第70話 四天王VSユウト

──俺達4人は魔王ビアンドが仕掛けた

俺達4人を別行動にさせる……

という罠に立ち向かおうとしていた。


ユウトは○の扉、

テルアキは△の扉、

ユナとサキは□の扉へ向う。


まずはユウトが○の扉を開け、中に入る。


……シュゥッ!


(……な、何だ? 今の違和感は?

扉を2回通ると体が消滅する……っていう

効力みたいなモノが発揮されたのか?


……でも進まなきゃ!

まずは勇者である僕が!

1番にこの罠をクリアして

外で皆を待って迎えるんだ!)


ユウトは勇者である自分の役割を意識し、

警戒しながら一歩ずつ進んで行く。


扉を通り抜けると、

そこに直径30mを超える

円形の闘技場の様な場所になっていた。


所々に柱が立っており、

灯が薄暗い周囲を照らしている。


ユウトは剣を抜き、

身構えながらゆっくり進んでいくと、

奥の方から不気味な声が聞こえてきた。


「……ほっほっほっ。

まさか人間の侵入者がここまで

たどり着くとは。

これはこれは、愉快痛快」


……チャッ、チャッ。


全身に強固な鎧を身につけた魔物が、

暗闇から姿を現す。

牛型の頭をした、力強そうな魔物だ。


「ふむ、ちょっと部屋が暗いですね。

挨拶代わりに灯を増やして差し上げましょう。

……オールファイア!!」


「……ぐわっ!? 炎の魔法攻撃っ!?」


ユウトは反射的に勇者の盾で身を守り、

ダメージを最小限に抑えた。


魔物が放った炎の魔法で

壁際にも全体的に灯がつき、

周囲が明るくなる。


「さて、1対1で戦うならば

まずは自己紹介を致しましょう。

それが騎士道と言うものです……」


魔物はそう言うと大きな剣を抜き、

ユウトに向けた。


「私は魔王ビアンド様をお守りする騎士、

四天王バッフです。

……さあ、貴方も名乗りなさい」


(……こいつ!? 話が通じる魔物っ!?


がむしゃらに襲ってくる魔物の方が

戦いやすかったけど、

冷静な思考が出来る分、厄介だ。

しかも四天王と戦うのは初めてだし……。


……でも! 負ける訳にはいかないっ!)


ユウトは自分の中にある不安を

打ち消すかのように、声を振り絞った。


「僕は伝説の勇者ユウト!

四天王バッフ! お前を倒す者だっ!!」


ユウトの言葉に一瞬硬直したバッフだったが、

すぐに笑い始めた。


「……ふふ、ふふふ。はっはっはっ!!

これは良い!! 伝説の勇者が

私の目の前に現れるとはっ!


貴方を倒して、私はビアンド様の

更なる寵愛を賜ることでしょう!


伝説の勇者ユウト!

相手にとって不足無し!

いざ! 尋常に勝負っ!!」


バッフは剣を振りかぶり、ユウトに迫る。


……バキーンッ!!


バッフの剣とユウトの剣が交錯する。


(……くっ! 速いっ!?

それに、なんて重さだ!

これが四天王の実力!?)


ユウトは思い切りバッフの剣を

切り替えして、反撃を試みる。


「うおぉぉーっ!!」


……バキーンッ!!


「……ほっほっ! そうでなくてはっ!

伝説の勇者よ!

さぁ、まだまだこれからですよっ!」


……バババッ!!


バッフの猛攻がユウトを襲う。

ユウトは堪らず盾で防御をするが、

その勢いに突き飛ばされた。


……ザザァッ!!


(……くっ! 強いっ! でも、何かおかしい?

伝説の勇者の剣で攻撃したのに

全然手応えがない……?


いくらバッフが強固な鎧を

装備しているとしても、

ダメージが少なすぎる!


……一体どういう事だ!?)


違和感を顔に現しながら睨むユウトに

バッフが答える。


「……ふふふ。

疑問に感じている様ですね。

謎を残したまま死ぬのも不敏ですから、

教えて差し上げましょう」


バッフは不適な笑みを浮かべて話を続ける。


「伝説の勇者ユウトよ。

我々四天王は、魔王ビアンド様より

それぞれ特殊な能力を

1つ与えられています」


(……なっ!? そう言えば、

前にテルアキさん達に聞いた!


既に倒した四天王ダンドは

……HPが異常に多かったって!

バッフの特殊能力は一体!?

……まさか!?)


「……ふふふ。

その顔は、どうやらご明察の様ですね。

そう、私は魔王ビアンド様より

強大な防御力を賜っております。


いかに勇者の剣が鋭い切れ味を持とうとも、

ビアンド様より賜ったこの特別な鎧と身体!

ただの剣撃に倒れる程

ヤワな相手ではありませんよ!」


(……そういう事かっ!

違和感の謎が解けたのは収穫だ。

ならっ! この戦い方でっ!!)


