第13話:祭壇石と魔法の旅【後編】
無属性?俺に属性はない、そういう事ですか?魔法適正ゼロそういう事ですか?魔法神の加護がありながら?
「初めて見たぞ。無属性は」
「それって、俺には魔法が使えないってことですか?」
ルイラットさんが驚いている中、俺はそう質問する。
せっかく魔法のある世界に転生したのに、魔法が使えないなんて異世界に転生した意味ないじゃないか。
「いや、魔法はあるんじゃが、戦闘向きではないんだ。詳しくは知らんが、例えば、創作魔法があるんじゃ。自分が想像したものを材料から何から何まで詳しく正確に知ることが出来る上、材料が揃えば、統合という魔法で数秒で作り上げるなど、生活面では優れた魔法なんじゃよ。たしか、倉庫に無属性の魔導書があったはずじゃ。あとで部屋に持って行く」
ルイラットさんから長い説明を受けた俺は、もう何が何だが分からなくなり、頭の中が魔法石のような色になった。
祭壇の石から出てきた灰色の魔法石を片手に俺はベットで横になっている。
「入るぞー」
ロビンがノックなしに部屋に入ってきてはロビンは自分と同じくらいの本を持って来た。
「これがじいちゃんが言ってた無属性の魔導書だってさ」
俺はロビンが持ってきてくれた本をめくって内容を見る。
魔導書の1ページ目には無属性魔法の説明があった。
無属性魔法は古代に知恵や生きるすべを持たなかった人類のために神が作った魔法だそうだ。
魔法を得た人類は絶滅、飢饉の機から脱した。
そして、無属性魔法からそれぞれの特徴、環境に合う魔法が次々と生まれた。
火、水、風、氷、土、雷、この6つの魔法が誕生したその機に無属性魔法は時代とともに消えたそうだ。
しかし、聖夜の時、世界に大きな変化があった。
大量の星が降ったのだ。
そして翌日、無属性魔法が消えて100年を過ぎたころ数多くの町や国が出来たころに一人の人間が無属性魔法を手に入れたのだ。
それがこの魔導書の作者である私だ。
これを読んでいる者よ、そなたには世界を知る権利が与えられたのだ。
この世界を知り、記したまえ、そなたの魔導書を。
無属性魔導書第一巻
つまり、この魔導書はこの作者の旅の記録という事だろうか。それに「第一巻」という事はまだ続きがあるという事だろうか。
世界を知る権利、そんなものが必要なのだろうか。
知ろうと思えばいくらでも知れる気がする。
俺はこの周辺で取れた葉を清水に浸して、「葉水」を作っているロビンに尋ねた。
「なあ、ロビン。ロビンはこの世界に付いて知りたいか?」
「?この世界ってどういう事なんだ?」
当然と言えば当然の答えが返ってきた。海の向こうを「彼方」と言っているほどの文明に世界とは、と聞いても意味はないだろう。
そして、その世界とは、の返答を出来るのは無属性魔法を持つ者だけ。
いろいろ、謎が多い世界だ。
だからこそ、俺はこれから始まる旅が楽しみでたまらないのかもしれない。
俺の中で眠っていた好奇心が目覚める。
つまり、世界一周を果たすには無属性魔法が適任である。そういう事だろう。
そして、世界一周は『魔法の旅』であるという事でもあった。
葉水を俺の分まで作り机に置いたロビンが口を開く。
「それにしても、タクミはその本が読めるんだな」
唐突にそんな事を言われるとおかしくて鼻で笑ってしまう。
「は?何言って――」
俺は言葉を失った。
それもそのはずだった。
どうして異世界に来た俺が異世界の魔導書を読めているのか。
そして、どうして異世界で生まれたロビンがこの本を読めないのか。
答えは簡単だった。
魔導書は・・・・・・日本語で書かれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます