次の駅はすぐだった


次の駅はすぐだった。「びょう」という看板が立つその駅のホームには無数の病院。1つ1つの病院から、飛び出す絵本のように、眼科、耳鼻科、皮膚科、泌尿器科、内科、外科など様々な診療科が克明に見える。赤ん坊の泣き声、子どもの笑い声、緊張した面持ちの患者、祈るような瞳で手術を待つ患者の家族、患者の応対に追われる看護師、冷静に手術を執刀する医師の様子など、様々な場面が流れていく。目を背けたくなるような場面も多々あったが、なぜか、流れていく場面の1つ1つから目を離すことはできなかった。大きなタメ息と深呼吸を1つしたところで、老紳士に「次の駅が最後です」と促され、重い足を引きずりながらメトロに乗った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る