第19話 萌芽ー9

 俺がドームポリスの外に出ると、女たちは気まずそうに視線を伏せて、わざとらしく仕事に集中する。

 無視だ。すぐに飛びかかってくる。

 前もって作っておいたバーベキューコンロを畑の隣に置き、火をくべ、赤々と燃え立つ炎を心を焼くために見つめた。

 コンロの隣には、生ごみを捨てるための穴がある。血抜きをするにはおあつらえだ。


「飯にするぞ。今日は外で食う。皆を呼んでくれ」

 その場にいた女たちが顔を輝かせる。作業具を片付け、仲間を呼びにドームポリスに引き上げていく。

 一瞬だがドームポリスの外には、俺以外いなくなった。

 チャンスだ。懐から薬物の入った注射器を取り出すと、俺にじゃれつこうと近寄ってきたピコの首を抱いた。皮膚を触り、その下の脈を探す。


 ふと視線を感じた。見渡すと塀上の見張り台で、金色の髪が揺れている。

 彼女は斜陽の輝きを受けて、悲しげな相貌を暗闇の中に浮かび上がらせていた。

 アジリアだ。彼女は誇示するように、腰のホルスターに収められた拳銃を揺らした。

『本当にやるのか? ならばもうお前は敵だ。いずれ殺す』

 そんな声が聞こえるようだ。

 俺も脈を探り当てる。ピコは撫でられていると思ったのか、尻尾を振ってはしゃいでいる。俺は彼女から目を離さず、ピコに注射針を突き刺し、薬物を注入した。


 ピコは苦悶するように激しく暴れ回ったが、俺は石像のように動かず、ピコを押さえ続けた。やがてピコの力が失われていき、眼から光が失せ、ぐったりと俺に身体を預けてきた。

 結局アジリアは何もしなかった。ただ溜息を吐くと、俺に背中を見せて、森の方へ視線を移した。


「ナガセ~、言われた通りおやさいだけ持ってきましたぁ~」

 ピオニーが野菜の入ったボウルを手に、のほほんとドームポリスから出てくる。彼女は俺の隣にボウルを置くと、唇に手を当てながら、材料をまじまじと見なおした。

「お肉がありませんね~。これじゃちょっと寂しいです~。干し肉を持って来ましょうかぁ~」

「肉ならここにある」

 腕の中のピコをピオニーに見せた。ピオニーは尻を獣にかじられたかのように、跳び上がって驚いた。


「ぴっ! ピコじゃないですか~! ぐったりしてますよ~! どうしたんですか~?」

「これから解体する。皆を――」

 俺はまだ喋りかけというのに、ピオニーはあわあわとピコに触れるか触れないかの所で、手を振り回した。何かしたいが、どうしたらいいのか分からず、手だけを振り回しているようだ。


「これはえらいことですよ~。アイリスちゃ~ん! 急患です~!」

「何ですか? またささむけが出来たとかつまらない事だったら怒りますよ」

 倉庫からおしぼりを手にしたアイリスが顔を出し、俺の腕に横たわるピコを見ると顔を青ざめさせた。素早く傍に駆け寄ると、聴診器をピコの腹に当てる。

「ピコ! やっぱり何かあったんですか!?」

 俺は聴診器をピコの腹から離させると、治療法を乞おうと俺を見上げるアイリスを見つめた。


「診る必要はない。これから殺して食材にする」

「は?」

 アイリスは俺の言葉を理解できなかったようで、真顔になって聞き返して来た。

「これからこいつを肉にして、皆で食べるぞ」


 それからアイリスは、ピオニーの泣き声をBGMにして喚きだした。最初彼女は「私がミスをしたの?」とか「どんな病気なの?」と矢継ぎばやに聞いてきた。俺が「腹が減ったからだ」と気のない返事をすると、「サイテー! オニ! アクマ!」と悪罵を連ねた。そして俺の腕からピコを奪還しようとするが、俺は彼女の手を払って突き飛ばした。


