第58話 合流

──伝説の勇者ユウトが召喚され、

数日が経過した。


ユウトはロティール城で戦闘訓練を終え、

グリエールを目指して出発した。


ロティール城

港町ブレゼス

修行僧の街グラチネ

城塞都市グリエール


とそれぞれの街に滞在して

付近の魔物と戦い、

修業をしながらの移動である。


ユウトは港町ブレゼス、

修行僧の街グラチネで

共に10日程滞在し、

付近の魔物と戦いながら修業した。


……そして

城塞都市グリエールに到着した。


ユウトは統括総督グルナード、

政務官シブールと面会し、

グリエールに無事到着した事を報告する。


その後、召集をかけられた

俺、ユナ、サキと合流した。


「皆さん! お久しぶりです!」


「ユウト、ココまで1人で

良く頑張ったな!

これからは一緒に戦おう!」


「ゆうたん! 久しぶりっ!」


「おぅ、少しは強くなったみたいだな。

勇者の装備が似合ってきたぞ」


「サキさん、ありがとうございます。

勇者の装備もしっかり

使えるようになりました」


「ユウト、キャラクターLvは

いくつになったんだ?」


「はい、テルアキさん、

……今はLv37です」


「そうか……。魔王に立ち向かうには

もうちょっとLvを上げた方が

良さそうだな……」


「そうですよね……。やっぱり、

Lv50は超えておきたいですよね」


「……僧侶様?

キャラクターLv50になるのは

結構大変だと思うけど、

魔王と戦うにはそのくらい必要なの?」


「ユナ、これは何て言うか、

俺達が元居た世界の感覚だな。

大体そんな感じなんだよ」


「そうですよね、テルアキさん。

最終ボスと戦うなら、

そんな感じですよね」


「ふーん、そういうものなんだね」


再会をして喜ぶ俺達4人に

グルナードが話しかける。


「伝説の勇者ユウトと

君達が無事に合流できて良かった。


ところで、今の話だと

すぐに魔王討伐には向かわずに

もう少しこの付近で修業する

……という事かい?」


「そうです、グルナードさん。

ユウトのキャラクターLvが

50になるまでは修業したいので、

魔王討伐に向かうのは

もう少し後になりそうです」


「……そうか、分かったよ、テルアキ殿。

強大な魔王に挑むんだ。

慎重にしっかり準備してくれ。


さて、事務的な話になって済まないが

少し相談しても良いかな?」


「何でしょう? グルナードさん?」


「詳しい話の前にまず、

君達に魔王討伐の計画を説明しておこう」


グルナードはそう言うと、

テーブルに地図を広げて説明を始めた。

俺達4人はテーブルを囲む……。


「我々が居る城塞都市グリエールと

魔王が住むキュイール島は

海を挟んで位置している事が分かるね?


グリエール最寄りの岸と

キュイール島までの距離は約1kmだ」


「1kmもあると泳げないよね。

グルナードさん、船で移動するんですか?


私達4人だけなら、魔法で飛んでいく事も

できるかもしれないけど……?」


ユナの言葉にグルナードが訂正する。


「ユナ、冗談を言ってはダメだよ。

島にたどり着いても、

その先も強力な魔物が沢山居るんだ。

君達4人だけで

行かせるなんて出来ないよ」


「なら、どうするんだ?

大勢で行くにも、

巨大な舟が必要だぞ?」


「そうだね、サキ。

実はユウト殿が召喚される前から、

兵士達がこの海を渡れるように、

100人以上乗船できる舟を2隻

造船していたんだ。


今頃は完成して、ブレゼスの港町で

待機している頃だろう」


「100人乗り!?

それは大型の舟ですね!

2隻って事は、200人位の戦力で

キュイール島に乗り込むって事ですか?」


「ユウト殿、

我々はそれでも戦力不足と考える。

この舟で2往復して、

総勢400名での進軍を計画中だ」


「グルナードさん、

魔王が住む最後の拠点に400名

……というのはちょっと少なく感じますが、

もっと、何千人の兵隊!

とかではないのですか?」


「うむ、テルアキ殿は

鋭い感覚をしているな。

ただの一般兵400名では

きっと直ぐに全滅してしまうだろう……。


今回召集するのは上官クラスの

猛者のみで構成される400名だ。

少数精鋭で挑む事になっている。


招集条件としては……


『一般兵20人を相手にしても

勝てる強さを持つ者』


……と通達を出しているよ」


「なっ!? それは凄いなっ!

グラチネだったら、

上級僧クラスの戦力だぞっ!


そんなヤツが400人も集まったら、

……一般兵8000人以上の

戦力って事か?」


「その通りだよ、サキ。

実は、グラチネの長老にも

協力依頼をしていてね。

グラチネからは30名程の精鋭が

参加してくれる予定だ。


修行僧達は格闘のスペシャリストだから、

貴重な戦力として、

我々も期待しているよ」


(……修行してた時みたいに

また皆と戦えるのかっ?

