白向く

エリー.ファー

白向く

 憧れがある。

 それは白さだ。

 混じりけのないものだ。

 混ざっていて不純であるから遠いのだ。

 物理的にも、それ以外の面から見ても距離があるのだ。

 きっと届かないと思わせるのだ。

 なにゆえか。

 私は求めている。

 私は私のことが好きではない。それは私以外の人たちも同じだろう。正面から私を抱きしめる勇気がなく、私になることができないままに私になってしまった。定義づけが曖昧なのである。重々承知しているとか、可能性の段階であるとかそういうことではない。

 私がいないのだ。

 それは純粋になってみようと取り組んでも同じこと。

 空なのである。

 上手く生きているはずなのに、空なのである。

 まるでここには何もないかのようにふるまう。事実ないのだが。

 そこにプライドが詰まってしまうことがある。

 それで勝つ。

 しかし。

 負ける。

 失う。

 それが恐いから、そこから出ようとした。

 外に出るのか内に入るのかは分からないが、何か移動するというものが希望そのものに見えた。

 今度、結婚をする。

 友達には話した。

 家族にも話した。

 誰かれ構わず話した。

 おかしい人と思われたかもしれない。

 まるで、狂っていると思われたかもしれない。

 でも、これでいいのだ。

 私は私がもう引き返すことができないという事実を余り上手に享受できないことを知っている。

 だからこうして、逃げ道をなくすのだ。

 大切だ。

 私はいつも逃げてしまうからこのようにして自分を強く持つのだ。

 良かった。

 私は強い。

 強く生きている。

 間違いない。

 私は成長している。

 そういう実感がある。

 間違いない。

 結婚が私を幸せにして、私は幸福を手に入れて、白くなるのだ。

 純粋になれるのだ。

 今までのやつはすべてチャラになって、結婚による染め直しが行われて私は純粋真っ白、不純物無しの幸せになる。

 なるのだ。

 お願いだから。

 お願いだから、大丈夫にして下さい。

 お願いします、神様。

 どうかお願いします。

 もう、そういうのじゃなくて、これで終わりにしたいんです。

 本当にお願いします。

 分かります。

 分かります。

 それがめちゃくちゃなことだというのは分かります。

 でも、いいじゃないですか。

 だって結婚できるように頑張って、色々なものを無視してここまで来たんですから。

 ねぇ。

 いいじゃないですか。

 もう大丈夫な状態にしてください。

 お願いします。

 大丈夫な未来をください。

 お願いします。

 今までだって、結構苦労してきたし、何とか自分の立場を守るために賢く立ち回ってどうにかやってきました。そのために、色々と犠牲にしましたけれど、でもそれはしょうがないことで私はそういうのとは無縁の生き方を選びたかったんです。

 本意じゃないんです。

 言い訳とかそういうあれじゃなくて、そういう感じじゃないんです。

 確かに、そういうことを言っちゃう人っていっぱいいると思うんですけど、あれです。私はそういうタイプの人間ではない感じなんです。

 綺麗ごととかじゃないですよ、これは本当に言い訳とかじゃなくて、心の底から見ることのできる真実なんです。

 私は普通で、ちゃんとした生き方をしたかったけど、なんとなくうまくいかなかっただけで、普通なんです。

 傷つけたくて傷つけた訳じゃなくて、その時の雰囲気とか空気でそうなっちゃっただけなんです。

 だから、それはノーカンです。

 ください。

 お願いします。

 大丈夫な未来を下さい。

 お願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

白向く エリー.ファー @eri-far-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