木漏れ日話3


暑い夏

照りつける太陽の光が肌をジリジリと焼いていく

暑いというかも早い痛いと思える程だ。

つぅっと頬からつたる汗を手の甲で雑にぬぐいながら友人である華を待つ。


分厚い入道雲

炎天下

セミの鳴き声

人々の楽しそうな声

海の音


───そう、海水浴に来たのだ。


問題は女子の準備が遅くて待つのがつらいこと

準備体操のストレッチを軽く終えたがまだ来ない

遅いな…


そう、ため息をついた瞬間背中に冷たいものがあたる


「っぁ!?」

「おっ引っかかったー!やった~!

「っ…お前…二十歳にもなってやることが前と変わらない…ぞ…?」


背中に触れた冷たいものはペットボトル

声の主は待っていた友人だ。

くるりと振り返り彼女の姿を見る


一瞬、目が眩むような錯覚


「どう、かわいい?」


えっへんとどや!が混ざったような表情と仕草で水着の感想を求める


「肩出しすぎじゃない?」

「オフショルだからね!感想それだけですか~?」


ひょこっと覗き込むように一歩を踏み出し僕のことを見上げる華

近づかれた分、一歩下がる


「まぁ、似合ってるよ。いいじゃん」

「でしょ!この青のオフショルビキニ気に入ったんだ~」


その場でくるくると回る華

楽しそうでなによりです…。


いつもより肌の面積が多い

ちょっと見る場所に困るが、気がつかれたくもないのでいつも通りを装う。

軽い準備体操をもう一度二人でしたあとはもう海に飛び込む


まぁ、人の迷惑にならない範囲で


「つめたーーい!」

「あんまり遠く行ったら僕でも見失うからね」

「え~?」

「駄々をこねるな」


泳ぐというか浮かぶだけ

二人で海でタダただ、浮かんで駄弁るだけの遊び


水の温度が太陽の暑さで参った体を

徐々に冷やして癒してくれる


冷たい水が心地よい

最期に還ったのが海だったせいか

僕も華も海が好きだ。


冬の海が一番好きなのは内緒だが。


「えへへ、楽しいね」


目の前で微笑まれる

心臓が一瞬動きを止めそうになる

濡れた髪とか、肌とか見慣れない。


頭を横に振って軽く息をつく

「どしたの?耳に水でも入った?」

「そう、きもちわるいやつ」

「わかる~!」

「あれなんでだろうね…」

「さぁ……あ、ね、ねラムネ飲みたい!」

「急だな…?」


いつもの調子に戻って少し安心したのもつかのま

腕を掴まれる

いつもは服を捕まれるが今は残念なことに水着オンリー


触れられた部分が嫌に熱を帯びる

心臓とか神経が触れられた場所全てに集中する感覚。


「ぅゎ…」


最悪だ…

自覚した、

いやずっと前からしてたけど気がつかないふりをしていた。


引っ張られながら深い深いため息をつく。

これはやばいな。

大真面目に。


「どーしたの?」


なんて、頭にはてなを浮かべながら首をかしげる彼女

こっちの気持ちなんてお構いなしのようだ。


「…いや、息の根が止まる思いだなって」

「え!」

「冗談」

「は?」

「怒んなよ…」




長期戦だなこれ…

バカみたいにうるさい心臓の音が

どうか聞こえていませんように。


そう願いながら手を引く彼女の手を、握ったのだった













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