精鋭の上級僧30名、

……セドラも選ばれるだろうか?)


サキは一瞬、セドラの事を思い出した。


「サキちゃん、良かったね!

きっとセドりんも……、

一緒に闘ってくれるよ!」


「あ、ああ……、そうだな。

グラチネの皆が来るなら、

アタシも頑張らないとな」


グルナードが説明を続ける。


「戦力400名の内訳は……


王国兵士 310名

修行僧  30名

魔法使い 30名

僧侶   30名


と言った所だ。

そこに君達を加えて

キュイール島に進軍することになる」


「そんな準備が進んでいたんですね。

……ところで、グルナードさん、

先程言っていた相談って何でしょう?」


「うむ、テルアキ殿。

国中からこれだけの兵力を

召集することになっている。


およその日程を事前に関係者へ

連絡する必要があるので、

ユウト殿の修業が終わる目安を

逐次教えて欲しいんだ。


召集される者は準備をしているが、

出発する日が事前に分かれば

効率的に動けるからね。


正確な予定でなくても良いから

魔王討伐に向かう日の

約20日前、約10日前、

約5日前、2日前、


……位のタイミングで

知らせて貰えないだろうか?」


「それは勿論です!

国中から戦力を召集する訳ですから、

準備しやすくなる様、

しっかり報告させて頂きます」


「うむ、助かるよ。

では、よろしく頼む。

ユウト殿、テルアキ殿、サキ、ユナ、

君達の活躍、期待しているよ!」


「計画が分かってるくと、

いよいよ本番が近づいてる!って

感じがするね! 僧侶様っ!」


「……そうだな。

最後の戦いが見えてきたな。

修行もラストスパートだ。

気合を入れて臨むぞ!」


──こうして俺達は魔王が住む

キュイル島への進軍計画を

知らされたのであった。


この後、俺達4人はユウトと

戦闘での連携や互いの戦い方を確認する為、

付近の魔物達と戦った。


「はぁぁっ!!」


……バシーンッ!!


ユウトが持つ勇者の剣ひと振りで

魔物が一刀両断される。


「ゆうたん! 凄いっ!」


「流石は勇者の剣!

伝説の武器は伊達じゃないなっ」


ユウトの強力な一撃にユナとサキが感心する。


「ユナさん、サキさん、

ありがとうございます」


「なぁ? ユウト?

勇者の剣も凄いんだが、

盾、兜、鎧も相当なモノなんだろう?」


「はい! テルアキさん!

防御力が凄く高くて

ダメージを殆ど受けませんし、

鎧に至っては歩くだけでHPを

少しずつ回復してくれます!」


「……なっ!?

そんな凄い機能が付いてるのかっ!?

それは売ったらかなりの

高額になるんじゃないか?」


「こらっ、サキ!

何で金儲けの発想になるんだよ!?


そもそも、勇者の鎧は

勇者しか装備出来ないんだから、

買う人なんて誰もいないぞっ!」


「……じょ、冗談だよ、テルアキ」


「ところで、ゆうたんは

ロティールから1人でグリエールまで

来たんだよね?」


「はい、そうです」


「絶体絶命のピンチとか無かったの?」


「有難い事に、それは無かったです。


僕は魔法も少し使えるので、

魔法でしか倒せない魔物も退治出来ましたし、

ヒールも使えるので

隣町に辿り着くまでの道のりなら

問題ありませんでした」


「ええっ? そうなの!?

なんかズルいーっ!」


ユナはユウトの高い能力に

顔をプゥーと膨らませて

羨ましそうに睨んでいる。


(……全く! こんな顔も可愛いんだから

本当にユナには困ってしまうな……)


俺はユナの顔に見とれながら、

ユウトに聞く。


「まぁ、そう言うな、ユナ。

……ところでユウトは

どんな魔法を使えるんだ?」


「ファイア、ブリザード、

ヒール、ムーヴ、スピード、

……それから、ムーヴタウン、イグジット、

です。


最低限の攻撃、回復、補助、移動魔法……

って感じでしょうか?」


「……そっかぁ。

それを聞いてちょっと安心したかな。


ゆうたんが全部の魔法が使えたら、

私や僧侶様が、何だか

寂しくなっちゃうもんね」


「あと、キャラクターLv30を超えても

全体魔法が使えないので、

恐らく上級魔法も使えないと思います」


「なるほどな。

全体的に色々とバランス良い能力で

……っていうのは勇者っぽいな」


「僕もそう思います、テルアキさん」


──こうして俺達4人は

互いの能力を確認しながら

この日の戦闘を終えた。


そして皆で夕食をとった後、

宿屋に向かうのであった……。

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