第112話 ゲルガンダールの街を駆け抜けた


「ご主人様!あそこも!あっちの家からも煙が出ているぞ!」


「どうやら同時多発的に襲撃を受けているらしいな。おそらく昨日までに複数の坑道に隠れ潜んでいたんだろう」


「……行くぞ」


 あれから、なんとかリーネを納得させてその場を離れ、支度を済ませてグラファスの工房の正面玄関からゲルガンダールの街へと出たラキアとリリーシャを連れた俺を待っていたのは、たくさんの種族が行き交う活気の溢れた街並みから一転、あちこちから煙が立ち上る殺伐とした戦場の風景だった。

 そんな光景をさっと一瞥した俺は、本来の目的を忘れるなと己に言い聞かせながら同行する二人を促しつつ前を走り始めた。


「ご主人様、煙の出ているところへ行くのではないのか?」


「いや、それはゲルガンダールの警備隊に任せよう。俺達は、魔王軍が作り出したこの状況が真の目的から目を逸らすための陽動なのかどうか確かめるのが先だ」


「なるほど、わかった!」


 単に疑問を投げかけてきただけ、といった感じのラキアに簡潔に答えると、撃てば響くような返事が返ってきた。


 とまあ、目の前で起きているゲルガンダールの危機を半ば無視する形で突き進むことを決めたのだが、その覚悟はある意味で完全に裏切られることになる。






「ギャアアアァァァ!!」 「どうしたこんなものか!」


「あっちに行ったぞ!」 「ヒイイイイ!?」


「ここを破れば退路を断てるぞ!」 「壁際に追い込め!」


「よし、ここは片付いた。今から三つに分かれて他の地区の応援に向かうぞ!」 「ウオオオオ!!」


「おおっ、壮観だなご主人様!」


「私も実際に目にするのは初めてだが、これは……」


「ああ、圧倒的だな――ドワーフ族」


 グラファスの工房から走り続けて数分、周囲を見渡せる展望台に途中行き着いた俺達はせめて状況だけでも確認しようと立ち止まったのだが、そこで見たものはゲルガンダールに無数に存在する廃坑道から侵入した魔王軍の蹂躙劇、などではなかった。

 実際に起こっていたのは、完全装備のオークソルジャーを、自前のものと思しきバラバラの装備で迎え撃ち、しかも圧倒的な腕力と武器の性能差で圧倒するドワーフの戦士達の姿だった。


「見ろご主人様!あのドワーフが使っている弓、棍棒ほどの太さがあるぞ!おおっ!あの矢を受けたオークの上半身が鎧ごと吹っ飛んだぞ!私もやってみたい!」


「バカ言うな、あんなもの人族が扱えるわけないだろ。それにあれは命中率度外視の弓とは言えない代物、言ってみれば携行型バリスタだ。あれを弓と呼んじゃ駄目だ」


「そうかー、あれは弓ではないのか……」


 ガクッと落ち込むラキア。

 と、うなだれながらなぜか背負っていた和弓を持って矢を番えたかと思ったら、後ろを向きながら無造作に放ち、四区画先の路地から出てきたオークソルジャーの額に命中させてしまった。


「あの弓が使えれば、もっと遠くの敵も狙えると思ったのだがな……」


「オノレ!ヨクモナカマヲ!ンギャッ!?」


 ヒュカッ


「そういうことは人並みの距離しか当てられない弓使いのセリフだろうが。並の腕なら一区画先の的に命中すれば上出来なんだぞ」


 そんな風にラキアを励ましているのかけなしているのか分からないリリーシャは、その一区画先から飛び出てきた別のオークソルジャーの喉に手首の返しだけで投げたナイフを命中させていた。


 ……いやいや、並の弓兵並みの成果を投げナイフで上げてしまうリリーシャにだけは言われたくないだろうよ。


 そんなことを考えながら改めて眼下の戦いの光景を眺めてみるが、グラファスやリリーシャが言っていたことが良くわかる。

 街の内外に無数の坑道を持つゲルガンダールは、実は大都市でありながら外敵から攻め込まれやすいという弱点を持っている。今回もそこを突かれる形で魔王軍の奇襲を受けてしまったのだが、現在の戦況は誰の目から見てもゲルガンダール側が優勢。

