第3話 王女クレスティアル

 私はアースティア王国第三王女クラスティある。双子の妹であるアスティアリカと共に王国の都市アルディアの砦に居ました。


 私達の王国は同じ大陸にある東にあるガイラル帝国と長きに渡る戦争が続いていました。


 近年帝国軍は力をつけてきていて、帝国軍優勢と言う状況にあり、つい先日アルディアの東にある都市デルドアが帝国に奪われかなりの劣勢に陥っていました。


 その報せが王都まで届き、私の父である国王はアルディアを守るために王国軍軍師であるラムダと、初の女性騎士団長カトレアに兵を与えアルディアに向かわせるとのことでした。


 しかし、デルドアとアルディアの距離は近く、おそらく援軍は間に合わないと思った私達は、王家に伝わる召喚術を双子の妹であるアスティアリカと共に行うことにしました。


 召喚にはいくつかの条件があり、帝国軍がアルディアの砦に辿り着く前に何とか召喚の儀式を間に合わせ、妹と二人で詠唱を開始しました。詠唱が無事に終わり召喚は成功したように感じていましたが、この部屋には直接は現れませんでした。


 焦っていた私たちのところに、帝国軍の兵士五人が部屋に侵入してきました。何とその中には帝国軍最強の男でありなおかつ召喚術をも使えるという、ベルトールの姿もありました。


 アスティアリカが防御障壁を展開し何とかベルトールの魔法を防ぎましたが、私達の護衛の騎士達はやられてしまいました。


 アスティアリカの障壁は強力ですが継続時間は長くはありません。絶体絶命だと思ったその時、部屋の扉から漆黒の全身鎧ガーディアを装備した人が入ってきました。


 その人は一瞬で帝国兵四人を斬り伏せ、さらにはあのベルトールをも撤退させてしまいました。その時の私達の安堵感は言葉には表せません。


 その方に御礼をお伝えしようと近づいた時、その方は倒れてしまいガーディアが解除され腕輪の状態になりました。


 気を失っているようでしたが、王国には存在しない黒髪の整った容姿。まず間違いなくこの方が私達の召喚した方でしょう。


 近くに居たアスティアリカも同じように思ったようで、私に声をかけます。


「クレア姉様。きっとこの方が召喚者ですよね?」


「ええティア。ガーディアを装備していた点、さらには黒髪。間違いないわ。まずは砦の生き残った者を集め、この方を客間のベッドに運び介抱しなければ」


 ギリギリの所で繋いだ命。何とかここから帝国へ反撃するために、まずはこの方の協力を得られるよう尽力しなければいけませんね。

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