第29話
さて、サクラはどこにいることやら。
数十分前、食堂で会ったのが最後だが、今はもう誰もいない。となると外か屋上だな。まずは屋上にいってみるか。
確かライフスキンを着ているので、アイアンワンドに頼めば一発で分かる。だがそれも味気なくなってきた。彼女たちの日常を、もっとこの目で拝んでみたい。
俺は海側の廊下を、のろのろと歩きながら外を眺めた。
「サン。だからこっちの疑似餌の方がいいって!」
「だからデージー。私はそんな針金みたいなの嫌。私はこれからも、ずっとこの木の疑似餌を使い続けるよ」
潮風に乗って、サンとデージーの声が聞こえてくる。そういやあいつらは釣りをするとき、海側の見張り台から糸を垂らしているな。それで恐らくルアーかフライかでもめているのだろう。
「ぜってー毛ばりの方が釣れるって。いいから早く使おうよ。早く早く!」
「だからデージー。嫌だって言ってるでしょ。それに毛ばりだと小さいのはたくさんかかるけど、大きいのはかからないでしょ。私は大きいのをゆっくり待つのが好きなの」
「うるしぇー! 早く早く早く!」
「渡されても使わないよ。どうせならどっちが多く釣れるか勝負しようよ」
「じゃあ私の勝ち勝ち! 私昨日二匹多く釣ったぞ!」
「重さは私が釣った大きな一匹に随分劣るけどね」
「じゃあ勝負だ!」
「また? 別にいいけど」
せっかちで早口なデージーに対し、サンは自分のペースを崩さずゆったりと話し続ける。こうも性格が真逆の二人が、深く長い付き合いをしているのだから、人間とは面白いものだ。
見張り台から釣り糸が垂らされた。先端にはそれぞれ毛ばりとルアーがつけられており、浜辺からそう遠くない海面に波紋を立てた。
ドームポリスは波止場のように、少し海に突き出ているが微々たるものだ。それに彼女らが使っているのはリールのない手作りの一本竿。魚のいそうな沖にはとても届きそうになかった。
「お前ら! 釣れるか!?」
俺は近くの窓から身を乗り出すと、見張り台を見上げた。
見張り台からのびた二本の竿が、びくりと震えるのが見えた。
「こ……これからだよ! ぜってぇ釣るから」
一拍おいてデージーの返事がするも、明らかに戸惑いを隠せない様子だ。
「ナガセ。魚に合わせた疑似餌がまだできていないんだよ。もうちょっと気長に待ってて」
サンも言い訳するように、たどたどしい返事をする。きっと釣果が芳しくない事を気に病んでいるに違いない。
しかしいくらお前らの技量が優れていても、浜辺近くに魚がいないんだから釣れ様が無い。だが沖に出れば話が変わるかもしれんな。キャリアにフロートをつければ、簡単に海上を走らすことができるだろうし、二人をデートにでも誘うか。
「興味があれば明日、沖に連れて行ってやる! どうだ!」
俺が言うと、竿が一斉に引っ込んだ。そして見張り台の床を蹴りつける騒がしい音がし、二人分の足音が階段を駆け下りてくる。
やがて俺が顔を出している窓の隣にある、見張り台に続くドアが勢いよく開くと、真っ青になったアカシアとサンが飛び出してきた。
「ごめんごめんごめんナガセごめん!」
「ナガセ! ごめんなさい! 大人しくポッドに入るから許して!」
二人は必死の剣幕で頭を何度も下げて来た。だが俺に怯えているのか、決して近くに寄ろうとしなかった。
何をそんなにビビっているんだか。沖に連れて行ってやるといっただけだぞ?