 その理由はずばり、一人当たりの戦闘力の差だ。


「うおりゃあああ!」 「ギャフッ!?」


 また一人、オークソルジャーの断末魔の声が響いてきたが、その相手は他の戦士より二回りは小さい、斧を持ったドワーフ、つまり子供だ。

 その子供のドワーフがオークソルジャーの幅広の片刃剣とと真正面から打ち合って押し切ってしまった。

 勝負自体は結構ギリギリに見えたが、それでもドワーフの少年がフル装備の魔王軍の戦士を打ち破ったことだけは間違いない。

 子供ですらこうなのだ、大人のドワーフと魔王軍の戦力差は語るまでもない。


 その上、すり鉢状に作られたゲルガンダールの街には所狭しと建物が並び、その隙間を縫うように作られた道は人族の街と比べるとかなり狭い――それこそ、まともな軍隊が行進できないほどに。

 当然、そんな場所で戦おうとしたら、軍隊の最大の強みである多数での戦いなどできるわけがない。

 そんなホームグランドを持つゲルガンダールのドワーフ達は、ある時には少数対小数でこの力を存分に発揮したり、ある時には高所である屋根の上から一歩的に攻撃を仕掛けたり、またある時には道を封鎖して魔王軍を分断して混乱を誘ったりと、いたるところで戦いを有利に進めていた。


「おそらくは、常日頃からいざという時の備えを怠っていなかったのだろう。とっさの反撃にしては連携が取れすぎている。一見使いづらそうな道幅も、少数でも敵の進軍を止められる利点がある、といったところか」


「とにかく、良くも悪くも俺達の出番はここにはなさそうだ。とっとと通り抜けて会議場に――」


 ギャアアアッ!!


 俺がそう言おうとしたその時、これまで聞こえていた魔物の断末魔とは違う種類の絶叫が辺りに響き渡った。


「ご主人様あそこだ!」


 いち早く発生源を見つけたラキアの声に従ってその指差す方向を見た時、俺の中に例えようのない嫌悪感が生まれた。


 見た目は棍棒と盾を持ったドワーフの男。そこに疑いの余地はない。

 だが、遠目からでもわかる虚ろな目、鈍重な動き、足を引きずるような歩み、そして何よりもそのがっちりとした胴体を背中まで貫通した剣が、彼の命の灯火がとうに消えていると確信させるには十分すぎる証だった。


 つまり、あのドワーフは――


「アンデッドだ!?」 「ちくしょう!ズカノフの奴がアンデッドになっちまった!」 「下がれ下がれ!」


「まずいぞタケト」


「ドワーフの陣形が崩れたぞ、ご主人様!」


 俯瞰の視点、つまり俺達から見ればたった一体のアンデッドが出現した事態も、その場のドワーフ達にとっては戦意をかき乱す一大事だ。

 当然だ、俺達にとってはただの他人でも、あそこにいるドワーフ達には親しい友だったり、家族だったり、恋人だったりするのだ。

 死んだ者が起き上がるというだけでもショックなのに、他の魔王軍と同じように戦うなんてことをとっさに決意できるはずもない。

 追い詰めていたオークソルジャー達への攻撃すら中断された戦場は混乱の極みへ達しようとしており、リリーシャ、ラキアの言う通り、たった一体のアンデッドの登場で一気に形勢が逆転してしまった。


「どうするご主人様?ここからなら一矢で仕留められるが」


「よし、やれ!」


 という言葉をラキアに発しようとして、あのアンデッドを仕留めた後のことに思い至って言葉になる寸前で思い留まった。

 その俺の葛藤を代弁するように、リリーシャがラキアを制止した。


「止めておけラキア。死体だろうがアンデッドだろうが、あれはドワーフであることは間違いない。それをあの混乱の中で仕留めれば、同胞の死体を傷つけられたドワーフ族の怒りがこっちに向きかねない。そうなれば、会議場に辿り着くどころかこのゲルガンダールから逃げ出さなければならなくなるぞ」


