Fourth quest Ⅱ

 とりあえず、寝床は手に入れた。

 お金も老人からもらったものが少しはある。

 顔を上げると、日が真上にある。


 ん?


 日の出の直後にギルドに入ったのに、もう昼?

 前々から思っていたが、このゲームは時間の進みが早いようだ。

 恐らく少し暇をつぶしていたらすぐ夜になるだろう。

規則正しい生活の僕は昼から寝るのもためらわれたので、夜まで待つことにした。

 じゃあ、その間何をする?

 そう考えながら歩いていると目の前に広場が見えた。どうやらここが受付のお姉さんが言っていた広場のようだ。

 ちょうどいい、僕のスキルについていろいろ調べてみよう。


「ステータス、オープン!」


 ステータス画面を見るが、やはりスキルは『なし』と表示されている。

 確かスキルの使用はスキルを選択するんだったっけ。

 スキルを選択してみるが、やはり何も起きない。


「なしがスキルなわけないよな……」


 フォン。

 <スキルが使用されました>


 数秒間目の前にそんなメッセージが表示された。


「え!?」


 どいうことだ!? 

 今、スキルが発動したのか!?

 しかし、なぜだ? 

 前回王様の前で使用したときは何も起きなかったのに。

 前回とは違うところがあるのか?

 それは一体……。


「あの~、何か考えごとでもしているんですか?」


 突然声をかけられた僕が目の前を見ると、そこには中学生ぐらいの女の子が立っている。

 考え事に夢中で、近づいてくる彼女に気づかなかったようだ。

 そして、彼女をよく見ると……猫耳があるじゃないか!

 まさに異世界だ! 異世界ばんざい!

 そんなことを考えていると、彼女がさらに


「聞いてます? お~い」


 と言って、僕の顔の前で手を振った。


「あ、あぁ、聞いてるよ」


 僕は猫耳少女に動揺しながら答えた。


「よかった~」


「無視されてるのか思っちゃいました」


 彼女は胸をなでおろす。

 仕草の一つ一つがかわいいなぁ、なんて考えていると


「私、シャロールって言います」


 彼女が自己紹介を始めた。


「あなたは?」


「ぼ、僕は佐藤太郎です」


 緊張して、声が震えてしまった。しかし、彼女はそれに構わず話を続ける。


「私、さっき冒険者登録してきたんです」


「それで、スキルの練習のために広場に来てみるとあなたがぼーっと突っ立っていたんで……」


「おもしろそうだったので、声かけちゃいました♪」


 見知らぬ人に声をかけるなんてこの子には危機感がないのか?

 僕はそう思ったが、あえて口には出さない。

 まあ、そのおかげで彼女と僕は話すことができたわけだし。


「あの、やっぱり無視してます?」


 彼女の目が不安そうだ。


「そんなことないよ」

「ちょっと考え事してたんだ、ごめん」


「ふ~ん」


 彼女はいぶかしむような目で僕を見つめた。


「あなたはここで何をしてたんですか?」

「私は言ったんですからあなたも教えてくださいよ」


 僕は彼女を待たせないためにすぐに返事をした。


「僕もさっき冒険者登録をして、スキルの練習のためにここに来たんだよ」


 しかし、考えてみるとおかしいな。

 僕がスキル鑑定をして、ギルドを出たとき彼女を見かけなかった。

 そして、僕がギルドを出てここに来てからそう長い時間は経っていない。

 それに、冒険者登録はそんなに早く終わるものではない。

 本当に彼女はさっき冒険者登録をしたのか?

 少し不可解だ。


「わぁ~、あなたも初心者さんなんですか?」

「初心者どうしお互い仲良くしましょう♪」


 そう言って、彼女は手を差し出した。


 無視するわけにはいかないので、僕も手を出して握手した。


 <シャロールとのフレンド登録が完了しました>


 え!? 

 これだけでフレンド登録完了するの!?


「せっかくフレンドになったんですから、いろいろ話したかったんですけど……」

「もう暗くなってきたんで、私もう家に帰らなくっちゃ」

「バイバイ~!」


 彼女はそう言いながら走り去っていった。

 僕はそんな彼女の後ろ姿を呆然と眺めながら手を振った。


――――――――――――――――――――


 外はもう薄暗い。

 特にすることもないし、ギルドに戻るか。

 今日はいろいろな事があって疲れた。

 早く寝たい。

 受付で宿泊手続きを済ませ、二階の部屋に向かう。

 ドアを開けると、部屋の中に簡素なベッドが一つあった。

 僕はそれに横になり眠った。

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