第4話 帰還作戦実行
薬の成分分析が終わった。
使用は可能と言う結果だった。
しかも薬にする事で苔を使用するよりもエネルギー効率がよく、後数本あれば全員を元の世界に飛ばすだけのエネルギーを得られるという事だった。
・アルド
「上の階層は既に取りつくしたから、此処から更に潜って取って来るよ。
その後、村に戻って薬にしてくる。」
・フルーレティ
「何から何まで済まないな、、、
ならこちらは魔法陣と紋章を造っておこう。」
よし、やることは決まった。
俺達は研究室のある地下3階から4階に向けて降りていく。やる事は変わらない、出口を見つけて苔を採取する。
最下層でやたらと強い魔物に遭遇したが、何とか撃破した。
撃破すると、どこからともなく宝箱が出現した。
、、、どういう仕組みなんだ?
大きなメダルも手に入れた。
お土産にでもするか、、、
最下層の奥にある出口付近に大量の『臨海ゴケ』を発見できた。
必要な分だけ持って行こう。
残った苔の存在を後でキロスに伝えておくか、、、
苔を入手した俺達は再び「トリナ村」に訪れた。
トリナ村では既に病気の混乱も収まり冒険者の数も激減していた。
この頃には既に夕方になっている。
・アルド
「ドンクも引き上げちゃったかな?
薬にして貰わなきゃだったのに、、、」
とりあえず酒場に向かう。
誰か居ればいいのだが、、、
・キロス
「あ、アルドさんおかえりなさい。」
運よくキロスが居た。
正確には俺の事を待っていてくれたらしい。
俺は事情を話すことにした。
・アルド
「と言う訳で、俺は一時的に魔族と協力して元の世界に帰ろうと思うんだ。」
・キロス
「成る程、事情は把握しました。
魔族と協力とは少し驚きましたが、あの洞窟に居た魔族の方も異世界の方達なんですね。
襲ってこないのならば無理に敵対する必要もないと思います。
薬の件は僕に任せてください、ドンクさんに依頼して来ます。」
助かった、まだドンクも村に居てくれたらしい。
聞けば冒険者の大半は既に街に帰還していったと言う。次の依頼を探しに行ったのだろう。
俺は苔をキロスに渡して宿に戻る。
キロスなら上手くやってくれるだろう、、、
~翌日~
・キロス
「アルドさん、おはようございます。
昨晩預かった苔は全て薬にしてあります。」
寝起きの俺の前に薬瓶が並ぶ。
その数20本!
どれだけの数が必要になるのか解らないため20本全て持って行く事にした。
早速フルーレティの元に向かう、今回はキロスも付いて来た。
異世界の魔族に会ってみたいらしい。
朝から村を出て数時間、いつもの洞窟に到着。
そのまま3階層まで進む。
拠点入り口には2人の魔族が居た。
見張りかな?
・魔族
「あ、アルドさんおかえりなさい。」
随分とフレンドリーに話しかけてくる。
共同作戦の事が伝わっているって事か。
共通の目的があると魔族とでも仲良くできると言う事実は今後、平和に向けての指針になりそうな気もするが、今は元の世界に帰る事が優先だ。
・魔族
「アルドさん、その少年は誰ですか?」
・アルド
「この世界での協力者だよ。」
・キロス
「は、、初めまして。
キロスと申します。
よ、よろしくお願いします。」
流石に相手が魔族って事で緊張しているな。
魔族と人間か、、、
ギルドナ達みたいに話せばわかる魔族が居る事をこの世界に生きる人達にも教えてあげたいな。
・魔族
「アルドさんが連れて来た方なら大丈夫でしょう。
この世界での協力者をすぐに連れてくるあたり流石と言うべきですね。
キロス君、よろしく頼むよ。」
敵対するような言葉ではなく歓迎される言葉を受けるキロス。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしているが、、、
その後、軽い話をしてからフルーレティの元に行く。
フルーレティと数人の魔族が忙しそうにしていた。
・アルド
「えっと、フルーレティ、ちょっといいかな?」
俺の声に気付いて振り返る。
・フルーレティ
「アルド!よく来た。
それで、薬の方はどうなった?」
かなりテンション高めで話しかけてくる。
隈が凄いぞ、大丈夫か?
