Episode:07 当たって砕けてやり直して
蓮と美姫のデートも、いくつかの悶着がありつつも無事に終了した。
その翌日の、月曜日。
蓮は通学路にある駅前の広場で、表に出さない程度にそわそわしていた。
実は昨夜に、RINEで美姫にメッセージを送っていた。
『明日からは、出来るだけ二人一緒に登校しませんか?』と。
お互いの通学路の交点が、その駅前だ。
ならばそこから待ち合わせてから一緒に登校することは、不自然なことではないはずだし、どちらかがどちらかの負担になるようなこともないはずである。
一緒に登校出来ない事情があれば、連絡ひとつ送れば時間ギリギリまで待たなくて済むので、問題らしい問題は特に無いはずだと蓮は見ていた。
美姫からの返信にも『いいですよ』のメッセージと、了解を示すスタンプが押されて来たので、何も滞りなければ彼女も駅前広場に来てくれるはずだ。
昨日のデートでは美姫の方が遥かに早く来てくれたわけだが、さすがにいつもの登校にもそれは当てはまらなかったようだ。
むしろ、早くなくて良かったと蓮は安堵していた。
いつもいつも美姫を待たせる側に立たせるのも悪いと思う自分がいるが、「出来るだけ美姫と一緒にいたいから」と言う願いもある。
「あっ、九重くんっ」
さてあとは彼女が来るのを待つだけ……と思った時、そろそろ聞き慣れてきた声が掛けられた。
振り返った先に早歩きで来てくれたのは、もちろん美姫だ。
「おはよう、朝霧さん」
「うん、おはよう九重くん。もしかして、結構待ってた?」
「今来たばっかりだよ。つい10秒くらい前」
「わっ、タッチの差だ」
二人の足が同じ方向に向けられ、歩みを揃えていく。
まだ学生達の数も疎らな通学路で、蓮は率先して話し掛けていく。
「……そう言えば、さっきのやり取りってさ」
「やり取り?」
何かあったかと美姫は小首を傾げる。
「えーと……ほら、「待った?」「待ってないよ」ってやり取り。これって、何だか恋人っぽいやり取りだなぁって」
「あっ、そう言えばそうかも」
彼の説明を聞いて合点が入ったように頷く美姫。
でも、と何か思い出したように疑問が挙げられた。
「私達、昨日も待ち合わせてたのに、全然そんなこと意識してなかったね?」
「……アレはなんと言うか、朝霧さんが俺の予想を遥かに上回る時間から待ってたから、『恋人っぽいやり取り』ってことに意識が回ってなかったんだと思う」
昨日の蓮のような十五分前程度なら、まだ『時間前行動を意識している』で済まされるだろう。
まさか、本来の待ち合わせ時間の30分も前から待ってくれている彼女がどこにいるものか。
「そ、その節はご迷惑をおかけしました……」
あまりにも早く来すぎたせいで、逆に蓮を申し訳なくさせてしまったことに、美姫はしおしおと縮こまってしまう。
「いやっ、朝霧さんが謝ることじゃないよ。時間に遅れるよりは早い方がいいに決まってるし、それで映画の上映時間まで余裕が出来たと思えばさ……」
ふと、蓮は『いつもより美姫との距離が近く感じる』ことに気付く。
昨日のデートまでは、何となく距離があったはずだが、昨日と今日を比べると、美姫の姿がより近く、より小さく見える。
「(気のせい……じゃないよな。それに……)」
「そ、そう言ってくれるのは嬉しいけど……って、どうしたの九重くん?」
「……なんでもないよ」
「?」
何がどう「なんでもない」のか。
それは、今ここでは蓮にも美姫にも分からなかった。
学園に到着して、クラスの教室に入る二人。
それぞれ自分の席に荷物を置き、蓮は駿河と鞍馬の方へ、美姫は雛菊と静香の方へ向かう。女子三人の方は教室の外へ向かう模様。
まずは男子サイドから。
ひとまずの挨拶を交わしてから、蓮は開口一番に「なんか、さ……」と前置きを置いた。