俺は困惑しながらサンの肩を掴んで、頭を下げるのを止めさせた。
「何で謝る? 沖には多分魚がいるぞ? 楽しみじゃないのか?」
サンは肩に触れる俺の手を見て、声にならない悲鳴を上げた。仕方なくデージーに視線をやる。彼女はギョッとすると、生唾を飲みこんだ。
「私たち海に捨てるんだろ! 言う事聞かないから捨てちゃうんだろ!」
「捨ててどうする? どうにもならんだろ」
「分からず屋が減るだろ!」
「逆に増える。そういうもんだ」
「じゃあ拷問するのか!? 調教するのか!?」
「そこに魚がいるかも知れんだろ。だからどうだと言っている。逆に聴くが、どうしてそう思う?」
俺の言葉にデージーが声を詰まらせた。どうやら根拠もなく、恐怖に駆られて妄想を膨らませていたようだが、それには必ず原因がある。
黙り込んだデージーに代わり、サンが口を開いた。
「だって。今までずっとナガセの言う通りにしてきたのに、初めて逆らったからさ。ちょっとびくびくしている。ナガセが怒ると誰も止められないし、サクラにすごい事したし、どうなるのかなって」
即座にデージーが「そうだよそうだよ」と便乗する。
「サクラに怒ったのは、取れもしない責任を取ろうとしたからだ。俺に逆らったからじゃあない。別にお前らがポッドに入りたくないならいい。俺が出来るだけ何とかする」
サンが驚きに目を見開いた。
「どうして……? ナガセのいう事聞かないのに……いいの?」
俺は真摯な眼差しでサンとデージーの瞳を覗き込み、こくりと頷いて見せた。
「自由だからだ。少なくとも俺達には、自分が思うように生きる権利がある。他人に危害を及ぼさない程度にな。ポッドに入るか入らないかで、当人以外の誰かが迷惑するでもない」
歯が浮くような台詞を俺は堂々と言ったが、現実に彼女たちが自由に生きることができていないのは分かっている。
切り詰めた生活に制限された活動を、俺が強いていたことは間違いない。それが例え、彼女たちの身を護る行いだとしてもだ。俺は冬眠を選択することで、自分と同時に彼女たちも追い詰めていたのだろうな。
「ああ……俺はいささか厳しすぎたな……」
そういえば俺は、彼女たちを『護衛対象』としか見ていなかったな。危険物から遠ざけ、最低限の護身を教え、人類に合流するために活動していた。だが俺と彼女たちの関係はそうではない。このユートピアで、共に『生きて』いく関係なんだろう。
俺たちに必要だったのは、作戦遂行のための連携ではない。共同生活のために理解し合うことに違いないな。
俺はピコを殺したことを、微塵も後悔していない。過去に戻っても同じことをする。必要な犠牲で、あれ失くしては銃を持たせることはできなかった。だがそのぶん歩みを落として、彼女たちの隣に並ぶべきだった。急いでケアをする必要も、無理に正常に戻す必要もない。ただ同じ人として生きるだけでよかった。
なのに、俺は内陸探査に逃げた。
「興味があるなら準備しておく。どうする? 自由に選べ」
もう一度、やり直せるだろうか。俺は彼女たちが喰い付くことを祈って、そう言った。
デージーとサンが互いの顔を見合わせる。そしてデージーが首を傾げた。
「どうしたの? お仕事いいの? ご飯無くて大変とか寒くて大変とか……」
「それを含めて沖に出る。それにだ、沖にはここにはいない魚がいるぞ」
見た事のない魚と聞いて、デージーとサンの眼が微かに輝いた。もうひと押しか。
「浜辺に近づけない、デカイ奴もいるかも知れん」
デージーがそのせっかちさから、即座に手を上げた。
「行く! あ! 行ってもいいの!? 本当に何もしない!?」
「向こうで問題を起こさない限りはな」
「あ……じゃあ行きたいかな」
サンものろのろと手を上げた。
「分かった。じゃあ明日の朝に出かけるぞ。そうだな……時間を指定したいが時計は合わせていないし……お前ら相部屋だったな。俺が起こしに行く」