 アイリスとピオニーは涙目になり、お互いの顔を見合わせておろおろしている。そうこうしている内に片付けに戻った女たちが、女たち引き連れてピコの周りに集まってきた。

 アイリスはすぐに一番体格が良く、姉御肌のプロテアに飛びついた。


「プロテア! ナガセがピコを食べるって!」

 プロテアはキモを潰したようだ。彼女は俺の胸倉を掴み上げた。

「何ィ? おい! ナガセ! 一体どういう事だよ!」

「手を離せ。邪魔だ」

「お前がピコを離せ! お前のやることはほとんど正しいけどよ。こればっかりは許せねぇ!」


 俺は無言で彼女の手首の骨を掴み、思いっきり捻りあげた。プロテアは関節を極められて、顔から地面に叩きつけられた。

 全てが終わるまで大人しくしてほしいので、関節を極めたままにする。彼女は激痛に低い悲鳴を上げたが、これ以上の抵抗が骨折に繋がる事を悟ったようだ。そのまま動かなくなった。


「次」

 アジリアの次に強いプロテアを軽くあしらわれ、女たちは一斉にたじろいだ。

「来るなら早く来い。プロテアの骨が軋んでいるから早めにな。ああ、アイリス喜べ。もし次が来たら、プロテアの骨折を治療させてやるぞ」

 女たちは一瞬怯んだが、今度は引き下がらなかった。最初に声を上げたのはサクラだった。


「私のせいですか!? これもペナルティですか!? ナガセ!」

「サクラの罰とは関係ない。腹が減ったから食う、それだけだ」

 プロテアが草に埋まった顔を横にして、俺に呻いた。

「だったらピコじゃなくてもいいじゃねぇか! ピコは俺達の家族だ! それに必死で生きてんだ!」

「ピコじゃなければいいのか? じゃあ新しい鹿を狩ってくるか。同じ鹿をな。その鹿にも家族がいるし、必死で生きている。それでも同じように殺していいのか? 直接関係なければ殺していいのか!? 当然のように他に犠牲を求めていいのか!? 答えろ!」

 女たちが唇を噛んで、身じろぎする。


「う……けどよ……けどよ! 何でピコなんだよ! どうして……どうして!」

 プロテアが足掻き始める。骨の一本や二本はくれてやる覚悟のようだ。怪我だけはさせたくないので、俺はあっさりその手を離した。

 プロテアは立ち上がると、今度は俺に掴みかからず、ピコを奪い取った。


「食うために太らせたからだ。お前も承知のはずだ」

 女たちがピコに寄り集まって、腹を撫でたりつついたりして、必死で何らかの反応を引き出そうとしていた。薬が回っているから無駄だ。当分ピクリともできん。


 ついにプロテアの瞳から涙があふれた。

「弱かったんだぞ……あんなに弱くて、草すら食べれなくて……だから必死で面倒を見たんだ……少なくとも食うためじゃない! こんな弱い命を……守りたくて……」

「そうだ。その弱い命を犠牲にして俺たちは生きている。そして俺もお前達もそうしなければ生きられない弱い命なんだ。強い命なんてこの世には存在しない。理解したか。俺達はこうし尊い犠牲のもとに、今まで生きてきたのだ」


「それに――」と言いかけて、ここで俺は言葉を切った。流石に、既にピコの親を食ったとまで言う必要はないだろう。それを知るサクラには後で口止めしなければ。

 俺は女たちの輪の中に入って行き、腰からナイフを抜いた。女たちが何人か軽い悲鳴を上げる。


 パギがピコに覆いかぶさるようにしてしがみつく。

「嫌だ! 殺したくないよ!」

「パギ。もうお別れだ。最後に撫でてやれ」

「いや! いやいやいや! パギはずっとピコと一緒だもん! ずっと一緒だもん!」

「パギ。悪いがピコを食べないと、俺たちが飢えてしまう」

「他の鹿を殺せばいいじゃない! 何でピコなの! どうしてピコなの! 余所に鹿はいくらでもいるよ! 私たちが傷つく必要はないんだ! ナガセ! 守ってよ!」


 お前がそんな考えを持っているから、俺は動かざるを得ない。生贄を余所に求め、欲望を増大させていき、横暴な振る舞いは災厄と呼ばれるまで膨れ上がる。

 確信した。やはり殺すべきだ。ここで奪うべきだ。そしてその喪失感が、横暴の歯止めとなるように俺が支えなければ。


「俺が言ったことが理解できなかったみたいだな。その他の鹿もピコも、俺達も、根本的には同じなんだ」

 突然誰かがパギの首根っこを摘み上げた。ピコから引きはがし、自分の腕の中できつく抱きしめた。

 アジリアだ。彼女は暴れるパギをしっかりと抱きしめて抑えつけると、俺を睨み付けてきた。

 俺と対照的だ。奪うためにピコを抱く。守るためにパギを抱く。本人もそれを知り、際立たせようとしているきらいがあるな。


「言いたいことは分かった。薬が切れない内にやれ」

「でもアジリア!」

 アイリスが悲鳴を上げる。アジリアは俺を顎でしゃくる。

「このアクマはピコが起きても止めない。寝ている内に済ませてしまえ」

 女たちはもうどうしようもないと直感したのか、項垂れて何も言わなくなった。


 俺は再びピコを抱き直すと、首元を女たちに良く見えるようにした。ナイフの刃が夕日に赤い光を反射する。女たちは何人かが眼を背け、ピオニーとアイリスがその場から逃げ出した。

「目をそらすな。よく見ろ。今見ていない奴は、飯を食う資格はない。俺達が命をどのように扱っているか、よく理解しろ」

 ピオニーとアイリスが足を止める。そして、怯えた顔で振り返った。

「最期を看取ってやれ」


 ピコの喉を掻き切った。首筋に赤い筋が走り、血潮が吹き上がった。命の鼓動を受けて、傷口から定期的に血が迸る。女たちに、その赤い雫が降り注いだ。

「いやぁァァァァァ!」

 ローズが絶叫する。だが彼女はピコから目を離すことが出来ない。

 恐怖の虜だ。


 他の女たちも同様に、痙攣で震えるピコの四肢を、徐々に光を失うピコの眼を、次第に上下しなくなるピコの胸を、まるで縫い付けられたように見つめていた。

 パギが暴れるのをやめて、アジリアにきつく抱き付いた。アジリアもその身体を抱き返し、パギと共に、命の灯し火が消えゆくさまを見つめていた。

 やがて血潮が止み、傷口から濃い血液がどろりと溢れるだけになる。俺はナイフで脊椎を刺した。ピコの四肢が刹那ピンと張ったが、すぐに力が抜ける。


 死んだ。


 女たちは呆然と見ている。現実の認識を渋るように、ただただピコの死体を凝視していた。

 その中黙々と解体を始め、今日食べる分だけの肉を切り分けた。


 一人。興奮したように、目を輝かせる女がいた。

 ロータスだ。浅い黒い肌の、ミドルヘアの女だ。俺はピコの怪我の原因がこの女だと知っていた。何度か虐めているのを見た事がある。秘密裏にお仕置きを済ませたが、それでは物足りないようだ。

 心の中で舌打ちをしてしまう。こいつは俺と同じ匂いがする。下手すると喜んで人を殺すようになるタイプだ。

 注意しなければ。


 俺は解体し終えた肉を、皆に見せつけた。

「いつも食べている肉だ。今日はこれが飯だ」

 虚空を見つめてあんぐりと口を開けているピオニーに、俺は肉を押し付けた。

 俺は被った血潮をタオルで拭いながら、残りの肉を綺麗により分け始めた。


 ピオニーは押し付けられた肉を見て、まるで機械のように動きだす。混乱してまともに考えるのができないのか、かくかくと不自然な動きでいつもの食事の支度を始めた。

 ショックがでかすぎたか? ユートピア生まれはやわだな……先が思いやられる。

 ピオニーに押し付けた肉を奪い返して、自分で支度を始めた。

 肉と野菜を交互に串刺し、それを火にくべる。徐々に肉の焼けるいい匂いが、辺りに蔓延し始めた。


 俺はピコの背骨を取り出すと、水を張った鍋の中に入れた。骨とそれにこびりついた肉は、いいスープとブロス(出汁に使える肉汁)になる。半分は残し、半分は今日振る舞おう。そこにも野菜と内臓をいくつか放り込んで蓋をした。