「なんか……どうしたんだ?」
次に蓮が何を言おうとしているのかも知らず、駿河は何も構えずに訊ねた。
「……朝霧さんが、かわいい」
「ぐふぉぉぉぉぉ!?」
蓮の不意打ちが、駿河に突き刺さった。
「な、な、なんと言う精神攻撃、なんと言う痛恨の一撃、なんと言うクリティカルヒット……俺は、瀕死のダメージを受けた、ぁ……」
左胸を押さえながら後退る駿河。
そんなダメージリアクションを見せている彼のことなど意にせず、蓮はその続きを話す。
「なんかいつもより距離が近いし、なんかいつもより雰囲気が柔らかいし、なんかいつもより……」
「「……」」
距離が近くて、雰囲気が柔らかいし……
「……かわいい」
結論、かわいい。
「グッハァァァァァ!?な、なんだよ、自分の彼女を、かわいい、かわいい、って……ノロケんのも、大概に、しろ、よ……ッ」
駿河は力尽きたように、右手の人差し指を前に向けながら机の上に突っ伏す。
「まぁ……昨日のデートでぐっと距離が縮まったんだろ?いいことじゃないか」
力尽きた駿河を放っておき、代わりに鞍馬が応対する。
「うん、多分そうだと思う」
いつもより……の理由は、蓮にも分かっていた。
普段は学園でしか会えない互いの、私的な部分を見せ合ったと言うべきか。
それに、誤解してほしくなさから話した自分の中学時代を話したことで、逆に誤解が深まったような気もしなくもないが、誰にも、自分ですら気付かなかった「自分の積み重ねは無駄ではなかった」と教えてもらったのだ。
結果はなんであれ、自分のことを話したのは正解だったようだ。
「俺、ちゃんと朝霧さんと付き合えてるよな?」
タイミングがズレたり、行動に結果が結びつかないこともあったが、これで大丈夫だろうかと蓮は鞍馬に訊ねる。
「傍から見る分には、健全なお付き合いだと思うよ。……尤も、『自分の彼女に護身術で腕を締め上げられる』なんて経験、なかなか出来るものじゃないよ?」
「そ、それは言わないでくれ……」
昨日の"アレ"は、本当に何だったのか。
美姫としては、蓮を痛め付けたかったわけではないと言っていたが……
「もしかして……"やらしいこと"を考えてるってバレてたのかもしれない」
蓮の思考は何故かそんな明後日の方向へぶっ飛んでいく。
「やらしいって、手を繋ぐことがか?」
いつの間にか復活した駿河が、会話に混ざってきた。
「バカだなー蓮は。手ぇ繋ぐのがやらしいわけねぇだろ。いや、手を繋いだだけで興奮するってんなら、話は変わるけどな」
溜め息まじりにそう言ってやる駿河だが、すかさず鞍馬が意地悪く返す。
「そうそう。いつもやらしいことしか考えてない駿河と違って、蓮は聖人君子そのものだろ?」
「く〜ら〜ま〜、お前は俺を何だと思ってんだ、何だと!」
「色情狂、変態、女の敵」
「俺の扱い酷くねぇ!?」
蓮から二回、鞍馬から一回、合計三回に渡る精神攻撃を受けて、駿河はまたも机の上に力尽きる。
力尽きた駿河のことはやはり放置しておき、蓮は自分の右手を見つめる。
「いや、だって……「手を繋ぎたい」って、これは……やっぱり"やらしい"のか?」
「……何だろうな、意味合い的には問題ないはずなのに、「やらしい」って追加した瞬間、ひどく変態的に聞こえる」
まぁとにかくだ、と鞍馬は蓮に余計なことを考えさせないように畳み掛ける。
「手を繋ぎたいって思うのは、全くおかしいことじゃないし、況してや"やらしい"ことでもない、恋人同士ならむしろ普通のことだ。だから、昨日はタイミングが悪かったんだ」
「タ、タイミング、タイミングか……」
「大体アレだ。好きな男に釘を刺すために護身術を喰らわせるような彼女が、どこ……、……か、にはいるかもしれないけど!少なくとも朝霧さんはそんな人じゃないだろ?」