俺の言葉に、デージーとサンが互いの手を合わせ、喜ぶような仕草を見せた。俺もつられて表情を綻ばせた。
そういえばサクラを探していたんだったな。
「それと……サクラを知らないか? 聞きたいことがあってな」
「さぁ。でも今日は天気がいいし、特に用が無ければ屋上にいるんじゃない?」
サンがドームポリスの天井を指さす。
「屋上? このクソ寒い中、どうして屋上に行くんだ」
「え? 寒いから屋上に行くんだけど。ナガセも知らなかったの? とにかく行ってみればわかるよ。サン早く勝負の続き続き! 今日天気いいから出来るうちにやろうやろう!」
デージーはそう言って、サンの腕を引っ張って見張り台に上っていく。サンはマイペースに俺に手を振りながら、彼女の後に続いていった。
残された俺は、ひとまず屋上への梯子を上ることにした。
屋上への梯子は人の往来が激しいのか、ステップに傷ができ始め、手すりが軽く汚れていた。屋上へつながるハッチには、『開けたら閉めろ』と書かれた、見慣れない板が貼り付けてある。文字はピオニーの物だが、貼り付けたのはきっとサクラだろう。
俺という存在が、彼女たちの日常を壊していることも分かった。ありのままの彼女たちを見たかった俺は、ハッチの蓋を僅かに持ち上げて、その隙間から屋上をちらと覗いた。
屋上には簡素な木製のテーブルが置かれている。女たちの手作りらしくディティールが荒く、そして脚の高さが違うのかカタカタと揺れていた。テーブルの隣には太陽光パネルの放熱柱がそびえたっており、少し離れたここにもほんのりと温かみが伝わってくる。屋上にいる理由はそれか。
テーブルには二人の女がついていて、丸太の上に腰かけている。それぞれサクラとアイリスだ。
サクラはテーブルに乗せた書類に何かを書きこみながら、頭を掻き乱している。足元にはデバイスを置いており、その上では踊るように足の指が動いていた。
アイリスの方はテーブルにすり鉢を置いて、躍起になって何かをすりつぶしていた。かなり力が入っているようだが、すりつぶしている物が硬い訳ではなさそうだ。ほぼ八つ当たりに近い事を、苦虫を噛み潰したような顔が物語っている。
「――セが焦るのは分かります。仕方ないし、どうしようもないし、だからこそ私が支えなければと思うのです。ですが、何も言わずに黙り込んで、それで邪魔するなって、それは酷いと思いませんか?」
アイリスの声がする。ストレスが溜まっているのか、冷静な彼女らしくないキーキー声だ。
「私たちがまだ頼りないからよ。文句言うなら気にするのやめたら? 私が何とかするから」
サクラが書類にから顔を上げて、アイリスを睨み付けた。
「あなたは盲目にナガセを信じすぎです。そんなあなたに何とかできると思いませんがね」
アイリスも負けじとサクラを睨み返す。二人の間に険悪なムードが流れ、しばらく歯を剥きだしにして威嚇し合った。
「大丈夫ですよ~。きっと何とかなりますってぇ~」
睨みあう二人に割って入るように、ピオニーが俺の死角から現れる。そしてテーブルに湯気の立つカップを二つ置いて、視界の外に出てしまった。サクラはテーブルの書類を掴むとピオニーの方に向けた。
「でも自給率は減り続けているのに、消費率は上がってんのよ! 信じられない!」
「ごめんね~数字の羅列見せられても~私バカだから分かりませ~ん」
「あんたにも関係ある事なのよ! 見なさい! そして理解なさい! 分かったらもう少し切り詰めて! 今日からもう少し肉を減らせない?」
「これ以上切り詰めたら~一日二食になっちゃいますよ~。それにみんな暴れますぅ~」
「分かっているなら危機感を持ってよホントにも~! イライラする~!」
サクラが再び髪の毛を掻き乱し、肘がテーブルに当たって小さく揺らした。そのせいで不安定なテーブルで力を入れていたアイリスが、手元を狂わせて大きくたたらを踏む。彼女はテーブルの上に倒れてしまい、カップを倒して、すり鉢の中身をそこら中にぶちまけた。