 動物の内臓はほとんどが食える。生殖器や消化系は避けた方が無難だが、心臓、膵臓、脾臓などは肉と同じように調理ができる。別の鍋に内臓を入れて、塩漬けにしちまおう。これで保存食が増える。もって四週間程度だが。


 残りは頭部だ。脳ミソも舌も食える。だが――ピコにそこまではしなくていいだろう。俺はピコの頭部を撫でて、そっと死者を悼むように、墓用に掘ってある穴に入れた。そこには他の動物の骨も入れてあった。


 それからはいつもの食事だ。鼻孔をくすぐる肉の焼ける臭い。野菜の新鮮な香り。鍋が沸騰し、こぽこぽと泡を吹きながら、周囲に豊潤な芳香をばら撒く。

 俺は串を一本取ると、その肉にかぶりつき、スープを掬って喉に流し込んだ。

 美味かった。ただ。満足感とちょっと違うものが、腹に残った。


 女たちはちらちらと俺の様子を見守っている。胸の内の安っぽいプライドと、食欲が戦っているのだろう。だがロータスはあっさりと串を手に取った。そしてスープを椀に盛って食べ始める。


「う……う……ううう……」

 プロテアが乱暴に串を手に取った。まぁ妥当だ。彼女は働き者だから、いつも腹を空かせている。泣きながら串に刺さった肉を貪り、野菜を頬張った。そしてスープで無理やり流し込む。

 他の女たちも、一人、また一人と串を手に取り、食事をとり始める。だが、肉を食べる時、まるで鳥のように口先でついばんでいた。それから恐る恐る口に入れ、ゆっくりと噛みしめ始める。そこでぼろぼろと涙を流した。


 アジリアも串を手に取って、特に感情を乱さず、いつものように食べ始めた。パギもサクラに宥められながら、串を手に取る。だが、ローズだけが、いつまでたっても串を取ろうとしない。俺は心配になって、ローズに近寄った。


「その……大丈夫か? 分かっているこんなことはしたのは俺だし、そんな俺がこんなことを聞くのは腹が立つだろうが……その……うん」

 まるで童貞が初めて女性と話すような口ぶりだ。自分の未熟さにイライラする。だが俺がケアをしなければ。

 ローズは意外にも、不安を紛らわすため、俺の袖を掴んでくれた。

「う……うん……」

「食べろ。もたないぞ」

「わたし……いままで……ばかみたいにむしゃむしゃたべてた。おなかすいたから、それがあたりまえだとおもって、むしゃむしゃたべてた」

 彼女は魂の抜けた人形のように、酷く抑揚のない声で言った。


「わたしがたべていたのは、これなんだ……」

 ローズはその場に崩れ落ち、顔を手で覆って泣き始めた。

 どうしよう……ここまで堪えるとは思わなかった。汚染世界育ちと、ユートピア生まれでは、こうも心の強さが違うのか。

 俺が教師をしていたころは――確か慰めていたっけ? 黙って彼女を抱きしめようとするが、ローズはそれに抵抗した。


「ナガセごめん。離れて。ピコの血……私にはきついから」

 撃たれたような衝撃が身体に走る。自分の身体を改めて見直すと、拭き取れなかった血が、残滓として残っている。さらに擦るように拭ったせいで、全身が赤い斑点で染め上げられていた。まるで皮膚が赤くなったようだ。


