第3話 人と魔族

フルーレティとの同盟を済ませた俺は一度村に戻ってきていた。

今回の話を仲間にするためだ。

フルーレティも同胞に話すべく一時洞窟へと戻っていった。

その事で俺は少し悩んでいた。

この世界の人間の協力もいるのではないか?と。


・アルド

「さてと、どうしたものか。」


宿で悩んでいると、


・キロス

「おはようございますアルドさん。

起きてらっしゃいますか?」


キロスが迎えに来てくれた。

そう言えば今日は街に戻るって言ってたっけ。

んん〜、キロスに相談するか、、、


・アルド

「あのさ、ちょっと話があるんだけどいいか?」


話が話だけに慎重に切り込む。

キロスはそんな様子の俺を見て話を聞いてくれる体制になる。


・アルド

「えっと、、、実は、、、」


俺は昨夜のフルーレティとのやり取りを話した。

この世界での魔族の立ち位置が解らないから慎重にいかないとな。


・キロス

「にわかには信じられませんが、僕自身実際に魔族に会った事がないので何とも言えません。

ただ、この世界での魔族とは『人類の敵』と言う立ち位置に居ることは確かです。国やギルドには話さない方が良いかもしれません。スパイとして捕まってしまうかもしれませんし、、、」


成る程、、、俺の世界でも同じ様なものだからな。

やはりこの世界でも対立していたか。

キロスが慌てていないのが気にかかる所だが、、、


・アルド

「こんな話、キロスは信じるのかい?

ひょっとしたら罠かもしれないだろう?」


・キロス

「実際に会って話をしたアルドさんが信じられるというのですから、会ってもいない僕がとやかく言うのは違うかなと思いまして、ただし魔族の事は信用出来ないと聞いていますから用心だけはしておいてくださいね。」


物分かりの良い子でよかった。

という事はドンクにも言わずに進めた方が良いな。


・アルド

「貴重な意見をありがとう、この事は内緒で進めてみる。」


・キロス

「ドンクさんには僕から上手く話しておきますね」


この世界の事はこの世界の人に任せるのが一番だろう。キロスに任せて俺はフルーレティが待っているであろう洞窟に向かう。

彼女の話では、魔族たちは洞窟の4階層にワープしてきたらしい。

その場所を拠点として調査を行い元の世界に戻る手立てを探していたという事だ。


村を出て数時間歩くと洞窟に着く。

昨日までは冒険者たちで賑わいを見せていたが、村の病気の脅威がなくなると同時にこの洞窟に来る冒険者は殆ど居なくなっていた。

数人いる冒険者は他の依頼で来ているのだろうか?

軽く挨拶をして洞窟の中に入っていく。


洞窟の中には魔物が多く生息している。

ゆっくりと進み4階層まで進んで行くと魔族の姿が見えた。

戦闘状態ではない人型の姿だ、俺は洞窟内の初魔族の方に話しかけた。


・アルド

「あの、すみません。

ちょっとお尋ねしたいんだが、、、」


・魔族

「ひっ!!人間!」


逃げ出してしまった、、、無理もないか。

仕方がないので後を追いかける。

暫く進んでいくと開けた場所に出る。

そこには先程逃げ出した魔族の他に2人の魔族が居た。


・魔族

「止まれ、人間。

この先は通行止めだ、おとなしく引き返すのなら見逃してやろう。」


脅してくるが何やら優しいな。

話が通じるといいけど、、、


・アルド

「すまない、ちょっと話を聞いてもらえないか?」


・魔族

「引き返さないつもりか?

痛い目を見る事になるぞ!」


・アルド

「いや、ちょっと話を聞いて欲しいんだけど。」


・魔族

「帰らないつもりだな!

おい、みんなやるぞ!」


何故かやる気になる魔族の方たち。

相手は3人か、、、

話を聞いてもらえればいいんだけど現状は無理か?