アイリスはこぼれた薬草を目にして、怒りに目を細める。そして呆然と書類に視線を落とすサクラに、すりこ木を突き付けた。
「何するんですか! この馬鹿!」
「それはこっちの台詞よ! カップ倒してお茶こぼしちゃって! 濡れて使えなくなったじゃないの!? 紙は貴重なのにこの馬鹿!」
サクラがすりこ木を横に払い、書類の一つを摘み上げた。
「字を弄る事しか能のない女が、薬を使うことを許されたこの私に馬鹿ですって? あなた鏡って知っていますか? 同じ台詞をそこで吐いて来なさい!」
「ナガセは私を信じてここの管理と申請書類の作成を任せてくれたのよ! それが字を弄るしか能がないって? あんたこそ自分の脳ミソ弄ってみたらどう? 欠陥がたくさん見つかると思うわ!」
「へぇぇぇ。じゃああなたに何が出来るのですか? アジリアの号令が無ければ鉄砲を撃てないのに? ピオニーの要請が無ければ食材も出し入れできないのに? それと同じで私が言わなければ薬を出し入れできないくせに。所詮あなたは仲介役。ナガセへの連絡係にすぎません。裸の王様がよく言いますね」
「言ったわねぇぇぇ! 言っとくけど申告採用の裁量には、私の良心と良識が関わっているのよ! あんたの様な性悪の書類は片っ端からはじいてやるわよ!」
ンな事したら俺がお前をはじくぞ。まぁサクラに限ってそれは無いだろうが。
「どうやら鏡を知らないようですねこの性悪! 残念ながら私はマシラを人間にしてあげることが出来ないのですよ。せいぜい来世に期待して下さい!」
お前らどこでその物言いを覚えたんだ。
サクラとアジリアが、鼻先をくっつけんばかりに顔を寄せて睨みあう。二人は猫の威嚇の姿勢の様に、尻を立てつつテーブルに手を付いている。はたから見ると、両方が馬鹿丸出しだった。
脇でピオニーがおろおろと足踏みする音が聞こえた。争い事の苦手な彼女の事だから、仲裁をしようとしているのだろう。やがて彼女は何かを思いついたように、手の平を合わせる音を立てる。
そしてピオニーは両手に新しいカップを持って、再び視界に現れた。
「ハイ。おかわりでぇす!」
それをすりこ木とびしょ濡れの書類の横に置く。サクラとアイリスは共に、ピオニーの方を向いた。
『引っ込んでなさいこのバカ!』
二人は声を揃えてそういうと、どっかりと丸太の上に座り直した。
彼女たちは項垂れるピオニーを尻目に、しばらく無言で見つめ合っていた。しかしすぐにその相貌から力が抜けて、同時にやるせない笑みを浮かべた。
「ごめんね……机揺らして……後酷いこと言って。八つ当たりしちゃった……」
「私も。ほぼ自分のせいなのに、因縁をつけました。すいません」
和解をする二人を余所に、ピオニーは不満そうにテーブルに手を付けた。
「え? お……終わりですか……? わ……私にも言うことあるんじゃないですかぁ~」
サクラとアイリスがピオニーに詰め寄った。
『お黙り! あなたはもう少し自覚なさい! 私たちヤバいのよ!』
「ご……ごめんなさぁい……」
ピオニーは二人の剣幕に怯むと、すごすごとテーブルを離れた。
サクラは溜息をつくと、考え込むように鉛筆を顎に当てながら、唇を食んだ。
「新しい狩場とかないのかな。ナガセどの辺探したのかな?」
「教えてくれませんからね……心配させまいと黙っているんでしょうけど……アジリアに内緒で鳥をしとめましょうか?」
「音までは内緒にできないわよ。それにナガセが駄目だって言ってるし。そもそもあいつら骨と皮だけでスカスカだからね。足しにならないわ。それよりどう? アジリアを後ろからズドン。一人分消費が減るわ」
サクラが皮肉気な笑みを浮かべて、鉛筆を拳銃に見立てて撃つ仕草をした。
「それには賛成ですけど、その後ナガセに殺されますよ。絶対」