 俺はレッド・ドラゴン。

 教師の永瀬はもう死んだ。

 俺は慌ててローズから身体を離した。


「分かった。アジリア……頼む」

 俺はアジリアを手招きしてローズを任せると、一つ串を取り肉だけをむしるようにして食うと、それをローズに渡した。

「野菜だけでも食べろ」

 ローズは野菜の串を受け取り、ぼぅっとそれを眺めた。そして、泣きながらヘラリと笑った。


「植物だって……生きてるんだよね」

 彼女はまるでピコが草をはむように、野菜を唇で食んだ。

「バカみたい……ホント……バカみたい」

 そしてアジリアの腕に抱かれながら、こぼれ落ちる涙を手の甲で拭った。


 すぐに血を流さないと……戦時の自分に戻ってしまいそうだ。すぐに食事の場を離れて、近くの海で身体を洗い流した。

 血が海に溶けて、赤い線を引いていく。それもすぐに波にかき消され、泡立ちながら、飛沫となった。


 願わくば。俺の罪も流れていかん事を。


 太陽が海に沈んでいく。風が止み、空が藍色に変わっていく。世界が暗闇に沈んでいく中、ピコを焼くコンロの炎だけが残る。俺は誘蛾灯に群がる羽虫のように、その光へと戻っていった。


 女たちから敵意を感じる。あのサクラでさえ、よそよそしく俺から離れた。皮肉なことに俺に一番近いのはアジリアだった。殺意が理由だがな。

「食べ終わったのなら、ピコを埋めるぞ。一人ずつ、土をかけよう」

 俺はシャベルを片手に、墓穴へと歩いていった。女たちはついてこない。当然と言えば当然だが、これを見過ごすわけにはいかない。俺は女たちを睨み据えた。

「来い」


 渋々と一人、一人と腰を上げて、俺についてくる。そして倉庫脇の墓穴を見下ろして、中に置かれたピコの頭をじっと見つめた。

 ピコの頭の周りには、砂をかぶった動物の頭骨がたくさん置かれている。サクラがおずおずと俺に聞いてきた。

「何の骨ですか?」

「今まで殺して食べた動物の骨だ」

 女たちが俯いた。

「少し離れた所に、お前たちの仲間もいる」

 俺はそう呟きながら、シャベルで土をすくった。


「え――」

 アジリアが声を上ずらせて、墓穴の隣にある盛り上がった土に目を向けた。墓標の代わりに建てた木の杭は、この三か月の時を経て苔むしている。俺が余裕のできてから初めて作ったものだ。他の女は特に気に求めず、アジリアも小首を傾げつつも無視していたがな。

「死んだ者も、かつては生きていたんだ。その事実を大切にする必要がある。それが出来ないから悪夢を見るし、平気で犠牲を求めることが出来るのだ」

 俺はすくった土を、ピコにかけた。首の根元が少し埋まった。両手を合わせて祈りを捧げる。


「ごめんなさい……」

 誰かがかすれた声を出した。俺への謝罪ではない。この尊い犠牲への謝罪だ。

 俺は無言でシャベルを差し出した。するとプロテアが進み出てシャベルを握った。土をすくい、ピコにかける。そして胸に手を当てて祈りを捧げた。誰かがシャベルを持つ。そして土をかける。そして祈りを捧げる。


 一四人全てが終えると、再び俺からやり直す。それをピコが見えなくなるまで続ける。やがて土が盛り上がると、そこに杭を突き刺して墓標にした。全員が泣きながら、ピコに最後の別れを告げた。

「今日の片付けは俺がする。皆。休んでくれ」

 俺の言葉に女たちは浅く頷くと、ドームポリスに入って行く。俺はその背中を呼びかけた。

「後で一人ずつ部屋を訪ねる。話しをさせて欲しい。話しに応じてくれるならドアを開けてくれ。どうしても嫌な場合はノックを返してくれ。だけど一週間以内に必ず話に応じて欲しい」

 誰も返事をしなかった。

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