……」
「ふん!」
まだ怒ってる……。
僕はヒュイさんに小声で助けを求める。
「……どうしましょう?」
しかし、ヒュイさんは僕の心配なんてちっとも気にしていないようだ。
笑ってこう言った。
「大丈夫、大丈夫」
「それより、早く朝ごはんを食べて出発だ」
――――――――――――――――――――
「なんか今日は仲が悪いな〜」
「どうかしたのかい、勇……佐藤君」
昨日のおじさん……トルさんが僕に話しかけてきた。
今日はまたこの人と行くらしい。
「何もありません!」
というか……。
「他に人はいないんですか?」
こんな危険な依頼にギルド職員が二人だけなんて不安だ。
「それがなぁ、スロウタースコーピオンは至るところに侵攻しているから人員を割いていたら、俺とヒュイだけになっちゃったんだよ」
「なぁ、ヒュイ!」
「えぇ、そうですね」
へー、そんなに事態が深刻なのか。
急がないと。
「それに、シャロールちゃんもおじさんと一緒がいいだろう?」
「……」
シャロールはぼーっとしている。
「シャロール?」
「あ! なに?」
「シャロールちゃんは、おじさんと一緒がいいよな!」
トルさんは笑顔で問いかけた。
「えぇ……?」
シャロールは見るからに反応に困っている。
「それじゃあ、佐藤君とおじさんのどっちが好きだい?」
「トルさん、変なことを聞かないでください」
「娘も困って……」
「おじさん!」
シャロールが叫んだ。
「「「……ええ!?」」」
三人が同じ反応をする。
僕より……トルさん……?
「ど、どうしてそんなこと言うんだい?」
ヒュイさんが慌てて尋ねる。
「そりゃあ、俺は強くてかっこいいが昨日はあんなに熱いキ……」
トルさんは突然口を押さえた。
「熱いなに?」
「いや、なんでもない。口が滑っただけだ」
それはなんでもなくないのでは?
「それより、どうして佐藤君より俺なんだい?」
「だって、佐藤は私の言うこと、なんにもわかってくれないんだもん!」
これは昨日のことを引きずってるな……。
「そんなこと言わなくても……」
「ふーん!」
「ありゃりゃ……」
トルさんは苦笑いしている。
――――――――――――――――――――
「こっからは、気をつけるんだぞ」
僕達は聖なる泉の前にあったものよりも、はるかにでかい門を超えた。
「まー、最近はこの門を超えて来てるとか噂があるけどな」
「え!?」
「はっはっはっ、冗談だよ」
なんだ、よかった。
「……今のところはな」
「え?」
何か聞こえたような。
「ま、今日の頑張り次第だな」
「そうですね……」
ヒュイさんが
――――――――――――――――――――
「あれだな……」
「気づかれる前に……」
「どこどこー」
一度見ておきたいな……。
「危ねえ、伏せろ!」
え?
ビュッ!
何かがすぐ側に飛んできた。
「あれは毒液でな、素手で触ると目も当てられんことになるからな」
毒液……?
「鎧も溶けるから、気をつけるんだぞ」
マジで?
「こわーい……」
「さらにヤバいのは毒液を飛ばしてくるってことだな」
飛ばしてくる!?
外れてよかった……。
「おまけに、近づけば毒針で串刺しだ」
「それじゃあ、遠くから……」
「そうもいかないんだよ、佐藤君」
「ほ〜ら、来ちまったぞ〜」
トルさんは呑気に言った。
「え?」
遠くにぼんやりと見えていた黒い何かがこちらに向かってきている。
このままじゃ……。
「シャロールちゃん、準備しなよ!」
トルさんとヒュイさんはシャロールの前に出て身構える。
僕は……怖いからヒュイさんの後ろにこっそり移動する。
「そろそろだぞ〜」
近づくと、その大きさが明らかになった。
スロウタースコーピオンは大人と同じくらいの高さなのだ。
そして、それと同じくらいでかい針。
あんなのに刺されたらひとたまりもない。
ビュッ!
「うわ!」
僕は毒液をすんでのところでかわす。
「シャロール!」
早く話をつけてもらわないと……。
「あ、うん!」
「でも……」
ガァン!
トルさんが針をハンマーで弾く。
「どうした、嬢ちゃん!?」
「サソリの鳴き声って……?」
シャ!
忘れていた!
サソリは毒針だけじゃない!
あのどでかいハサミ!
ガッ!
「シャロール!」
ヒュイさんが右から来るハサミを剣で受け止める。
シャ!
しかし、すぐに左のハサミが目前に迫っている。
トルさんはまだ針と格闘している。
ここは僕がシャロールを守るしか……!
しかし、間に合うか……!?
「シャロールーーー!!」
僕はなんとかシャロールとハサミの間に割って入った。
が、そのままハサミは僕の胴体に直撃する。
あ、これは……死んだな……。
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