第62話ダンジョンコア3
日が出始めると、周りからざわざわと沢山の声が聞こえてくる。
それで俺が目を覚まし、テントの外に出ると周りで野営していた人達が思い思いに出発の準備を始めている。
みんな王都に行くみたいだけど、誰か馬車とか乗せてってくれないかな・・・。
ここぞとばかりにキョロキョロしてみたり、声を出して欠伸をしてみたり、自分子供ですアピールをぶちかましてみるが誰も見ちゃいない。
恥ずかしくなって、いそいそとテントをしまうと、みんなが行列になって王都に向かっていくのにトコトコついていく。
歩きながら考える。
王都に着くまでに約一日って事だから、このペースで行くと夜には着くのだろう。
だが、入れるのか?
この人数もそうだが、王都に入るための行列がすでにできている可能性が高いよな。
リンドルの町もそうだが、別の町からも人が集まってきているはずだ。
前を見ても後ろを見ても、大名行列かって程に街道いっぱいに人があふれている。
最悪ダンジョンコアに接触できなくてもしょうがない、魔王様も無理はしなくていいって言ってたし・・・本音はどうだか知らないけど。
だが、せっかく来たのに宿はもう仕方ないにしても王都にすら入れないのは勘弁してほしい。
俺は仕方なく街道からそれて人目につかないところまで歩いて行く。
人目がなくなったのを確認すると、暗殺者の衣のフードを被り、街道に沿って走りだす。
街道よりも走りにくいが、ちょっと離れていれば特殊スキル持ちじゃない限りそうそう俺を感知できる人はいないだろう。
走り続けること半日程度、俺は日が落ちる前に王都につくことができた。
ただ、王都の門にはながいながーい行列ができていた・・・まあ予想していた通りだけど、実際に見ると心がくじけるな。
そして入るのを諦めているのか、外でテントを張り、商売を始めている人たちも多くいる。
しょうがない、夜まで待つか・・・。
俺も少し離れたところでテントを張りゴロッと横になる、夜中に侵入するためにちょっと仮眠をとっておかないと。
日が落ちても行列はなくならなかった。
門は閉まっているが行列ができたまま各々そこにとどまって休憩をしている。
俺は起きるとテントを閉まってフードを被り直す。
王都というだけあって外壁はかなり高くなっていて、警備も多い。
これは苦労するかもしれない。
俺はこっそり外壁に近づくと、索敵で外壁の上の巡回している警備の隙間を縫うように外壁を登り始める。
そのうち魔法で飛んだりできないかな・・・魔王様は飛べるらしいから今度聞いてみよう。
時間はかかったが何とか登りきることができた、巡回の兵士が来ないうちに町に入ろう。
俺はすぐさま町の内側の外壁に張り付き降りていく、ある程度降りて誰も見ていないことを確認するとリジェクト・ケージを使って足場にして一気に降りる。
フードを脱いで辺りを見回すと・・・遠くの方は起きている人が多くいるのか喧騒が聞こえてくるが、俺のいる辺りは建物はあるがほとんど人がいない。
無人の家とかないかな?宿は無理そうだから何処か拠点として使いたい。
索敵で周囲を探り人がいない方向に歩いていく、たどり着いたのはボロボロで人が住んでいないだろうと思われる一つの古屋みたいなところだ。
「贅沢は言ってられないな、ここを拠点にするか」
俺は古屋に入ると魔法で灯りをつける。
埃が溜まっていて人が住んでいた形跡はない。
スラムって感じじゃないけど、王都にもこんなところがあるんだな。
外に出ると場所だけ覚えて、明るくなっている町の中心に向かう。
途中娼館や場末の酒場みたいなのもあってかなり繁盛しているみたいだった。
お祭りだからな、稼ぎ時なんだろう。
どうするかな・・・とりあえずダンジョンコアがどこにあるかわからないから王城に行ってみるか。
夜中なのに煌々とランプで照らされている大通りに出ると、いたるところに露店が立ち並び酔った大人が騒いでいる。
俺は露店で串焼きと何かのスープを買うとお祭り気分をちょっと味わいながら、ふらふら王城のほうに歩いて行く。
酔ったおっさんたちがベロンベロンになって道に倒れて寝ているのを見ると、ストレス溜まってるんだなと生温かい気持ちになる。
王城に近づくにつれて人が少なくなり、ランプの数も減ってくる。
たどり着いた王城手前の広場から橋までは多くの警備の兵が立っているし巡回している。
ここまで厳重に警備があるってことはダンジョンコアは城に保管されていると見るべきか、そしてその隙をついて侵入するなんてことは果たしてできるのか?