・アルド
「あ、、あぁ、持ってきたぞ。
とりあえず今作れるだけの薬をすべて持ってきた。
これで足りるかな?」
20本の薬を渡す。
受け取ったフルーレティは周りで働いていた研究員たちに休憩するように促す。
どうやら徹夜で頑張っていたらしい。
研究員達は眠りに行くと言い放ちフラフラしながら部屋から出て行った。
・フルーレティ
「ほほぅ、まさかこんなにも持ってきてくれるとは!10本もあれば十分だったが予備があるのはありがたい。
試運転で使っても良いか?
出来れば安全性を高めて運用したいからな、、、
それで、その少年は誰だ?」
キロスの存在に気付いて尋ねてくる。
・アルド
「あぁ、今回この世界でお世話になってるキロスだ。この世界での協力者として来てもらった。」
・キロス
「き、、、キロスです。
よ、、よろしくお願いします!」
まだ緊張が解けてないキロスが一生懸命挨拶する。
その様子を見てフルーレティが仮説を立てた
・フルーレティ
「その様子だとこの世界での魔族と人間の関係性は相当悪いみたいだな。
恐れないでくれ、少年。
魔族と言っても君達とさほど変わらないと思う。
嬉しければ笑うし、悲しければ泣く。
怒りもするし感動もする。
人間よりも多少特殊な力があるだけだ。
まあ、中には人間を殲滅すべきだと唱える輩もいるが、、、それは人間達でも同じだろう?」
意味深な言葉を伝えてくる。
確かにそうだ。
俺達みたいに魔族と分かち合おうとする者もいれば絶対悪として見る者もいる、、、
見た目が違うからか?
・フルーレティ
「いいか、少年、、むやみに恐れないでくれ。
人間や魔族は実は弱い存在なのだ。お互いの存在を恐れているからこそ争いが生まれる。
魔族に同胞が殺された。
やはり奴らは危険だ、悪なんだ。
人間に同胞が殺された。
やはり人間は危険だ、滅ぼすべきだ。
お互いの主張はこんな感じだろう?
自分たちが生き残るために他の種族を滅ぼす、、、
自然の摂理とも言えるがな。
しかし私たちは意思疎通が出来る。
種族が違っても話し合う事が出来るのだ。
お互いの向き合い方次第だがな。
話し合えば分かり合えるように進化した存在、それが私達だと思いたい。
私とアルドを見てくれ。
共通の問題を前にしてお互いが協力し合っている。
無理難題でも協力すれば活路が見いだせる。
このように共存していく事が私達にとって一番の道だと思わないか?」
フルーレティの言葉を真剣に聞いているキロス。
恐れているから争いが生まれる、、、、か。
自分達は弱い存在だと言えるのは凄いな。
・キロス
「正直、難しい問題ですよね。
でも、僕はあなたに会えてよかったと思います。
この世界での教育では魔族は敵として教わります。
ちょうど僕もその授業を受けている最中ですし。
でも、フルーレティさんが言ってる事の方が正しいと、今は考えれるようになりました。
時間をかけて考えて、僕もこの難問に挑戦してみたいと思います。」
どうやら恐怖での緊張はなくなったみたいだな。
キロスとフルーレティか、、、この出会いがこの世界にとってプラスになると良いな。
・フルーレティ
「キロスと言ったな。
君は優秀な人材だ、出会えたことに感謝しよう。
アルド、素敵な少年を連れて来てくれた事に感謝する。」
俺にもお礼を言われたぞ。
何だかいい雰囲気だ、やはり争うばかりじゃ駄目だよな。
・アルド
「そっちの進捗状況はどうだい?」
・フルーレティ
「既にこちらに戻ってくる『転送の紋章・改』は完成した。アルド達の分はすぐにでも渡せるだろう。『魔方陣・改』は30%と言ったところだろう。
だが明日には完成すると思う。」
・アルド
「随分と速いな、無理してないか?」
・フルーレティ
「はっはっは!私の心配をしてくれるのか?
アルドは優しいな、流石は私が見込んだ男だ!
向こうに戻ったらデートでもしないか?」
徹夜明けだからか妙にテンションが高い、、、
デートって言われてもな、、、でもこのタイミングで無下にするのも悪い気がするし。
・アルド
「か、、考えておくよ。
とりあえず今は元の世界に戻ることが先決だし。」
俺の答えにビクッとするフルーレティ。
あれ?答え方間違えたか?
・フルーレティ
「デート、、、受けてくれるの?」
さっきまでの威勢が嘘みたいな雰囲気が、、、
どうしたんだ?やっぱり徹夜で疲れたのか?
