第170話
俺は千里眼を発動させ、魔物の所在を探る。すると前方200メートル程の所に10数体が集まっているのを発見した。
「このまま正面、直ぐに見えるぞ!」
「了解だぜ親分!」
トールの返答を受け、俺もカタナを抜く。
林を抜けると、その先にデーモン型の魔物の群れが見えた。
「行くぞ!魔法小隊は阻害優先!」
そして俺と共にトールの部隊が突入する。
時間は前日に遡る。
「魔物が溢れている?」
巡回の兵からの報告を受け、皆が驚く。基本的に魔物の大量発生は、ダンジョンで間引きされず増えた魔物が外に出て来る事で発生する。この近くにそのようなダンジョンは見付かっていない。
するとアンバーさんが口を開いた。
「…隠れていたダンジョンの入口が、突然開いた可能性がある」
「そんな事があるのか?」
「過去に実例もある。埋まっていたり、魔物が新たな入口を開けたりする」
そうなると、今まで間引きされずに増え続けた魔物が一気に出て来た事になる。これは放置出来ないだろう。
俺は千里眼で周辺のダンジョンを探る。すると発生地点の近くに、地下に階層が連なるダンジョンが見付かった。これで確定だろう。
だが今は既に夕方で、夜間の行動は魔物に有利だ。
「良し、明日の早朝より行動開始とする。ダンジョンの場所は確認済みだ。村の防衛は最小限にして、全軍で取り掛かる。部下達への連絡を頼む」
俺は同席している中隊長達に伝えた。
そして翌朝。俺は集まった皆に作戦を伝達する。
「魔物は既に外へ多量に出ている。なので部隊を大きく2つに分けて対処する。リューイと萌美・楓はダンジョン入口の包囲と出て来る魔物の対処を。トールと祥は俺と共に、外に出ている魔物の殲滅に当たる。アルトは包囲側の総指揮を頼む。では出発!」
そうして俺達は真っ直ぐダンジョン入口へと向かう。距離は1刻程だ。
そして到着後、包囲は任せて俺達は周囲の魔物殲滅へと向かった。
周辺を調べると、外に出ている魔物は数百体にまでなっていた。しかも各々が移動しているので、広範囲に点在している。
トール配下の1小隊には、特に魔物が集まっている場所を伝えた。対処に時間が掛かるが、各所を移動する必要が無いので助かるのだ。
俺達は各所に点在している魔物を対処する。千里眼で近い所から順に殲滅して行った。
そして昼過ぎには、周辺の魔物は殲滅完了した。
俺達は包囲地点に戻り、休憩を取る。様子を見る限り、ダンジョンから出て来る魔物は散発的だが、同種が集団で出て来る事が多いようだ。
俺達が休憩を終えた所で包囲部隊と交代し、休んで貰う。そして全員が休憩を取り終えた所で、突入部隊を選出する。
包囲は小隊長に任せ中隊長3人と俺、そしてアルトとアンバーさんで突入する。
これで前衛3・治癒1・魔法1なので、俺は中衛で状況に応じ魔法と近接を使い分ける事とした。
そして魔物が出て来る切れ間を突いて、入口から突入する。
中は素掘りの坑道に似ており、降りた先で道が2方向に分かれている。
俺は千里眼で魔物を探り、数の少ない方向に向かう。目的は間引きだが、数の多い方は外の包囲部隊に任せよう。それよりも俺達は変異体等の、強力な魔物を相手取る方が良い筈だ。
坑道に似ているとは言え、大型の魔物も通れる幅と高さがある。集団での戦闘も問題無いだろう。
先へ進むと巨大な芋虫が群れで集まっていた。俺は手を出さず、先ずは前衛3人が突入する。
これまでの訓練の成果も有り、3人は次々と魔物を葬って行く。動きを見る限り、攻撃を受ける心配も無さそうだ。
そして然程待たずに討伐が完了する。俺達は死体を放置して進み始める。討伐優先だ。
次に現れたのは大型の蛇だ。毒の心配があるので、アンバーさんに阻害魔法を使って貰う。
その後は前衛3人による袋叩きで終わった。
傷も負わないので萌美が暇そうだ。なので次に現れた大型の百足は、彼女の攻撃魔法で倒して貰った。
そうして魔物を倒しつつ階層を進んで行くと、人工的な大広間に着いた。素掘りでは無く石壁で覆われている。何かの施設だったのだろうか。
良く見ると、古ぼけているが割れた食器などが見受けられる。人の生活の痕跡だ。地下に住んでいたのか、それとも住処が地中に沈んだのか。
流石に最近まで入口が無かった事もあり、魔素増幅装置は無いようだ。人為的でないなら、今回の間引きで暫く大丈夫だろう。
そんな事を考えていると、奥の方に白い影が複数体現れた。レイスだろうか。
「萌美、頼む」
「はい。不死送還陣(ターン・アンデット)」
放たれた光に包まれ、白い影が消滅する。だが1体だけ残っていた。レジストされたのだろうか。
しかし良く見ると足があるし、身体も透けていない。そして異様な気配を纏っている。
気配の元は渦巻く魔力量だった。俺は今まで相対した魔物から、同等の魔力量の存在を探る。
通常の魔物では無い。精霊をも上回っている。魔物の変異体よりも。
姿と気配は人型の神霊に似ている。だがその魔力量をも更に上回る。つまり。
「神霊の…変異体!?」
俺は素早く竜人体に成り、一番前に立つ。そして告げた。
「全員、急いで下がれ!」
俺の予想通りだとしたら、俺以外は瞬殺だ。攻撃を繰り出す前に倒されてしまうだろう。
だがそんな俺の警戒を他所に、そいつは口を開いた。
「やっと人が来たか…。どうか私の話を聞いてくれ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます