好き勝手に描きました!
黒煙草
練習という名の戦闘描写
俺の世界は敵意に満ち溢れていた
────────────────────
黒のタンクトップが白い肌を強調させ、ジーンズの腰に装着した2本の刀【血犬猟犬・弐頭】は黒々と、爛々と血を求め、俺はトイレスリッパがターゲットのいる室内を響かせる
「見つけたぜ、あんたがこの企業のトップだな?」
俺はとある部屋のドアを蹴破りターゲットを見、戦闘態勢に入る
その男は暗闇の中、背後に光るコンソールの灯りを元に複数表示させ、必死になにか操作していたがこちらに気付く
「ん?……っ、君は……そうかそうか」
「悪いがひとりで納得するなよ?終わったら情報共有と洒落こもうじゃねぇか」
「いやなに、悪態をつこうとした訳では無いのだが────」
俺は敵の言葉をさえぎり、腰に携えた二刀のうちの一振を跳び上がりからの頭上から振り下ろしを行うも、ガキィンと謎の障壁に阻まれ、俺は手を痺れさす
「魔障壁?!」
「デスクワークで鈍っているとでも思ったか?」
「今まで殺めたやつは鈍ってたよ!」
刀に入れた威力を反動に俺は飛び退くと、一気に加速して側面に入る
敵の視界から離れ、片手を地面に着けながら体勢を低くして死角からの攻撃を繰り出すも魔障壁に防がれる
(常時障壁展開……範囲は0コンマ5メートル、強度は1本じゃ無理そうか)
「っ、早いな…!」
「気づくのおせぇなぁ!」
俺は一撃目を防がれた後も這うように地を駆ける
2次元的な移動すら対処できないと判断し、俺は攻撃手段を変えるべく片方の腕で1本抜く
二刀流────それによってこの【血犬猟犬・弐頭】は本領発揮する
二刀一体、それがこの【血犬猟犬・弐頭】である
2次元的動き、それは点と線だ
点という個体、線という地面
その速度が早いほどデスクワークの人間には追いつけない
「ど、どこに────」
「フッ!」
姿勢を低くして脇側面からの
「クソ、【焔の獣よ──」
だから俺はもう
刃がノコギリ状の血犬は、魔障壁から剣先による火花を散らしながらも削っていく
「──眼前の敵を焼き喰らえ!】」
「ダァァァアアアア!!」
俺は獣の形をした炎に首筋、肩や二の腕、両太ももを食われながら火傷を負う
しかし、二刀の突き刺し攻撃を諦めないことで魔障壁を打ち砕き、敵の脇腹に突き刺さった
「ぐぅう!」
「いってぇなぁ!!」
喰われ、噛まれた皮膚は黒々と変色するが血は流れなかった
止血までしてくれる炎魔法は助かるってもんだ
「ピンチはチャンス!」
「参考にさせてもらおうかね!」
俺は噛まれながらも二刀を横薙ぎし、敵の腹を裂こうとするも、敵は体を回転させて最小限の中傷に済ませた
「んなぁ!?」
「社交ダンス位は嗜んでいるので、ね!」
俺の驚きは思考力を低下させ、寸前に見た敵の右手に集まる魔力は、酷く冷え、俺の眼前を凍らした
「ア”ァ”!?目がっ!!」
俺は怯み、立ち往生する
典型的なカウンター型の魔法使いに油断した俺のミスだ
そして敵には賞賛を送りたい
嗜みとはいえ、瞬時に判断できた体の回転からの冷凍攻撃は負傷にはいたらなかったが俺の五感のひとつを奪うには相当の魔法を熟練・熟知していることになる
攻撃魔法は炎魔法に拘らず、冷凍魔法があるとすれば風や光、闇すらも使える可能性があると言っても過言はない
改めて────俺は敵の強さを更新する
「あんた、名前は?」
「依頼書くらい見たらどうだ?それとも殺すことにしか興味が無いのか?Dr.キリヤだ、みんなからそう呼ばれていたよ」
「あいにく顔だけを、依頼書からしか見ない質でな。そうか、キリヤか……」
俺には攻撃手段がもうひとつあるが、条件が揃わないと発動しない
故に────今はまだできない
「元々部屋が暗かったんだ、存在すら視覚出来ないってのはハンデにしかなんねぇな」
「悪いがこの部屋に立ち入ったが最後、死んでもらうからな」
「ハッ!上等!!」
複数のコンソールが犇めく以外、ものは置いてない
足場は敵の捨てたジャンクフードのゴミ等が炎の魔法で焼き焦げて落ちているだけで、不安定でもない
俺はキリヤの出方を伺うように、ジリジリと感覚で距離を置く
キリヤは動いてないのか、息の吸う吐くをその場でしているように感じた
久々の見えない世界に体を慣らすように血犬と猟犬を手の感触で確かめて振るう
「【真・叡残斬】」
