07 『三日目村』

 仕事は、暗澹たるものだった。


 ぎりぎりの戦いを潜り抜けて、なんとか民主制の組織全員の心を殺した。これで、組織はただの民主制移行のための機械になる。


 最後は、腹と胸を撃たれたところでステルスヘリに拾われて国を出た。


「おいねえちゃん。生きてるか?」


 応急処置をしてくれる手。勧誘してきた人間だった。


「このまま街近くの村の病院に運ぶ。どんな傷も3日目で治る魔法の病院だ。だから、それまで耐えな」


「ごほっ」


 血を吐き出した。これで、喋れる。


「おい。喋ろうとするな」


「腹に弾が当たって。ちょっと、安心してるの」


「胸にも当たってるぞ。動脈が危ねえ」


「わたしも。ヒューマンエラー。起こすんだなって」


「ああ。そうだな。最初から完璧な人間なんていない」


「ちゃんと処置してよね」


「やってるよ。いま必死に。死なれたら、勧誘した俺の後味が悪い」


 かなり、血を失っている。視界が霞んできた。


「おねがいが、あるわ」


「あの子を呼べってんだろ。もう村の病院に待機してる。だから病院に着くまで必死で生きな」


「どれぐらいかかるの?」


 また、血を吐いた。視界。ぼやけたりはっきりしたりで、安定しない。


「もうすぐだ。もうすぐ。大丈夫。もうすぐ着く」


 せめて、もういちど。


 彼の笑顔を見てから。


 死にたい。

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