アイリスが指でピストルを模し、サクラに向けて撃った。サクラは「分かっているわ。冗談よ」と返事をすると、悲痛な表情を浮かべて鉛筆を握りしめた。
「でも分からない。どうしてかな……どうしてアジリアがいいのかな……? 戦いの指揮とか、武器の管理とか、暴徒鎮圧機能とか。それに申告書も作れるし。どうして私たちよりも大きな権利を渡しているのかな? 一番いう事聞かないのはあいつなのにさ」
「分かりません……」
その時、屋上のスピーカーが、起動音の唸りを上げた。
『みんなに報告。あのアクマ狩りに出てないよ。ドームポリス内をうろついているから注意してね』
パギの滑らかな声が、ドームポリス中に響き渡る。すぐにサクラとアイリスが事情を察したらしく、目元を抑えて俯いた。どうやら初めてではないらしい。
「今度やったらデバイスにロックかけるって怒ったんだけどな……」
「それでも回数は減りましたよ。ピコが死んでからしばらくは、ナガセが居ない時はずっと言いっ放しだったじゃないですか。電気消費が物凄くて、大変でしたね」
ピオニーが自分のカップを手に、サクラの隣の丸太に腰を下ろした。
「元気があって、かわいらしいですねぇ~」
彼女はのほほんとした笑みを崩さぬまま、カップの中身を啜った。サクラとアイリスは、マイペースなピオニーの発言に頬を引きつらせた。
「はぁ。今遠隔操作でデバイス落とすから。少しは反省するでしょ」
サクラはそう呟いて、足元のデバイスを操作した。
『お前何してんだこの馬鹿! この前サクラにしこたま怒られただろうが! それに今ナガセが居るんだぞ! お前だけ電撃食らったことがねぇから知らねぇだろうが、あれクソ痛いんだぞ!』
放送からプロテアの声が聞こえる。成り行きを見守るように、サクラの動きがぴたりと止まった。
ちなみに俺にガキをいたぶる趣味はない。というよりパギに手を上げることができない。パギもそれを分かっていて、俺を恐れていない訳だ。だからパギは不遜な高笑いを上げた。
『アクマは私に手出しできないもんね! 私の仕事はお知らせ係だもん。お知らせして何が悪いの!』
だがそれはプロテアの低く唸るような声に遮られた。
『ケツぶっ叩かれなきゃ分からねぇようだな……ナガセ! 俺がお仕置きしとくからよ! 頼むからもう怒らないでやってくれ! デバイスも取り上げないでくれよ。頼むよ! さぁ行くぞ!』
衣擦れの音。デバイスが手元から落ちたのか、衝撃音がした。
『え! ちょっとまって! 早い! 早いから! 返事待ってからでも遅くないでしょ! それにまだ放送――』
尻を張る、小気味のいい音がした。一拍遅れて、パギの悲鳴がする。まぁ、電気を浪費されると困るから、適当にやってくれ。俺はそう思って、放送に耳を傾けた。
『おらおらおらおら!』という裂帛の声と共に、尻を叩く音が幾重にも重複して聞こえた。
ちょっと待て。どれだけ叩くつもりだ! それに間隔が短すぎる。縁日の太鼓じゃないんだぞ! 俺は思わずハッチの蓋を押し上げて、屋上に飛び出た。自分のデバイスを取り出して、急いでドーム内放送に繋げた。
「おい! その辺にしておけ! もういい! ガキの戯言なんかほっとけ!」
『おら――あ? 聞こえてるのかコレ?』
尻を叩く音が止む。すぐにパギが廊下を駆けだす音もした。
『さぐらおねぇぢゃぁぁぁん』
助けを求めるその悲鳴は徐々に遠ざかっていき、やがてプロテアがデバイスを止めようと、躍起になる声しかしなくなった。それもすぐに切れて、後には静寂が残る。
俺は視線を感じて、デバイスからテーブルの方へ向いた。
そこでは三人が、じっと俺の事を見つめている。テーブルの下ではサクラの足の親指が、エンターキーを押したかのように画面に触れていた。
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