「むううぅぅ、リリーシャの言うことは難しすぎる!」


「……ドワーフ共が怒るから止めておけということだ」


「わかった!」


 いつの間にかに名前で呼び合うほど仲良くなったらしいラキアとリリーシャの掛け合いは置いておいて、その会話の内容は俺の危惧した通りのことだった。


 ワアアアアア   アアアアアア


 さらに間の悪いことに、ドワーフのものと思しき絶叫や悲鳴がそこら中から急に聞こえるようになってきた。

 ――このタイミングでの急展開、原因は……考えるまでもないな。


「大変だ!串焼き屋の店長がオークに襲われてるぞ!」


 すっかり顔なじみになったらしいドワーフを見つけたラキアが叫ぶのを尻目に、俺は考えていた。

 まずい、なんてものじゃないだろう。

 ゲルガンダールの人達が有利に戦っていられるのは、狭い道のお陰で一度に多くの敵と戦う必要がないことと、矢や魔法などの飛び道具を使わせない状況にあるおかげだ。

 もし、このまま戦線が崩壊して各坑道の魔王軍が連携を取り始めたら、形勢はあっという間に魔王軍の方に傾く。それだけは阻止しないといけない。

 だが――


「急ぐぞタケト。魔王軍がここまで派手に暴れている以上、会議場の方も危機に陥っている可能性が高いということだ――今はその他のことに構っている暇はない」


「私はご主人様の命令に従うぞ!」


 異口同音。

 発したセリフこそ違えど、リリーシャとラキアの二人の気持ちは同じだった。

 聞き方によっては目の前のドワーフ達を見捨てるという風に聞こえるが、内心はその真逆、それぞれの得物を握る肌の色が真っ白になるほど、強い力が込められているのが一目瞭然だったからだ。


 そして、それに対する俺の答えは極めて簡潔で効率最優先なものだった。


「このまま突っ切るぞ」


「わ、わかった!」 「ふん、当然だな」


「ただし、どこから敵が現れるかわからない状況で戦場のど真ん中を行くのは自殺行為だ。最低限、混乱の原因になっているアンデッドをある程度無力化してから進むことにする」


「おおっ!さすがご主人様だ!」


「……本当にそれでいいんだな、タケト?」


「何を言うリリーシャ!ご主人様の決めたことに背く気か!?」


「そんなんじゃない。ただの確認だから気にするな」


「そうか、わかった!」


「で、どうなんだタケト。お前はそれでいいのか?」


「もちろんだ」


 俺の心を試すようなリリーシャの言葉にそう返したが、このセリフに嘘はない。


「俺の目的はアンデッドを止めることでも、目の前にいるドワーフ達を救うことでもないが、逆に目的に縛られて俺がやりたいことをやらない言い訳にするつもりもない」


「それでもし、会議場で取り返しのつかない事態に間に合わなかったらどうする?」


「それこそ無意味な仮定だろ。いつ来るかもわからないタイムリミットと、ちょっと手を伸ばせば救える危機とを比べること自体が間違っている。なあに、時間をかける気なんてさらさらないさ。駆け抜けるついでに速攻で終わらせてやる」


「……わかった、タケトがそこまで言うのなら従おう。それに、アンデッド対策に関しては少しは知識がある。上手くいけば被害を抑えることができるかもしれない」


「ん、話は終わったか?よし、では出発だ!!」


 気になる言葉を付け加えたリリーシャの同意と、相変わらず話を全く聞いていなかったラキアの号令で、俺達三人はドワーフ側が劣勢になりつつある戦いの場へと走り始めた。






「竹田無双流棒術、浸透撃」


 トーン   ゴォン


 見た目は何の変哲もない、むしろ敵を打つのには威力不足と思われるだろうアンデッドと化したドワーフの男への赤竜棍による攻撃。

 だが、肉体のさらにその奥、骨の継ぎ目を狙った精密な一撃を受けたアンデッドは、一瞬遅れてだらりと不自然に垂れ下がった右手から持っていた棍棒を取り落とした。

 予想外の出来事にその場で固まったアンデッドに対して、俺は続けざまに左肩、そして左右の股関節に脱臼させるのに必要最低限の打撃を見舞って完全にアンデッドの動きを封じた。


「誰か!一応四肢の自由は奪ったが、念のため縛って拘束しておいてくれないか!」


「あ、ああ。俺がやっておく」


 俺の行動を呆然と見守っていた見物人の中からその声を聞くと同時に、次のターゲットを探すべくすぐに走り出した。

 もちろん認識阻害の深編笠をかぶっているので俺の顔を知られる心配はないが、それでも和服という妙な格好をした異種族だという事実までは隠せないから、できるだけ周囲の印象に残らないように動く必要はある。そう考えての迅速な移動を心掛けていた。


「しかしご主人様、あのアンデッド達は一体どこから出てきたんだ?アンデッドになる理由はいろいろあるらしいが、死んですぐになるなんて話は聞いたことがないぞ」


 俺の後ろを走りながらそう聞いてくるのは、同じく深編笠で正体を隠しているラキアだ。

 ――正直、日除けが主な目的の深編笠とは真逆の二の腕と太ももがむき出しの露出過多の服装、もっと言えば変態にしか見えないラキアに向けられる周囲の目に耐えかねてさっさとあの場を後にした、といった方が正しい。

 ――ていうか、俺から見ても怖えよ。


「確かに、自然発生ってのはありえないらしいな。だったら残る可能性は一つ、誰かが故意に死んだばかりのドワーフをアンデッドにしたってことだけだろ。そして、俺達はその誰かに心当たりがある」


「そうなのか?うーんわからん!セーン一族の集落を襲ったあの死霊術師くらいしか心当たりがないぞ!」


「……ラキア、お前実はわざとバカな振りをしてるんじゃないだろうな?完全に正解を言っちゃってるじゃねえか」


「正解?何のことだご主人様?」


「………………いや、何でもない」


 本当にこんなアホを従者にしてよかったのか今更ながらに悩んでいると、不幸中の幸いなことに十字路の左角から姿を現した、こちらは深編笠をかぶっていない素顔のリリーシャが声をかけてきた。(俺達三人の中では唯一の亜人、しかも魔王軍の中でも裏方だったので、混乱中のゲルガンダールの中でも特に顔を知られていないらしい)


「ん、ここにいたかタケト。そら、お目当ての相手だ」


 いや、正確にはリリーシャ一人ではなかった。

 彼女の後ろには、着ているローブの端を掴まれて引きずられている、気絶した状態の青白い肌の魔族らしき男の姿があったからだ。


「仕事が早いなリリーシャ。で、どこにいたんだ?」


「ゲルガンダールに着いてからずっと、私が街歩きを続けていたのは憶えているな。その時にいざという時のために隠れる場所をいくつか見繕っていたんだが、その内の一つに潜んでいた。まあ、魔王軍のやり方を熟知している私が亜人側にいたのが運の尽きだったな。もちろん、仲間の居所など必要な情報はすでに吐かせてある」


「よし、これで思ったよりも時間を短縮できる。助かったよリリーシャ」


「……それは本当か?」


「うん?ああ、当たり前だろ。リリーシャが手伝ってくれたから、こうしてゲルガンダールの人達の被害を最小限に抑えることができているからな。とても助かってるよ」


「そうか、助かったか…………その言葉、覚えておけよ」


「ん?何か言ったか?」


「いいや、何でも(今はな)」


 なんだ?なんか様子がおかしいな……まあ今はいいか。

 なぜか気にしておかないと後で取り返しのつかないことになりそうな気がものすごくしているが、今はそんな場合じゃないもんな。


「う、うんん……こ、ここは!?なんだ貴様らは!?」


 とまあ、そんな考え事をしているのが時間を無駄にしたというかタイミングが良かったというか、リリーシャが引きずってきた魔族がその黄色い瞳を開いてリリーシャの方を見た。