どこにいるんだ、と言いかけた鞍馬だが、『もしかしたら彼女に痛め付けてもらいたい"Mな"彼氏がいる』可能性もあったので、途中で無理矢理訂正した。
「……そう、だな。よしっ」
女子校出身なら、護身術を授業で学んでいる可能性もあるが、暴漢相手ならまだしも、美姫が彼氏を相手にそれを喰らわせるほど暴力的な女の子とは思えない。
……そうでないにも関わらず喰らわされたのが昨日の夕方頃なのだが。
ならば、今日の放課後にもう一度挑戦だ。
蓮の中で、気を取り直すついでに確固たる決意が込められる。
「(たかだか手を繋ぐために、そこまで気合を入れる必要があるとは思えないけどなぁ……ま、蓮には蓮のペースがあるし、今はいいか)」
静かに闘志を燃やす蓮を見つつ、鞍馬は心中で苦笑する。
一方の女子サイドでは、屋上へ続く踊場階段の途中で談義が行われる。
「『手を繋ごうとしたら腕を締め上げた』って……美姫、それは無いわ」
片手で頭を抱えるように、雛菊は深い溜め息を吐いた。
「だ、だって、何でか足が縺れちゃって……」
言うんじゃなかった、と美姫は自分の発言を後悔した。
昨日に蓮と二人で出かけたことは、雛菊と静香も知っているし、静香に至ってはこっそりと後を尾けていたのだから。
「よくそれで怒られなかったわね……いいえ、九重くんが特別お人好しなだけ?」
何の非も無いのにいきなり痛め付けられれば、普通は怒るものだろう。
それでも蓮は怒ることなく、それどころか「朝霧さんって強いんだな……?」と感心(畏怖?)していたくらいだ。
「お、お人好しかどうかは分からないけど……うん、優しい人なんだって言うのは、改めてよく分かったかな」
蓮の中学時代についてはここで話すべきではないことは、美姫にも分かっている。
――静香は駿河を通じて、全てではないにしろ多少は知るところにあるのだが――
「んまーっ、おノロケ!この方ノロケてますわよ奥様!」
静香は右手の甲を左頬に当てながら雛菊に同意を求める。
「ノロケてるわね……って言うか何その、似非セレブっぽい喋り方は」
彼女の反応の如何に関係無しに、静香はさらなる方向へ踏み込んでいく。
「それでそれでっ、護身術による制裁からの愛の逃避行の最後に……"キス"のひとつでもしたんでしょっ?」
護身術による制裁(!?)からの愛の逃避行(静香視点)を最後に、足取りは掴めなくなったので、その後どうなったのかは知らないのだ。
完全に妄想が先走った上で、美姫にそんなことを聞こうものなら、
「き……きす!?!?!?」
当然こうなる。
間違っても魚類の『
「なっ……なななっ、何言ってるの静香ちゃん!?キ、キキキキスキスススキなんてっ、そんなの出来るわけないでしょぉッ!」
声を裏返しながら言い返す美姫だが、その反応は静香の火の点いた悪戯心と好奇心に油を注ぐどころか、それを持ってガソリンスタンドへ行くようなものだった。
「んーもうっ、恥ずかしいからって隠さなくていいのに!夕焼けのちょっと切ない雰囲気の中で、ぶちゅーって……」
「だっ、だからキスなんてしてないよっ!」
「……え、してないの?」
心底意外そうな顔をする静香。
「あの後は、駅前まで一緒に走って、普通に別れただけだよ」
だからキスするようなシチュエーションも何もない、と美姫は溜め息混じりに答える。
それを聞いて静香は
「なんぞそれぇ!?九重くんはヘタレか!?いーやヘタレね!間違いない!ハイ決定、九重くんはヘタレ!異論は認めませーん!」
ガンッ、と壁を殴った。
それを落ち着かせるように雛菊が割って入る。
「九重くんがヘタレかどうかは知らないけど、二人が付き合い始めて、まだ一週間も経ってないのよ?それに、九重くんの彼女はこの美姫よ?手を繋ぐだけでも殊勲賞ものなのに、……キ、キスなんてしたら、天地が引っくり返るわ」