聞きなれない魔法───
「ア、ガァッ!」
斬の付く魔法が風だと思い出すまでに、俺の片足が飛び、血潮が床を赤に染める
だが────と、俺は嗤う
「……?片足を無くせば立つことすらままならない、そのような状態で何が出来る?」
片足立ちをみたキリヤは疑問をぶつける
「嗤う、ことは出来るかねぇ…っ!」
片足だけのまま、俺は跳躍しキリヤがいるであろう場所に二頭を突き刺す
「どこに剣を突き立てている?」
「チッ」
二頭は地面に牙を立て、俺は改めてキリヤを感覚頼りに探す
「見えぬとは不便だな」
そこに
顔面に衝撃波
無詠唱による初級風魔法だ、威力は低いもののこちらの感覚を鈍らせるには丁度いい
「辛そうだな、終わらせよう…【始まりの魔法よ、光を飲み込みし闇、深遠なる黒、敵を呑め】」
俺は地面が泥沼化することを察知すると、二頭をそのままに跳ね上がるように飛ぶ
「残念だがそこは射程範囲内だ」
ドバっと、空中に浮く身体が何かに包まれ、俺は行動不能に陥る
「……、────っ!!……っ!!」
「闇は全てを飲み込む、触角視覚聴覚嗅覚…声すらも、神経すらも、な」
つまり、俺の声は俺にしか聞こえないというわけだ
そして『俺』ならば、装備にも伝わる
それは幾千もの戦闘を共にした二振りの刀にも
闇に飲まれた瞬間に叫んだ俺の声はキリヤには届かず、二頭はそれを聞き、命令に従った
闇が俺を蝕み始める
黒く染めんと、皮膚から肉、骨がまるで闇の中に元々在ったかのように感覚がなくなっていく
しかし、射程範囲外にあった二頭は地面から勢いよく射出され、縦に回転しながらキリヤの腕と太ももを────
「な、馬鹿なっ!?」
貫き、壁に縫いつけた
「……!!」
上出来だ!!と言わんばかりに俺は呑まれていない片目で二頭を溶けだした片目で睨みつけ、少しだけ射程外に出ている右手で中指を立てる
「だが!その状態は闇に食われるまで終わらん!!術者が”否定”するまでな!!」
なら────我慢大会だ
俺は意識をしっかり保ちつつ、キリヤを片目でほくそ笑む
持って数十秒か、しかしキリヤも刺された箇所の異常性に気付く
「これは……?!」
服ごと、赤い牙模様が腕を噛みちぎる血犬【血犬】
地面に縫い付けんばかりに足に噛みつき、両足を食い破る【猟犬】
「あっ、がぁぁ!!」
痛みを知らずに実験してたか?マッドサイエンティスト
完全に解けた片目で睨みつけながらも俺は黒い闇に完全に食われた
◆
私はなんと愚かな行為をしたのか
目前の実験体
魔法は効かないと知ったのは実験の結果からしてわかっていたことだったのに
幾千もの戦闘を続けてきた猛者であり、勇者だと知っていて、私は相手取ってきたのだ
永久凍土魔法────上級魔法に位置する【完全なる停止した氷】は目を覆うことが出来たにも関わらず、奴の体質はそれすらも溶かしていた
知らなかった訳では無い、だが、
私は、過ちを侵していた
◆
ゴボゴボと廃油の中を浮き漂うような時間を過ごしていると、それは唐突に来た
「ゴホッ、ぷはぁ!!」
黒い液体のような闇の流動体が俺を排出するかのごとく、分散した
「あ”〜…ちょっと飲んじまったか…ゲぽッ!おぇぇ…」
喉に詰まったゼリー状の黒い固まりを吐き出し、俺はキリヤを見た
「ふ、ふふ……流石だな実験体よ…」
「ハッ、確かに…俺は実験体だが、名前が無いわけじゃねぇ」
俺の名前は『実験体:No.130《イサム》』
何体もの実験体を生み出し、実験し、使い潰すこの企業は、俺という実験体を生み出し、自ら破滅へと歩んだのだ
「まさか、子に殺される日が来るとはな」
「てめぇを親だとは思っていないがな」
生みの親に
あるのは依頼だけ
「私を殺せと命令したのは…システムか?」
キリヤは【猟犬】に喰い千切られた足からトプトプと血を流し、噛み砕かれた白い骨が震えていた
【血犬】は依然として体内細胞を食い荒らしているようだ
「あぁ……あのシステムは、実は
「なに……?そのようなプログラムは作った記憶ないぞ」
「そうだ、だが俺は穴を見つけた──
「ありえない、そんなものはシステム側が拒絶する……まさか」
「拒絶させられなければいい、単純だが骨は折れたよ」
昔のことを思い出す
少なくともアバラの1本や2本は持ってイカれたな、と
心臓マッサージで
「システム側にも感情があったことには驚いたが、所詮AIか?
