第14話:秘密を知る旅
俺は魔導書の内容に書かれてある魔法の初級を習得した翌日、俺はルイラットさんと共に魔法の訓練を兼ねた狩りに森に入っていた。
ルイラットさんが強引に俺を引っ張って連れてきたのだが・・・
ため息を大きくつくとルイラットさんが振り返ったのでドキッとした。
そんなルイラットさんが口を開いた。
「さて、そろそろいいかの」
俺は黙ってルイラットさんの話を聞く。
「タクミ殿は今後どうするつもりじゃ?」
「旅をするつもりです」
「なるほど、つまり近々ここを出るんじゃな?」
「そうですけど、それが何か?」
「その事はロビンは知っておるのか?」
「知っています」
突然、始まった話が俺の今後の事かと思ったらロビンが出てきて驚く。
「すまないのだが、もしロビンがタクミ殿に付いて行くと言ったら、一緒に行ってくれぬだろうか?」
「どういうことですか?」
ロビンは精霊で、ロビンの居場所はアルフで、あそこから離れるのはおかしな話だった。
「あの子は、タクミ殿のそばにいるべきじゃとわしは思っておる。それは紛れもなくあの子のためじゃ。知らないだろうがあの子は混血精霊ハーフフェアリーなんじゃよ」
混血精霊ハーフフェアリーとは、そのままの意味で精霊とは別の種族との間に生まれた子供。
ハーフフェアリーはごくまれに生まれる精霊。精霊と同じような成長をするそうだ。
そして、ハーフフェアリーがなぜごくまれに生まれる精霊かと言うと、人とエルフが交配するとほとんどが混血精霊ハーフエルフとなるそうだ。
割合だと9.5:0.5ぐらいだそうだ。
それほど希少である故に人族ではかなり金になるそうだ。
俺も人なのだが・・・・・・。
そしてハーフフェアリーのもう一つの特徴として魔法属性が一つしか持てないという事。
つまりロビンは雷属性しか持っていないという事だろう。
ここで初めて気が付いたのだ。ロビンが溺れていた時、浮遊できなかった理由。
無属性魔法以外の魔法は環境によって発動しないようになっているそうだ。
つまり、ロビンが浮遊できるのは磁力。電気の力で浮いているロビンでは水の中では浮遊魔法を発動できないだろう。
もし発動したとしても、自分の体に電気が走るだろう。
だが、なぜそれをロビンが黙っていたのか俺には謎で仕方がない。
「童話が原因なんじゃよ」
ルイラットさんは悲しそうに言った。
ある童話にロビンのようなハーフフェアリーが出てくるそうだ。そのハーフフェアリーが神に反乱したそうだ。
その童話はエルフのみに伝わる伝承話の一部だそうだ。
つまり、ロビンはハーフフェアリーであるだけで差別に合っているそうだ。同年代からは嫌がらせもあるそうだ。
そしてあの日、ロビンは友達、シティーに騙され海に落ちた。
そして離岸流であることも知らないシティーは溺れるロビンを笑って去ったそうだ。
そして俺が助けた。
「分かりました」
「もちろん、タクミ殿から誘っていただいても構いません」
そう言ってルイラットさんは矢を引いた。狙いは少し離れた猪に定まっている。
そして放たれた矢は猪の体に刺さり、悲鳴を上げて横たわった。
ルイラットさんは猪を片手で持ち上げる。
この爺さん歳いくつだ!猪のを片手で持ち上げるってただの化け物じゃないか!
「さぁ、タクミ殿も」
ルイラットさんは俺の背中の方を指して言った。
振り返ると、ルイラットさんの抱え上げた猪を見て自分も襲われると感知したのか、俺にもう突進してきた。
「頑張るんじゃぞ」
気が付けばルイラットさんは木の上に上っていた。
いろいろツッコミたいが、そんな余裕はなかった。
猪との距離はほとんどない。避ける余裕もない距離だった。
俺は右手の手のひらを猪に向けて詠唱する。
「
「バカ!結界じゃふせげんぞ!」
ルイラットさんが何か言っているのは聞こえたが、その声を聞き取ることはできなかった。
そして猪は俺の結界に衝突した。
結界への衝撃は大きかったが、俺への衝撃はゼロだった。
猪の額から血が垂れる。俺の結界が堅かったのだろう。
猪を確認した俺は即座に地面に触れて詠唱する。
「抽出!」
俺は地面から鉄を抽出した。範囲は俺の半径50m、直径100m。これほどの広範囲だと猪を仕留める分は抽出できる。
抽出しただけでは意味がないので、もう一度別の魔法を連続で詠唱して発動する。
「合成!加工!」
この三つの魔法により鉄は槍のような鋭利な刃物に変形した。
そしてその槍を猪に投げる。武神の加護があるので投げた槍は勢いをつけて猪の体を貫通した。
ドス!
猪の体を貫通した槍は地面に突き刺さった。
「ほほぉ」
ルイラットさんの感心の声が聞こえた。
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