ホームには無数の群衆


ホームには無数の群衆。赤ん坊や子どもではなく、大人だ。恍惚な笑みをたたえながら行き交っていたのは、無数の新郎新婦たちだった。その幸せそうな雰囲気につられ、思わずこちらも笑みが零れる。


しかし、すぐに新郎新婦たちの姿は消え、ホームは目まぐるしく場面展開していく。夫婦と子どもたちの一家団欒、独身の男女などが仕事や趣味に打ち込む様子・・・次々と現れては消える場面。走馬灯のように、引っ越し、一人暮らし、シェアハウス、就職、転職、退職、Uターン、Iターン、Jターン、結婚、離婚、再婚、出産、子育て、子の自立、疾病、介護、事件、事故、災害など、様々なライフサイクルの転機を象徴する場面が続く。ただ流れていく場面を見ているだけだったが、じっとりとした疲労感が募った。映画館を出た直後のように、両腕を思いっきり頭上に伸ばして身体を解していると、老紳士に「参りましょうか」と言われ、メトロに乗った。

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