「……擁護されてるはずなのに、なんか逆に責められてるのは私の気のせいかなぁ」
雛菊の物言いに美姫は肩を落とす。
確かに、昨日は手を繋ごうとするだけでも勇気が必要だったのだ、いざキスなどしようものなら……
全く想像が出来ない。
「何言ってんのよヒナ!世の中には付き合い始めたその日でヤっちゃうカップルだっているんだから、一週間でキスのひとつもしてないなんて、遅過ぎるとは思わないの!?」
「極一部の例外を美姫に当て嵌めようとするのはどうかと思うわよ……あと、他人の恋愛ごとにペースも何もないでしょう」
好き勝手なことを言う静香と、それに冷静に切り返す雛菊との板挟みに、美姫はぐるぐると考え始める。
「(キ、キス……?私が、九重くんと……?い、いつかする日が来るのかもしれないけど、それっていつ?少女マンガだったら、最初の一話目から付き合い始めて、かなり早い段階からキスどころか、"それよりも先"にいってるのもあるけど……いやいや、それは基準にしちゃダメでしょ。九重くんはマンガの男の人みたいに強引に詰め寄って来たりしないし、大体私の方に合わせてくれるし……アレ?もしかして、マンガの中の恋愛のペースの方がおかしいの?)」
架空、理想、現実、事実。
その四つから、美姫は『恋愛の速度』と言うものを推し量ろうとするが、程なくして予鈴のチャイムが鳴ったので教室へ戻って行く。
昼休み。
いつものように、蓮は購買部で手早く昼食を購入してから、中庭で待っている美姫と落ち合う。
蓮と美姫が付き合い始めてからは、もはやこの二人の専用席と化しているベンチに座る。
美姫はこぢんまりとした弁当を、蓮は先程に購入した惣菜パンやおにぎりを、それぞれありつく。
「そう言えば、九重くんがお弁当持ってくることってあんまりないけど……お家の人は忙しいのかな?」
美姫が最初に話を持って来たので、蓮は口にしたものを飲み込んでから応じる。
「うん。父さんは基本的に仕事人だし、母さんも朝早くに仕事に出掛けるし……それでも、夫婦仲は悪くないと思う。弁当作ってくれるのは、母さんが昼からの出勤か、休みの時だし、週に一日か二日あるかってところか」
「そうなんだ」
そんな他愛もない、普通の会話。
その最中に、蓮と美姫には、それぞれ考えていることがあった。
「(朝霧さんと、手を繋ぐ……)」
「(九重くんと、キス……ッ)」
前者は蓮の、後者は美姫の思考だ。
しかしこの話題、どのタイミングで仕掛けるべきか。
お互い食べ終わってからが良いのか、それとも途中からでも急ぐべきなのか。
数巡の後、蓮の方が先に動いた。
「あの、朝霧さん」
「うぇっ、な、何かな……?」
彼が先に動いたことに、一瞬肩を竦ませる美姫。
一呼吸を入れ換えてから、蓮はひとつずつ確かめるように、自分の内を話す。
「実はさ、俺、昨日……ちょっと、やり残したことが、あるんだ」
「やり残した、こと……?」
昨日、と言うのはデートのことだ。
その一言を聞いて、美姫の中で連鎖的に事態が繋がる。
やり残したこと、キスをしたかどうか、それは、つまり……
「(えっ、ちょっ、待って、まさか、九重くん……?)」
しかし美姫のその繋がった事態は杞憂に終わる。
「昨日の最後にさ、俺、朝霧さんと手を繋いで逃げたけど……あれ、よく思い出したら、俺が一方的に朝霧さんの手を引っ張っていっただけなんだよな」
「(あ、そっちかぁ……)」
どうやらキスに関することでは無かったらしい。
「うん?そうだね?」
相違無いことを認め、美姫は疑問符混じりに頷く。
だがそうなると、蓮はこれから何を伝えるつもりなのか。
「それって、『手を繋いだ』ことにはならないと思うんだけど……」
「……??」
言い澱む蓮に、その言葉の意味が汲み取れずに小首を傾げる美姫。
「(ダメだ。もっとストレートに、ハッキリ言わないと……)」