仕方がない、気絶させるだけにしておこう。


こうしてアルド達と魔族の戦いが切って落とされる。まだ若い魔族たちだったのか、歴戦の戦士という感じはしない。

しかし必死に何かを守ろうとしている様子は伺える。彼らも必死なんだな、、、

出来るだけ痛くない様に戦闘不能になってもらおう。


、、、、戦闘終了後。

想像以上に粘った魔族の青年たちは地面に倒れていた。転送されない所を見るとフルーレティが何かしら対策をしておいたのだろう。


・アルド

「仲間を守ろうと必死だったんだな。

しかし、起きるまで話が出来ないぞ、どうしたものか。」


悩んでいても仕方ないので魔族たちの怪我の手当てをして起きるのを待つ。

暫くすると一人の青年が目を覚ます。


・魔族

「生きてる、、、どうして殺さないんだ?」


・アルド

「いや、最初から言ってるけど話がしたかっただけなんだ。」


俺の言葉に驚きと戸惑いを隠しきれない青年。

とは言え警戒は説いていない様子だ。

仕方がないのでこのまま話すことにする。


・アルド

「とりあえず、フルーレティに逢いに来たんだ。

出来たら話を通してほしい。」


・魔族

「まさか、昨夜フルーレティ様が村で出会ったと言っていた人間か?」


お、やっと話が進みそうな展開だぞ。

俺は肯定して謁見を求める。

話している間に他の魔族たちも起きてくる。

皆、生きている事に驚き、更に手当てをしてある事にも驚愕していた。


・魔族

「悪いがここで待っててくれるか?

あんたの事は信じていないわけじゃないが、皆が人間の事を信じられる訳じゃない。

俺がフルーレティ様に話を通してくるから、、、」


一人の青年が提案してくる、俺は快く受け入れて待つ事にした。一人が奥に消えていく、残りの2人は俺達の見張りだ。

暇つぶしに見張りに残った魔族たちとのコミュ二ケーションを試みる。

話題は、、、やはりギルドナの事だろう。

魔族たちの中での知名度は一番高いだろうし。

戦った話ではなく日常の何気ない話をしてみよう。

いつか東方に行った時に樽の中に入っていた事でも話してやろうかな。


~フルーレティ 研究室~


・魔族

「フルーレティ様、拠点入り口に人間が来ています。昨晩、村で会ったと申しておりまして謁見を求めています。

如何いたしましょうか?」


アルド達と交戦した魔族が平伏しながら報告する、フルーレティは何かの紋章を壁に刻んでいた。


・フルーレティ

「本当に来てくれたか、、、

分かった、私が呼んだ客人だ。

迎えに行こう」


フルーレティはその場を離れる。

この世界に残った魔族は、現在全て拠点に居る。

最初、魔族は23人だった。

しかしこの世界に来て既に15人が消息不明となっている。由々しき事態と感じたフルーレティは自ら動くことに決めた。

そうして村での出会いが生まれたのだった。


~拠点入り口~


拠点入り口についたフルーレティは驚きで一杯だった。あれ程に憎み合っていたはずの人間と魔族が楽しそうに話しているのだ、、、

お互いに笑顔で話す姿が印象的で、、、つい見惚れていた。


・アルド

「あ、フルーレティ。

ちょっと遅くなっちゃったかな?」


アルドの言葉で我に返る


・フルーレティ

「いや、、、そんなことは無い。

本当に来るとは思わなかった、、、」


少しバツの悪そうな顔をするフルーレティ。


・アルド

「とりあえずこの世界に来た経緯を話さないか?

元の世界に戻る手立てが見つかるかもしれない。」


・フルーレティ

「そうだな、では私から話そう。

私は研究室を持っていてな、紋章学を研究していた。テーマは『転送』だ。

危険に落ち折った時に、自動で安全な場所まで転送する事が出来る様に研究していた。

詳しくは言えないが順調に進んでいたがエネルギーとなる物の存在に困っていた所、突然妙な光が現れてな、、、研究室に居た仲間と一緒に吸い込まれてこの世界に来ていたと言う訳だ。」