・アルド
「無理だけはしないでくれよ?
頑張ってくれるのは嬉しいが、フルーレティが倒れたら意味ないからさ。」
・フルーレティ
「ぁぅぅぅ、、、」
本当にどうしたんだ?
急に弱々しくなったけど。
妙に顔も赤いしな、、、
・アルド
「とりあえずフルーレティ、休んでくれ。
後は俺が何とかするからさ。」
更に顔が赤くなってきた、、、
ちょっと心配だな、、、
そんな事を思っていると。
・女性魔族研究員
「フルーレティ様、お茶の準備が出来ました。
こちらで新しいお客様の歓迎をしませんか?
アルドさんもキロス君もこちらにおいで下さい。」
先程「寝る」と言い放ち部屋から出て行ったはずなのに、、皆元気だなぁ~。
促されるまま俺とキロスが隣の部屋に移動する。
女性魔族はフルーレティの所に歩いて行った。
「脈ありでした?」って聞いてる声が聞こえた気がしたが、、、気のせいか?
キロスが研究室に来て数時間、歓迎の席で挨拶を済ませてから雑談が始まり、随分となじんだ様子だった。その折に今回の作戦の事をキロスに話した。
魔族も話に加わり、親交を深めていく。
・キロス
「皆さんと出会えて本当に良かったです。」
終始そう答えていたキロスの言葉が印象的だった。
とても感動した様子で魔族との交流を深めていく。
・フルーレティ
「さて、そろそろ本題に戻ろうか。
こちらの『魔方陣・改』は明日の正午には完成している筈だ。今から渡す『転送の腕輪・改』に紋章を刻んでおいた。
この世界に戻る時は薬を腕輪に掛ければ良い。
薬のエネルギーが紋章に伝わると転送が開始されるようになっている
そしてこれが元の世界に戻ると思われる『転送の紋章』だ。発動条件は、『瀕死』になる事、、、
それでも本当にやるのか?」
心配そうに尋ねてくるフルーレティ。
その顔には心配と優しさが伺えた。
・アルド
「あぁ、構わない。
向こうに飛ばしてしまった15人にも謝らなきゃいけないしな。とりあえず転送先の状況を調べてから明日戻って来るよ。
うまく元の世界に戻れたかどうかも調べてくる。」
・フルーレティ
「そうか、、、、ならもう何も言うまい。
ここに手紙を用意しておいた、もしも元の世界に戻れたのならば私の助手に渡してくれ。
読めば『魔方陣』を書き換えてくれるはずだ。
助手は『ホースキン』と言う名の女性だ。
特徴は、、、
①やたらと分厚い眼鏡、
②長すぎる白衣、
③伸ばしすぎた髪の毛
④ローラーが付いている靴で滑るように移動する
⑤好きなものは『ねこ』
⑥口癖は『私はいつか猫になる』だ」
なんだか特徴のクセが凄いな、、、
会うのが怖くなってきた。
・フルーレティ
「あと、いつもネコミミを付けている。
良く忘れるが、語尾に『にゃ』って付ける事がある。ちなみに私の研究所は魔王城の南に位置する森の中にあるからそこに向かって欲しい。
注意してみれば辿り着くようになっているから安心してくれ。目印となっている『二股に分かれた木』をたどれば良い。
そのうち洞窟が見えてくるはずだ、そこが研究所となっている。
ちなみに助手はよく猫を探しに姿をくらます。
今回の騒動で助手が巻き込まれなかったのも研究所に居なかったからだ。助手を探すときは猫を探していれば見つかるだろう。」
多いな、、、特徴。
それに猫を探せと言われてもね、、、
まぁ見掛ければ間違える心配はなさそうだけどさ。
・アルド
「わかった、探してみるよ。」
・フルーレティ
「では、、、準備は良いか?
本当に大丈夫か?
瀕死にさせるけど、嫌いにならない?」
凄い心配してくれるのはありがたい。
正直瀕死になるのは嫌だけど仕方ないよな。
・アルド
「大丈夫だ、やってくれ。」
・フルーレティ
「ぅぅぅぅ、、、、
ごめんなさぃぃぃぃ!」
可愛らしい反応と共に強烈な一撃を食らう。
想像以上の衝撃に意識を失う。
意識を失う寸前、泣きそうな顔のフルーレティが見えた、、、
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