もう一呼吸入れ換えて、意を決して蓮は言葉を声にする。
「俺、もっと朝霧さんを触りたいんだ」
「は、え、……えェッ!?」
自分でもどうやってこんな声を出せたのか、美姫は後になって疑問に思うことになる。
「あ、あのあの、それって、その……ッ」
「分かってる。いきなりこんなこと言われたら、きっと朝霧さんは混乱するかもしれないって。でも、俺はまだ朝霧さんのことに関して、知らないことが多過ぎるんだ」
「だ、だっ、だからってぇ……」
「だから、俺は思ってることを正直に伝えたい。そりゃ、全部を全部バカ正直には言わないけど、やっぱり話さないことには、分かるものも分からな……」
「そっ……それはまだダメッ!」
ダメ。
きっぱりとした"拒否"の意志を以て、美姫はぶんぶんと首を横に振った。
「……そっか。やっぱり、強引過ぎたよな」
これは引かれてしまったかもしれない。
蓮は自分の発言のタイミングを後悔した。
しかし……
「だ、だって!私達まだ、キ……キス、だってしてないのに、……なんて、まだ早過ぎっ!」
………………
…………
……
「……え?キス?」
キス。
つまりそれは、手を繋ぐと言うことではなく、お互いの唇同士を……
「キス!?いやっ、キスなんて……それこそもっと早過ぎるだろ!?」
「なっ、何言ってるの九重くん!?キスの方が後なんてっ、そんなのおかしくないっ!?」
キスの方が後なんておかしい?
ここに至って蓮は、『自分と美姫との認識がズレているのではないか』と思い始める。
「(ん?んんんんん?これは、いや待て、俺の感覚がおかしいのか……?)」
ちょっと待って……と制するように、蓮は自分の掌を美姫に見せる。
「俺はただ、『朝霧さんとちゃんと手を繋ぎたい』って思っていただけなのに……もしかして、手を繋ぐよりキスの方が先なのか?」
「え、手を繋ぎたい……?」
ピタ、と美姫の挙動が止まる。
「そ、そうだけど……」
蓮の「手を繋ぎたい」と言う言葉に、思考をも止めて……
ボンッ、と言う効果音が聞こえそうな勢いで、美姫の首から上が炸裂した。
「え、待って朝霧さん?今、何を考え……」
何を考えていたのか、と蓮が訊ねようとするが、
「(〜〜〜〜〜わ、私の、えっちぃぃぃぃぃ……ッ!!)」
両手で顔を隠してガクガクブルブルと震える美姫。
「な、なにを……?」
美姫は、蓮の言う「もっと朝霧さんを触りたいんだ」と言う発言から、一体何を想像したのだろうか……
いやしかし、と蓮はここに至ってようやく自分が何を伝えたのかを思い直した。
もっと朝霧さんを触りたいんだ。それは、どこを触りたいのかが明確になっていない。
つまり、拡大解釈をすれば……
「(……いくらなんでもストレートに言い過ぎた!?)」
男女の区別の付かない幼児ではないのだ、男が女に対して「触りたい」と言えば、"そう言う方向"に捉えられてもおかしくないわけで。
「うわっ、ごめん!そう言うことじゃなくてっ、「朝霧さんの手を触りたい」って言いたかったんだ!」
「えっあっそっ、そうだよねっ!?もっ、もももちろん最初から分かってたよっ、うんうんっ!!」
思い切り頭を下げて誤解を解こうとする蓮と、大慌ても大慌てで同意を見せる美姫。
そうこうしている内に、昼休みの終了を告げる予鈴のチャイムが校内に鳴り響いた。
「あっ、予鈴鳴っちゃった……早く食べて戻らないとっ」
「う、うんっ」
慌てて残っている昼食を掻っ込んでいく二人。
「(しまった、朝霧さんと手を繋ぎ損ねた。まぁ、放課後でもいいか……)」
昼休みでの勝負(?)はここまでだ。
本当の勝負は放課後からだ、と蓮はもう一度気合を入れ直した――。
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