「ようやく目覚めたか。使ったのは少しの間意識を失うだけの効果の弱い薬だったのに、ずいぶんとのんびりした魔王軍の死霊術師だな」


「そ、そういう貴様もダークエルフ、魔王軍の一員ではないのか!?重要任務中の私に手を出すことがどういうことかわかっているのか?下手をすればお前の一族ごと粛清されるかもしれんのだぞ!?」


「そういう面倒な話は今の私には無関係だな。それにしても、聞きもしないのに良くしゃべる奴だ。情報提供、感謝する。おかげでこの混乱を収拾する目途がついた」


「なっ!?貴様、まさか亜人側に……まさか私を殺すというのか?いや、それならとっくにやっているはず――そうか!この銅巧魔術師団六杖衆にもっとも近いとされているシュレード様を人質にするつもりなのだな!さすが私に目を付けるだけのことはあるな。ならば捕虜に対する待遇はそれなりのものを頼むぞ!」


 ………………うわあ。


 この世界に来てからというもの、それなりに頭の悪そうな奴にも会ってきたつもりだったが(ラキアはアホの星の子なので除外)、コイツはとびっきりだな……

 見ると、そのラキアも捕まえてきたリリーシャもドン引きの表情を見せている。

 だって戦争中に自分から名乗った挙句(しかも様付けで)、負けた直後に捕虜の待遇を要求するとか非常識という言葉すら生温いバカだろ。セーン一族の時といい、死霊術師ってのは超変人の集まりなのか?

 そもそもコイツ――いや、もう止めよう。どうせこの後の処分は予め決めてあったんだから。

 効率よく最短で、手早く済ませよう。


「……一言だけ言っておく。俺達はお前が生きようが死のうがどうでもいい」


「なんと!?ならば、疾くとく私を逃がすがいい!もし貴様らがこの後運良く魔王軍の捕虜になっていたら、この私が口利きをしてやろうではないか!」


「おま……いやいい、お前の話を聞く気はない。お前のことを記憶に刻むつもりもない。俺達はな――後は任せた」


「何を無礼な――へ?」


 ほんの数分で気疲れを感じてしまった俺が背を向けた先にいたのは――


「貴様か!ズカノフをアンデッドにしたクソ野郎は!」「おい!手が空いてるやつは集まれ!」「同法の魂を穢した奴に鉄槌を!」「よくもうちの人を!」


「ま、待ちたまえ!話せばわかる!私とて好き好んでやったわけではないのだ!すべてはシャクラ様が――やめろやめろやめろ!く、来るなあああああああああっ!?」


 あっという間に死霊術師の周りに人だかりができたかと思うと、その輪の中から肉を叩く音と骨が砕ける音が何度も響き始めた。


「タケト、他の死霊術師が潜んでいそうな場所をこの一帯の顔役に伝えてきた。あとは彼らに任せても大丈夫だろう」


「そうか、わかった。じゃあ、先を急ぐとしよう」


 正直、リリーシャのその言葉がなくても、俺は今すぐにこの場を離れていただろう。

 それくらい、ドワーフ達の怒りと死霊術師の断末魔は凄まじいものだった。


「そうか、これが戦争か」


「何か言ったかご主人様?」


「いや、何でも。お前は平気なのかラキア?」


「ん?何のことを言っているのだ?」


「……何でもない。行こう」


「わかった!」


 こうして、怒りに任せて死霊術師だったモノに群がり続けるドワーフ達を背に、俺達は改めて目的地の大樹界会議の会場に向かって再び走り始めた。

 ――まだまだ俺はこの世界の住人ではなかったなと、思い知らされながら。

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