第48話 四天王ダンドに再戦!

──修行を終え再開した俺達は

出発前に統括総督グルナードに会い、

四天王ダンドにリベンジする事を伝えた。


そして四天王ダンドがいる

ラグー遺跡の最奥まで進み、

神殿の大広間に到着した。


……ドスンッ、ドスンッ。


「あれから100日だな。

待ちわびたぞ、人間ども」


ダンドの不気味な声が

大広間に響き渡る。


「ダンド、久しぶりだな。

今日こそお前を倒して

勇者の盾を奪還させてもらう」


「……なるほど、人間ども、

確かに強くなった様だな。

だが、果たしてこの俺を倒せるかな?」


「強がり言っていられるのも

今だけだよ!」


「魔女か……、ふふふ。それは楽しみだ」


「僧侶様!? 私からやってもいい?

強くなった私の魔法で

丸焦げにしちゃうんだから!」


しかし、俺はユナの言葉に直ぐには頷かず

慎重に作戦を考えていた。


(3人がそれぞれ様子見で

1人ずつ攻撃するのも良し……、

3人同時攻撃で一気に大ダメージを

狙うのも良し……、


……さて、どうしたものか?)


すると、サキがゆっくり1歩前に出た。


「……うん? サキちゃん?」


「……ユナ、テルアキ、

悪いが先手はアタシだ。


以前、こいつの蹴りで

死にかけた借りがあるからな。

……まずは、きっちりソレを返させてくれ」


「ほぅ、短剣の女か。

良いだろう、かかって来い」


すると、サキはダンドと10m程距離を取り、

大きく深呼吸をした……。

そして、ダンドの額に短剣を向ける。


「おい、ダンド! ……アタシは今から、

真っすぐお前に向かって突進して

お前の額を短剣で斬る。覚悟しろ」


「えぇっ? サキちゃん!?

何で行動を言っちゃうの!?」


「ふははっ! 馬鹿かお前は!?

戦闘中に自分の行動を伝えるなど、

愚かにも程があるぞ!」


しかしダンドは警戒しながら

サキの様子を観察する。


(この女……、今のは俺を惑わす為の

虚言か? それとも何かの罠か?)


「良いんだ。分かっていても

お前はアタシの攻撃を避けられない」


(……爺さん! 皆!

修業の成果を見せてやるぞ!)


「さぁ、行くぞ。3、2、1……っ!!」


サキはカウントダウンを始めながら、

意識を集中した。

そして、目にも留まらぬ速さで

ダンドとの距離を一気に詰めた。

その素早い動作は一瞬、

サキの姿が消えたかの様だった。


(……なっ! 消えたっ!?

いや、違う! は、速いっ!?)


……バシュッ!!


「ぐあぁぁっ!!」


ダンドが気づいた時には

その額から血飛沫ちしぶき

上がっていた。


「ぐはっ!! 女!

……お前、一体何をしたっ!?」


「はぁ? ……言っただろ?

真っすぐ突進して

お前の額を斬ったんだよ」


(ば、馬鹿なっ!?

この俺が反応できなかっただと!?

攻撃に迷いも無駄も全くない!

そして恐るべき身体能力!


……一体、どんな修業を

してきたと言うのだ!?)


「サキちゃん凄いっ!

本当に前言通りやっちゃったよっ!」


戸惑うダンドと驚くユナをしり目に

俺はダンドに攻撃をしかける。


「次は俺だ。行くぞダンド!

……マクスエアー!!」


俺は風の上級攻撃魔法を唱えた。

鋭く大きな空気の刃が無数に飛び

ダンドを襲う。


俺は攻撃の効果が増すように

サキが斬りつけたダンドの額の傷に

空気の刃を集中させた。


……バババッ!!!


空気の刃はダンドの頭部に的確に命中し

さらに大きな血飛沫があがる。


「ぐおぉぉっ!!」


(上級魔法だとっ!?

しかも的確な狙いで魔法を制御している!?

予想以上のダメージだ。

早く回復せねばっ!?)


続いてユナが一歩前へ出る。


「僧侶様、自分だけズルイよぉ。

次は私っ!……マクスファイア!!」


ユナが炎の上級魔法を唱えると、

巨大な炎がダンドの全身を襲った。


「ぐはぁっ!!」


「えへへ。でも本気はココからだよ!」


するとユナは両手を掲げて

ダンドの全身を襲う巨大な炎を

頭部に集めていった。


……ゴゴゴッ!!


炎がダンドの頭部に集まるにつれて、

より一層高温で強力な炎が

ダンドの頭部を襲う。


集中した炎による高熱は

ダンドの傷口を介して

直接、脳にダメージを与えてゆく。


(……馬鹿な!? こんな事がっ!

上級魔法の炎を操るだどっ?


……はっ、ダ、ダメだ……。

脳が焼ける様だ……。

意識が……薄れていく……。

体が動かない……)


……バダンッ!


ユナが撃った魔法の炎が消えると同時に

ダンドは意識を失い、地面に倒れた。


「あ……、倒れちゃったよ」


「気を失っているが消滅はしていない。

さすが沢山のHPを持つ魔王軍の幹部だな」


俺とユナの上級魔法を見たサキが

驚きの声を上げる。


「お前ら! 凄いじゃないか!