いやこれ無理だろ。
怪しまれない程度に距離をとって索敵を使い王城の周りを歩いてみるが、暗殺者の衣で気配を消したとしてもどこかで必ず目視されるようなかなり厳重な警備だ。
さらに、若干警備の薄そうなところには必ずどこかの密偵らしき動かない気配が複数ある、色々な国の関心が集まっているんだろう。
内から外から監視の目がある中で王城に忍び込んでダンジョンコアに接触するという意味もわからないし、難易度高すぎて俺には到底出来そうにない。
俺は一度王城から離れると、拠点と決めた古屋に引き返す。
軽く部屋の掃除をするとさらにテントを張って寝床を作る。
とりあえずダンジョンコアのお披露目がされてからまた考えるか。
古屋で昼まで寝てた俺はもそもそ起きだすと大通りに歩いていく。
まずは冒険者ギルドに行って情報収集をするためだ、大通りに出たところのすぐ近くに冒険者ギルドはあった。
ここの冒険者ギルドも結構大きいな。
ダンジョン王国と言われるぐらいダンジョン攻略が盛んで、しかも何故かこの国は魔物が多く生息しているからな。
ダンジョンコアの影響で豊穣になったからその影響で魔物もすくすく育ってるんだろうと言われている。
その分優秀な冒険者や腕自慢の冒険者が多く集まるのは必然か。
相変わらずお祭り騒ぎの大通りを横切り冒険者ギルドに入る。
ダンジョンコアのお披露目でさらに冒険者が集まってきているのか、昼間なのに隣接する酒場は大盛況だ。
仕事しろおっさん達。
まずは何か情報がないかと掲示板を見にいく、張り出されているのはほとんど魔物の素材納品依頼だ。
魔物の素材納品依頼は受ける必要がなく、持ってきた人が早い者勝ちで納品していくのだ。
依頼書を見ながら横にずれていくと・・・あった。
ダンジョンコアのお披露目の予定、明日の昼間から三日間、中央広場か・・・中央広場は王城のすぐ前にある夜に行った広場のことだな。
かなり広くて台などが設置済みだったのは展示のためか。
てかこれ馬鹿だろ?ダンジョンコアなんて外に展示したら盗んでください、力尽くで奪いに来てくださいって言ってるものだ。
リースフィア王と、攻略者代表として自由の翼が王にダンジョンコアを正式に差し出すって茶番をするらしい。
そんなくだらないことのためだけにやることじゃないだろう・・・。
例えばその時に王城に侵入しておいて、夜になってから強引にダンジョンコアに接触するって感じでいけるか。
ダンジョンコアを楽しみにしているみなさんには申し訳ないけど、展示のタイミングでちょっと騒ぎを起こさせてもらってさ。
流石に広場にダンジョンコアを夜も置きっぱなんてことはないだろうし。
よく考えてみると、俺、完全に考えてることがテロリストだな・・・。
後はどうやって騒ぎを起こすかだけど・・・何もしてない一般市民を巻き込みたくないし、前にセリスの屋敷を燃やした時の時限発火装置で、古屋でも燃やすか?
あそこなら周りと離れているから燃え移ることはないと思う、ただ・・・離れている火事程度でそこに注目を集められるかどうかは疑問だが。
広場の台に時限発火装置・・・は無理だよな。
まあ最低でも三日はお披露目があるし、急いでるわけじゃないからこのお祭り騒ぎが収まってからでも別にいいんだよな。
焦る必要はない。
俺は掲示板を離れるとそのままギルドを出る。
ギルドの仕事をしに来たわけじゃないから、ある程度の情報さえあればそれでいい。
さて、今日は一日時間があるからお祭り騒ぎに便乗しながら地理を確認しておこうかな。
俺は色々な珍しい出店を楽しみながら、出店で売っている香水を二つ購入する、これは念の為だ。
使わなかったらお土産としてリルとセリスにあげればいいだろう。
そして俺は一つの防具屋に入っていく。
流石に何かするにも防具が必要だと思ったのだ。
今の俺の装備は防具がなく薄緑色の上下の服のみとなっている、これサイモンに馬鹿にされたんだよ、ダサいって。
ユリゲールもちゃんとした防具買えって言ってたし・・・。
防具屋に入った俺は皮鎧が展示されているスペースに向かう。
そこにはちょっとデザインは違うけど、黒一色で作られた、初心者Aセットが売られていた・・・。
初心者Aセットってどこにでもあるものなのか?
セット内容は黒い皮鎧、武器、黒いインナー、黒い外套、黒い盾ってところで万々歳と同じだ、一つだけ違うところは盾は無しにしてちょっと安くできるってところだ、これにしよう。
黒一色ってところに製作者の厨二心を感じるような気もするが、まあ他にサイズが合いそうなものがないのでしょうがないだろう。
素材持ち込みで自分用の防具でも作りたいところだが、身長が伸びているからすぐ使えなくなっちゃうんだよな。
俺は盾無しで、武器は使い慣れている片手剣を選択して、またもや初心者Aセットを身に纏うのだった。
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