拳銃の使い方

 目の前には拳銃、ピストル、リボルバー、どんな呼び方でもいい。

 トリガーとハンマーと、弾丸を発射する機構と弾薬が装填されていれば、それは立派な拳銃だ。


 6ミリのプラスチックBB弾でも、9ミリのファクトリーロードでも、それは変わらない。


 君はそれで何をする?


 エアガンなら、エアソフトスポーツで遊ぶことができる。

 実銃なら、適正な射撃場で腕を試すことができる。


 

 だけど、君の持っているそれがただの「おもちゃ」でないことはわかっているかな?


 スライドを引き、あるいはハンマーを引き起こし、薬室に弾薬が装填されて、安全装置が外されている。

 その不安定なトリガーに、君は指を掛けた。


 そのまま人差し指を引き切れば、薬室にある弾薬が何かしらの作用で発射され、銃口を通って、照準の先にある何かを射抜く。

 銃口の先に硝煙が立ち上り、発砲の反動を手元から腕で受け止める。



 その一連の流れが、拳銃で発砲する方法だ。


 だが、それはそもそも「拳銃」という道具の使い方に過ぎない。

 銃というものは武器だ。装填された弾薬を科学作用、もしくは機械動作によって遠くに飛ばすという道具だ。


 しかし、弾薬が装填されていない、あるいは発射できないものは拳銃と呼べるのだろうか?


 残念ながら、遊戯銃や模造銃という形でも拳銃は存在する。

 オリンピック競技にだって、ビームピストルやエアピストルというものがあるだろう? つまりはそれだ。



 話を戻そう。


 君の目の前には、ハードケースに収められた拳銃がある。

 君はそれを開封し、いつでも手に取れる状態にあるわけだ。


 銃の種類はなんでもいい、君の趣味嗜好でも、実用性を取ってもいい。弾種だって好きにしたまえ。



 だが、君はそれで何をする?


 他人に障害を負わせる可能性、あるいは殺害してしまう道具を手にして、何を成そうというのかね?


 道具というのは、それを使うのに相応しい者が手に取るべきだと誰かが言っていた。

 その話を鵜呑みにするなら、君はその銃を手にする資格があるというのか?



 だが、私はそうは思わない。

 道具は誰にとっても、道具でしかない。

 「ツール」と「ガジェット」で意味や用法が違うように、道具は使い手次第というわけだ。


 ならば、拳銃というものを道具たらしめるのは使い手に左右されるということだ。


 扱いが悪ければ、動作不良や自身の身体を撃つことになる。

 不用意に使えば、不必要な損害が出ることもある。


 全ては適切な訓練と知識、常に変化し続ける習慣が必要だ。

 しっかりと狙いを定め、標的を選び抜くことも求められる。




 だから、あえて問おう。

 君はどうして、トリガーに指を掛けてしまったのだ?


 そして、そのままトリガーを引いてしまったのだ?
























 期待していた銃声が――鳴らなかった。


 あなたの拳銃には、弾薬を発射するのに必要不可欠な部品が抜けていた。

 それを知らないあなたは何度も再装填を繰り返し、引き金を引き絞る。

 だが、何度繰り返しても望んだ結果は得られない。



 そして、あなたは「この拳銃は不良品だ」と放り投げた。

 







 あなたが放り投げた拳銃を誰かが拾い、分解整備を実施した。

 すると、必要な部品が足りてないことに気付き、適切な修理や改造を施す。

 


 その誰かは、手にした拳銃で発砲してみたくなり、懐に忍ばせながら人混みの中へと飛び出していった。







 

 街中で発砲事件が発生し、警官が凶悪犯を制圧。

 揉み合いの最中、凶悪犯が手にしていた拳銃を奪い、咄嗟の判断で凶悪犯に発砲したのだった。


 こうして、道具は適切に扱われ、その役目を終える。

 道具は使い手次第、道具は使い手を選ぶことができない。


 だから、あなたは目の前にある「道具」をどのように使うのかは勝手だ。

 だからこそ、その道具を扱うことの責任や義務は守らねばならないのだ。

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