そうだったのか、、、

しかし『自動で転送』ってなんだか凄いな。


・アルド

「俺達はじいちゃんの依頼で「月影の森」を調べていた時に光に吸い込まれた、そして気付いたらこの世界に居たって所だ。」


お互いに情報を出して擦り合わせていく。

フルーレティは最初23人いた仲間が今は8人になっている事を話す。

アルドは倒した魔族の人数が15人だと伝える。

殺していないという事もしっかりと伝え、フルーレティはその情報から『転送の紋章』が発動したのだと確信を持つ。

ならば彼らは元の世界に戻っている可能性が高い。

、、、、そう信じたい。


・フルーレティ

「現状で戻る方法は『転送の紋章』の発動が一番か?だが、どれだけのダメージで戻れるのか解らない上にちゃんと元の世界に戻っているか解らない。

成功したのかの確認が取れない以上、無理は出来ないな、、、」


・アルド

「その『転送の紋章』って発動条件は変えられないのか?死にかけないと発動しないって言う条件を変えればいいと思うんだけど。」


・フルーレティ

「結論から言うと無理だろう。

転送先の『魔方陣』が向こうの世界にあるのだ。

条件を変えるのならば、その魔方陣を書き換えなければならない。

それに仮に書き換えられたとしても、こっちの世界に伝える算段が無ければ意味がないだろう?」


確かにそうだ、、、いや、まてよ?


・アルド

「魔方陣の書き換えは簡単なのか?」


・フルーレティ

「素人には無理だな、、、私か、向こうの世界に居る私の助手なら可能だろう。」


成る程、ならばこうするしかないか、、、


・アルド

「例えば、、こんなことは可能かな?

①こちらの世界に戻るための『魔法陣・改』を作成、同時に世界に戻る新しい『転送の紋章・改』を作る。

②現在使っている『転送の紋章』で元の世界に戻る。

③助手に頼んで元の世界の『魔方陣』を書き換える。

⑤『転送の紋章・改』でこっちの世界に戻ってきて伝える。

⑥安全を確認した『転送の紋章』で元の世界に帰る。」


・フルーレティ

「不確定要素が多いが出来なくもない、、、

安全の保障がない上に、そもそも元の世界に戻っているのかもわからない。

私は反対だ、出来ればもう仲間を失いたくない。」


優しいんだな、フルーレティは。

よし、俺がやるしかない。


・アルド

「俺がやるよ。」


フルーレティは渋い顔をする。


・フルーレティ

「たとえ人間でも、分かり合えたんだ。

無理に危険を冒す必要はない。」


良い人だ、、、本当に良い人だな。


・アルド

「可能性があるなら掛けてみたいと思う。

それに、俺が倒してしまった魔族がもしも転送されたというのなら転送先にいる筈だろう?

ちゃんと謝りたいしさ。」


俺の申し出を受けて考え込むフルーレティ。

もう少し背中を押さなきゃかな?


・アルド

「キロスって少年に聞いたんだけど、この世界でも魔族と人間はいがみ合ってるらしいんだ。余り時間を掛けるのはよくない気がする。」


俺の言葉で決心したようだった。


・フルーレティ

「わかった、、、

そこまで言うのならアルドに任せてみよう。」


お、初めて名前で呼ばれたぞ。

少しは認めてくれた証拠かな?


・フルーレティ

「『魔方陣・改』は2日もあれば完成する。

『転送の紋章・改』も同時に人数分制作しておこう。問題は発動させるエネルギーだ。

この世界にある特有の苔がエネルギーとして使えそうな事は解っている。

人数分となると相当量の苔が必要になるだろう。」


だから魔族は『臨海ゴケ』を採取していたのか。

入り口付近の苔は取りつくしてしまったぞ?

深くに潜ればまだあるか?

『臨海ゴケ』で作ったこの薬は使えないのかな?


・アルド

「なあ、フルーレティ。

この薬は使えないかな?

『臨海ゴケ』で作った薬なんだけど、、、

実は村である病気が流行っててね、それの治療薬になる薬なんだ。」


俺は薬瓶を渡す。

フルーレティはその薬を受け取り見つめる。


・フルーレティ

「確かに苔と同じように不思議な力は感じる。

少し調べてみよう、奥までついてきてくれ。」


俺達は研究室まで案内された。

そこには小型の魔方陣が沢山彫られている。

研究所に来る途中で残っている魔族の紹介もしてくれた。

戦闘員4人、研究員8人、そしてフルーレティ。

フルーレティが薬の分析をしている間、皆と話しをしてみた。

皆俺の事を受け入れてくれたようだった。

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