こんな強力な魔法の攻撃ができるなんて!」


「えへへ。一生懸命魔法の研究と

お勉強したからねっ」


ユナはサキに笑顔でVサインを送る。

しかし俺は、喜ぶユナとは対照的に、

2人にある真面目な相談をもちかけた。


「……ユナ、サキ、相談だが、

今からダンドを回復しても良いか?」


「……えっ!?

どういう事? 僧侶様!?」


「そうだぞテルアキ!

お前、何言ってるんだよ」


「……まぁ、聞いてくれ。

以前の戦いでダンドに敗れた時、

ダンドは俺達をワザと逃がしてくれた

……と思うんだ。


翼を持ったコイツなら、遺跡の外まで俺達を

追いかける事も出来た筈だからな」


「それはそうかもしれないけど……」


「それに今、ダンドは俺達に

反撃する間もなく倒れただろ?

こんな戦い方で良いのかな?

……って思ってしまって」


「確かに、油断してたコイツも悪いが、

今のは不意打ちで仕留めた

……みたいな勝ち方だったな。


それに倒れているコイツに

今ここでトドメを指すのも後味悪いし」


「……決まりだな。サキ、ユナ。

悪いが俺の好きなようにさせてくれ」


「うん、良いよ僧侶様。

ダンドとはこれで1勝1敗。

次が最後の勝負だねっ!」


俺はダンドに回復魔法を唱えた。


マクスヒール!


ダンドの体が金色に輝く

温かい光に包まれる。


(……うぅ、何だ? この温かみは?

俺は、まだ意識があるのか?)


すると、ダンドはゆっくりと起き上がり

床に座る体勢をとった。


「はぁ……はぁ……。お前達、

まさか俺に回復魔法をかけたのか?」


「……そうだ。

お前が反撃する間を与えず、

一気に不意打ちする……

みたいな攻撃をしてしまったからな。


それに、お前には

前回見逃してもらった借りがある」


(な……、何なんだ? この人間共は?

敵を回復させるだと?

……しかも、今のは上級回復魔法だ。

俺を完全に治すつもりだったのか?)


「……とんだお人好しだな。回復した俺に

殺されるかもしれないのだぞ?」


「そうはならない。俺達はお前と戦って

もう一度お前に勝つからな」


「ふははは。これは愉快だ。

しかし、その言葉には実力の裏付けがある。

認めよう……。俺の負けだ。


……勇者の盾はこの奥にある。持って行け」


「おい、ダンド。お前、そんな事言って

勇者の盾を取りに行くアタシ達を

背後から襲うつもりじゃないだろうな?」


「見くびられたものだな。

魔王軍四天王ダンド。負けを認めた相手に

そんな卑怯なことはしない」


「わーい!

やったね、僧侶様!サキちゃん!


それに、 勇者の盾を

返してくれてありがとうね!

ダンちゃん!!」


(……なっ!?

魔王軍四天王の1人を

『ダンちゃん』って呼んだ!?)


……。


大広間の中に微妙な沈黙が流れる……。


「おい、魔女。念のため確認するが、

その『ダンちゃん』というのは

……まさか俺の事ではあるまいな?」


「……え? そうだよ。

ダンドの『ダンちゃん』。

見た目通りの『鳥さん』の方が良かった?」


……。


ダンドは笑顔を向けるユナに

戸惑っている……。


「……済まないな、ダンド。

ユナはこういう性格なんだ。諦めてくれ」


「あ、ああ……、分かった

……と言っておこう」


「ところでダンド、

お前はこの後どうするんだ?


もしお前が今後も人を殺めるなら、

俺達はここでお前を放ってはおけないぞ」


「……俺は元々、

怪我をして死を待つだけの鷲だった。


それを魔王ビアンド様が

瘴気しょうきと魔力によって

このような姿にして下さったのだ。


ビアンド様の魔力が及ばない

遠い場所に行けば

次第に元の姿に戻るであろう。

今後は遠くの山に行き、

ひっそりと死を迎えるさ」


「……そうか、分かった。

最後は穏やかに死を迎えろよ」


「でも良いのか? テルアキ。

コイツはアタシ達人間の命を

沢山奪ったんだぞ。


今ここで犠牲者達の仇を打つ!

……って考えもあるんじゃないか?」


「サキ、それはきっと正解の1つだ。

でも今それをしても、

ダンドの命が1つ奪われるだけで

誰かが救われる訳じゃない。


……それに、お前は

戦う意思がないコイツを殺せるのか?

それはただの殺戮だぞ」


「……ぬ、確かにそうだな」


サキは俺とユナに

やるせない表情を見せた。


「サキちゃん、

奪う必要のない命なら助けてあげようよ。

きっとそういう気持ちが

平和で温かい未来を作っていくのに

大切なんだと思うよ」


「……わかったよ」


「では俺はゆくぞ。

世話になったな、人間よ。さらばだ」


話が終わると、ダンドは神殿の外に出て

大きな翼を広げ羽ばたいて行った。


「……よし!

俺達は勇者の盾を手に入れるぞ!」


──こうして俺達は勇者の盾がある

奥の小部屋へ向かうのであった。

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