ユウトは勇者の剣を握りしめ、

バッフに叫ぶ。


「四天王バッフ!

お前が僕の前に現れたのが運の尽きだ。

僕はお前を……、必ず倒す!

うおぉぉーー!!」


ユウトは力強く勇者の剣を振りかぶり、

バッフに猛攻をしかける。


……バキーンッ! ……バキーンッ!


「……ほっほっほっ!

流石は伝説の勇者と言った所ですが、

まだまだぬるい!

その程度では私にかすり傷程度の

ダメージにしか与えられませんよっ!」


バッフの言葉に怯むことなく、

ユウトは攻撃を続ける。


(……これで良い!

このまま攻撃を続けるんだ!

……その先に、勝機がある!)


「うおぉーーっ!!」


……バキーンッ! ……バキーンッ!


ユウトの攻撃に少しずつ慣れてきたバッフが

攻撃を受け流しながら言う。


「伝説の勇者、この程度ですか!?

単調な剣撃にも、そろそろ飽きてきましたよ」


攻撃を受け流すバッフに、

ユウトは繰り返し剣を振りかぶる。


その戦い方を続けるユウトに、

バッフも飽きを通り越して

怒りを覚え始めていた。


「……いい加減にしなさい! もういいっ!

いつまでそんな無駄な攻撃を

続けると言うのだ!?」


だが、ユウトはまた

勇者の剣を振りかぶる。

バッフはユウトの攻撃を見切り、

剣で受け止めようとした。


……その時!!


「……ぐはっ! ……なっ! 何っ!?」


ユウトは勇者の剣を振りかぶったまま、

強烈な蹴りをバッフの腹部に放った。


「お、おのれ!

戦いの最中にフェイクを入れた蹴りなどっ!

それでもお前は騎士かっ!?」


ユウトがバッフに答える。


「違う! 僕は勇者だ!

勇者は勇者の……戦い方をする!!

……ファイア!」


ユウトはバッフの頭部にファイアを撃った。


「……ぐわっ!」


ユウトのファイアで

バッフの視界が一瞬奪われる。


ユウトはその隙に拳打と蹴りを

バッフの懐に撃ち込み、

そして体勢を崩したバッフの鎧の隙間に

勇者の剣を刺し込んだ。


(……いくら防御力が高くても!

鎧ではない身体の部分に直接攻撃すれば

少しは効くはずだっ!!)


鎧の内側に直接ダメージを受けたバッフは

地面に膝をつく。


「……ぐぬっ! おのれ、卑怯な!

……いや、それは違うか。

失言を許せ、伝説の勇者ユウトよ」


バッフは足もとについた

土ほこりを払いながら、

落ち着いて立ち上がった。


「戦士にはそれぞれの戦い方がある。

騎士、格闘家、魔法使い……。


全てを程よく織り交ぜた

バランスの良い戦い方……、

それが貴方の戦い方と言う事ですか。


成程成程、ならば良いでしょう。

私の全力を込めたこの技で、

貴方を葬って差し上げましょう。


さぁ……! 覚悟なさい!」


バッフは腰を低く身構え、

全力の突進で剣を縦横無尽に振りながら

向かって来た。


「食らいなさいっ! サーブルアシュ!!」


(……なっ! 速いっ!

しかもこの全方向の剣裁きはっ!?

……受け止めきれないっ!?


でもっ!

僕だって負ける訳にはいかないんだ!

……テルアキさん! サキさん! ユナさん!)


ユウトは皆の顔を想いながら

勇者の剣を握りしめた。

すると、勇者の剣が白くまばゆい光を

放ち始める。


(……これはっ!? ……そうか、勇者の剣!

僕の気持ちに応えてくれるんだなっ!?)


ユウトは真っ直ぐ突進してくる

バッフに向かって

全力で勇者の剣を振りかぶる。


「バッフ! お前の全力攻撃に……

僕も全力で応える!!

……行けえっ! ……メガスラッシュ!!」


ユウトが勇者の剣を

渾身の力を込めて振ると、

その刀身から巨大な閃光が発せられ

突進するバッフを飲み込んだ。


「……なっ! ばかなっ!?

私の防御力がっ!?

ビアンド様に賜った最高の防御力がっ!?


……負けるというのか?


……これが、伝説の勇者の剣!?


……これが、伝説の勇者の力!?


……私の防御力をも

凌駕するというのかっ!?


……ぐわっ! ぐわぁぁーーっ!!」


巨大な閃光はバッフを飲み込み、

そのままバッフの体を消滅させた。


……カラーンッ。


そして、消滅したバッフの跡に

○型の柄がついた鍵が転がる。


「はぁ、はぁ……やった。

勝った……。1人で……、

魔王ビアンドの幹部に勝ったんだ!


テルアキさん! サキさん! ユナさん!

……僕、やりましたよ!」


──こうしてユウトは

四天王バッフに勝利し、

○の鍵を手れたのであった。

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