06 『国王暗殺』

 国王がテロで暗殺された国。王制と民主政治の移行の過程で、一触即発の雰囲気。


「この国ね」


「そうだ」


 目の前。管区の総監と、知らない男性。街にいる正義の味方の顔は知っているが、この男は見たことがない。


「彼の笑顔を狙っているのは、民主制のほう。それも、最も民主政治に意欲的な組織だ」


 見知らぬ男が、組織についての説明を始める。


「人の笑顔を利用しようとするのは悪逆非道な行為だが、向こうは民主政治の上での要請を行ってきている分、たちがわるい。ようするに、正式な依頼なんだ」


「でも、そのせいで彼の笑顔が使われるのは。気にくわないわ」


「だから頼む。この民主制の組織を、穏便に始末してほしい」


 見知らぬ男が、頭を下げる。


「あなたは誰。さっきから、この国の事情に精通してるみたいだけど」


「彼は」


 総監が、口を挟む。


「国王だ。この国の」


「暗殺されたはずでしょ?」


「ややあって、暗殺が偽装されて、今はこの街の正義の味方のひとりさ」


「そうなの」


 なんでもよかった。


「分かったわ。この民主制の組織を、全員殺す」


「分かっているだろうが、穏便に、だぞ?」


「心を殺せば、足はつかないわ」


 ヒューマンエラーを起こさない自分に、ぴったりな仕事だった。

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