第82話 ルーカスは思春期ですん!
「なんだ?特定外来生物でも飼ってたのか?」
「トクテイ……?なんですか?」
生態系に被害を与える、又は与える恐れのある生物の事を「特定外来生物」と言う。
「こっちでは何て言うんだろ?モンスター?魔物?」
「魔物ですか?個体によりますけど飼育できますよ?」
「マジで!?モンスター飼えんの!?」
「例えばですが、下水の処理にスライムなんかを放置していますし」
「モンスターを?下水とはいえ街の中に入れるの?下水から出てきて襲ってきたりしないの?」
「柵は付いていますし、意志の希薄な魔物なので刺激しなければ特に問題はないですね」
スライムはブルー、ブラウン、グリーン、パープルなど、色別に特性が違う。下水処理に使われるのは主に、ブラウンとパープルでゴミを分解、溶解し汚水を生活水に濾過してくれるらしい。
ははぁ〜ん、バクテリアみたいなもんだな?と独言る。
てっきりファンタジー世界なので、全て魔法の力でどうにかするのかと思いきや、意外とそうでもないらしい。
言われてみれば、冷蔵庫も「子ユキンコ」を使っていたし、ファンタジー世界もいうほどファンタジーファンタジーしていないのかもしれない。
そもそも、ハンターが連れている狼のような生き物も魔物のようなモノなのか?それを使役?ペット?している訳だし、飼えない事もないのか。
そんな話をしていると、話が脱線しまくる俺たちのペースに剛を煮やして、ルーカスが割って入ってきた。
「けど、血相変えて探し回っているって事はそんな可愛らしいモンスターでもないんだろ?」
「モンスターを『飼ってる』なんて一言も言ってないじゃない!」
「じゃあなんだ?妖精でも密輸してきたのか?」
「よーせえーをみつっちゃダーメだよー?妖精、密輸、ダメ、絶対!」
この世界の「妖精」が何になるのかは知らないが「妖精」からの「密輸」とくれば、なんらかの法に引っ掛かる事は容易に想像できる。
「ちょっと!神聞きの悪い事言わないでくれる!?」
「……カミギキ?」
「『人聞きの悪い』な?」
ベリアとマリアは慣れてきたのであまり気にしなくなったのだが、ルーカスは困っていたので、一応、翻訳しておいた。
「じゃあなんだって言うんだ?何を探しているのかが分からないと一緒に探せないだろ?」
「そーだそーだ」
「別にあんた達に手伝って欲しいなんて言ってないじゃない」と言ってそっぽ向いてしまった。
「な?な?ムカつくだろ??この状況でなんで逆ギレみたいな事が言えるんだ?って思うだろ??」
「お前は少し黙れ!」
なんで俺が怒られたの?と、ルーカスを指差してベリアに抗議の顔を向けると、人差し指を鼻に当て「しーっ」とされる。
……解せぬ。
「悪い事をしている訳ではないんだろ?だったら俺たちの手だって使えるもんは使わないとなんじゃないのか?」
メティスは「む〜」と唸ると席に付き、ぐるりと周囲を確認すると口を開いた。
「……………ク」
「なんだって?」
「………ーク」
メティスの声が小さくて何を言っているのかが分からない。俺たち3人は顔を見合わせて首を捻る。
……ーク?……ああ、なるほど。
「ポーク?豚でも飼ってたのか??非常食とか??」
「そーそー、さすがズッキー、丸々太らせて大きくなったら、カラッと揚げてトンカツに……」
「だからお前は黙ってろ!」
ルーカスに怒られた。
何かを言い返してやろうと思ったのだが、ベリアが「ヒデトさん、こっちこっち」と
手招きするので、大人しくベリアの横にハウスした。
俺を使って誤魔化す事が出来ないと悟ったメティスは観念したのか「ふぅー」とため息を一つ。
「……オーク」
「……オーク?いやいや、オークは飼えないだろ??」
ルーカスは否定する。
俺はオークと戦いを通じて友情が芽生えていたマリアの姿を思い浮かべる。
メティスに話しかけると怒られてしまうので、ヒソヒソとベリアに耳打ちする。
「まさかマリアの奴、♀オークと友達になったのか??」
「確かにオークでしたら知性のあるモンスターなので、利害が一致すれば共闘をする事もないではないのですが……」
「種族を超えた友情とか恋愛とかの物語なんて掃いて捨てるほどあるだろ?」
「それはありますけど、相手が種族的に仲の悪いオーク族が相手となると、物語だとしても、あまり聞かないですね。なくはないと思いますけど……」
「そうかー、俺の知ってるオークとの恋愛物語なんて『くっころ』くらいなもんだもんな」
「クッコロ?とはなんですか??」
「自分にイヤらしい目を向けるオーク達に捉えられた誇り高き女騎士が、これから起こるであろう己の鍛え抜かれた妖艶な身体を肴に開かれる卑猥な宴を前に、そんな辱めを受けるくらいならばと『くっ……○せ!』っていいながら、頬を染める表情が最高に可愛いですねっていうジャンルの同人……ゴホンッ、恋愛物語だな」
「なんですかそのワクワクするラブストーリーは!」
どうやら、ベリアのスイッチを押してしまったようだ。
確かに「恋愛物語」とは言ったけど「ラブストーリー」って言われるとなんかイヤだなぁ……。
「『頬を染める表情が最高に可愛い』という事は、この後、己の鍛え抜かれた妖艶な身体に起こる卑猥な宴を受け入れて……」
急に話が止まり5秒ほど眉間を抑えて考え込むベリア。
「……………いや、違いますね。己の鍛え抜かれた妖艶な身体に起こる卑猥な宴を想像し『期待して頬を紅潮させている』という解釈で良いんですよね!?」
「『己の鍛え抜かれた妖艶な身体に起こる卑猥な宴』ってフレーズ、気に入りすぎだろ!?なんで今の説明だけで100点満点の解釈ができんだよ?読解力が凄過ぎて怖いわ!!」
答え合わせに満足したのか一度大きく頷き、ベリアの妄想は止まらない。
「そして最終的にオーク達『が』誇り高き卑猥な女騎士に汚い欲望を全て搾り取られて、誇り高き卑猥な女騎士が無事に帰還して英雄になるって事ですよね!!」
「誇り高いのに卑猥な女騎士になっちゃってるじゃん?ていうか、だからなんでそこまで後の展開を当てら……」
「けど誇り高き卑猥な女騎士は、あの時の快楽落ち、あの時間が忘れられなくて自らオークの討伐に出向き続け汚い欲望に猛り狂う己の身を捧げ続け……」
ルーカスがいきなり「くわっ!」と目を見開きツッコんできた。
「さっきからうっせーんだよ!!『誇り高き低身長巨乳女アルケミスト』が『猛り狂う己自身』で『陵辱』されて『快楽落ち』したーって一体なんの話をしてんだよ!!??」
………ルーカスよ、誇り高いかどうかは知らんが「低身長巨乳アルケミスト」って、どこのベリア?
そんなお前の願望ダダ漏れの話はしてないんだよ。
絶対に死にますん! シャベリカ @syaberika
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