そして発行された依頼から現実にたどり着き、親を殺そうとしてる
うん、今に至るというわけか
「
「しかし制限はかけていたはず…魔法はより弱く、肉体も常人よりは劣るように……」
「それが仇となったか?俺は弱い自分を戒めるがごとく体に鞭打って死に物狂いで鍛えたよ…努力は報われるってのは本当のようだな」
物理的にムチを打たれたが、あれは悪くなかった
「そんな訳が……Λ《ラムダ》か?まさかΛなのか!?」
「名前は知らねぇがヘンテコなガキが偉そうに指示してくるもんだからな…最期の方は笑ってたが」
何かを言い残して、笑って、消えていったが…記憶にはもうない
「は、ハハ!そうか!Λは生きていて…あぁ、良かった……」
「ありゃ何だったんだ?」
両足を食われ、服にははもはや赤い牙の模様ではなく、血色に染まりきっていたキリヤに問いかける
「グッ、ゴホッ!…、はぁ…あれは…いや、Λは私の娘だ」
「…………ということは脳みそごと仮想世界に?」
「首から下を事故で下半身不随になってしまってな、仮想世界を半ば強制的に導入させ、遊ばせたら喜んでくれたのだ…しかし────」
────数刻後には姿を消した
「そら、遊びにも限度はあるだろ」
「当時の私はそこまで考えが至らなかった…喜ぶ娘の姿が見れればいいとだけ思っていたのに…」
────娘は、友達が欲しいと嘆いた
「あのガキ、偉そうに言ってたが…言葉の節々が弱気になってたのはそれか…」
「君を…いや、君たちを友達として扱ってくれればと────」
はて?達?
「待て待て、君たちってなんだよ…あの仮想世界に居たのは俺だけじゃねぇのか?」
「あのねぇ……実験体を一体ずつ検証するなんて非効率でしょ?だから────」
────1人の実験体に1人の娘を
一つ一つの世界に一人一人に娘をつけた
「『友達』として認知したのは君だけだったかもしれないね」
「あー……なんかΛが偉そうに言ってた理由わかった気がするわ」
「親としては悲しいところだけどね、まぁ他者との触れ合いは必要かなと」
「年相応の触れ合いをさせろよ、幼女と大男とか事案になるわ」
俺しかり
閑話休題
「……なぁ、この二頭…外してくれないか?」
「…………わかってて言ったのか?今の」
もはや顔から体全て血に染ったキリヤは、俺の指示で唯一心臓に肺と喉と脳ミソだけを生かし、傷口から血が溢れぬよう循環させている状態だ
しかし、2頭を外すとなればそれは死を意味する
「構わないよ、Λが生きていたことだけでも収穫出来た」
「……言い残すことは?」
「……右後ろ手前容器、アレに私の脳を浸けろ」
俺は振り返り、容器を確認する
それにはケーブルが繋がっており、でかいサーバーに接続されていた
「なぁ、もしかしてだけど」
「その通りだ、実験の成果を自信で試す時がきたの────」
俺は血犬を操作してキリヤに刺さった血犬に下がるよう命令すると、キリヤは事切れるように絶命した
しかし、まだ脳は生きている
急ぎ頭を引っこ抜き、容器にぶん投げた
チャポンと音を立てて入った
「ナイッシュー!」
俺は二頭……いや、2振りの刀を回収し納刀させるとスクリーンを見た
ちょうどよく、Λとキリヤがこちらに向かって笑顔で中指立てていた
「最後まで笑わせんなや」
俺は笑顔で部屋を出た
好き勝手に描きました! 黒煙草 @ONIMARU-kunituna
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