第78話 食べてはいけますん!
「じゃあやっぱりマリアがハンターって事で良いわよね?」
「『じゃあ』ってなんだよ!?こんな筋肉マンマンマーン!なハンターがいてたまるか!!露出が多くてアマゾネスみたいになってんじゃねーか!?」
「誰がペレンテシレイア様だ!ですわ!!」
「マリアがノリツッコミを……。ほら褒めて!みんなで褒めて伸ばすわよ!!」
「メティスさんはマリアさんをどうしたいんですか?」
ハンターのコスプレさせたりツッコミを覚えさせようとしたり。
「ペンてるの新型がなんだって?」
「ペンテシレイア様よ!ほんっっっとにいつか天罰が下るわよ?」
神様を軽視した言い方をしたのでメティスが物申す。
軍神アーレスとアマゾネスの女王の娘でアマゾネスの英雄らしい。
「ハンターよりもむしろそのペンなんちゃら様の方がしっくりくるわ」
「えへへぇ(テレ」
「人差し指と親指でクルミを粉砕するハンターなんている訳ねーだろ?」
「それほどでもぉ(テレテレ」
「そ、それはあれよ。猫の首根っこ摘んで持ち上げる為に……とか?」
「オーバーキルにも程があんぞ?猫さんは重いのか?50kgとかあんのか??それとも猫さんの首根っこはアダマンタイトかなんかでできてんのか??」
「50kgは何とかなりそうですが、さすがのワタクシでも、まだアダマンタイトは握り潰せませんわ」
「アダマンタイトの話じゃねーよ!?猫さんの首根っこ粉砕しようとすんな!?」
「今さらっと『まだ』アダマンタイトって言ってた事には突っ込まないんですか?」
「マリアならいつかやりそうじゃん?」
「あぁ言われてみれば……ってアダマンタイトですよ!?潰せるわけないじゃないですか!?」
「それはワタクシに対する挑戦ですわね?」
「そうではなくてですね!?」
「話が脱線しまくってんのよ!!ペットの話をしてるんでしょ!!!」
「チッ」
良い感じで話が逸れていたのにメティスにバッサリとぶった斬られた。
「とにかくペットはダメだ!仮住まいの宿なし生活してるってのにペットなんて飼えるか!!」
「ペットじゃないもん!使役動物だもん!!」
「お前確実に『ペット』って言ってたからな!?」
「使役するなら宿なしでも問題ないんでしょ!」
「なんで怒ってんだよ!?俺か?俺が悪いのか!?」
「ほんと、仲良しですね」
「本当ですわねー」
ベリアとマリアを睨みつけて「チッ」と舌打ちする俺とは逆に「ちょ、やーメーテーよー、ズッキーとはそういうんじゃないんだからねっ!」と腕を組んでプイッ、と怒るメティス。
「……なんでお前は満更でもなさそうな感じをだしてんだよ?」
「童○は思わせぶっておけば言う事聞くじゃん?じゃん?」
「うーん、確かに。ってなるかー!!」
「マリアこれよ!これがノリツッコミよ!!」
こうしてペットブームは頑なに首を縦に振らない俺の態度にメティスも諦めざる追えなかった。
それから数日後。
コソコソと後ろを気にしながら馬小屋へ行くマリアの姿があった。
馬小屋はお金のない初心者オブ初心者の冒険者でもなければ、わざわざ好き好んで寝泊まりする冒険者はいない。ヒデトも最初こそ頻繁に利用していたものの、今はギルドから仮住まいもあるので滅多に立ち寄る事もなくなった。
「お待たせしましたわ。どうぞ、召し上がれ。……そんなに慌てなくても誰も取ったりしませんわ。うふふ」
「マーリーアー」
「メ、メティス!?」
「何をコソコソとやっているのかと思ってきてみれば……」
「ち、違うんですのよ!これは、そう、非常食!その為に育ててるんですの!!」
「良いから見せなさ〜い!」とマリアは懐に隠そうとするのだが、マリアの背中越しから手が見える。前脚ではなく「手」が見える。子供?と思ったが皮膚の色が肌色ではないので、獣人族の子供を拾ってきたのかな?衛兵に届けて保護してもらった方が良いと思うのだけれど?と思ったメティスであった。
「それは多分だけど、衛兵に保護して貰った上で、両親を探して貰った方が良いと思うのよ」
「……衛兵に引き渡して大丈夫なんですの?」
「だって、子供を育てるのはちょっと難しいと思うわよ?」
「……」
「ね、その子見せて」
コクン、と頷くと子供を隠すように背を向けていたマリアが、おずおずと前を向いた。
まずメティスが思ったのは「それを非常食にしては絶対に駄目」だった。
「衛兵に届けても大丈夫なんですの?」
「いや絶対駄目!っていうか、絶対に届けないと駄目!!」
「どっちなんですの!?」
マリアの胸に抱かれたその子供は「オークベイビー」と言われるオーク族の子供だ。
「オークベイビーよね!?これ立派なモンスターよね!?!?」
「害はないですわ!」
「害がないってそんな訳……」
言われてみればオークは全ての人族を敵視していて気性が荒く、赤ちゃんだとしても人の胸に抱かれて大人しくしているようなものではない。マリアが力で無理矢理押さえつけている様子もない。
髪があるのは♀オーク。大人の♀オークの髪はゴワゴワしていて固く、剣を通さないのだが、子供だからか綺麗な髪をしている。そっとオークベイビーの髪を撫でてみるが抵抗しないどころか気持ち良さそうに目を細めている。
「シャルロッテですわ」
「初めて見たけど意外と可愛いわね」
「そうなんですの!可愛くて可愛くて外壁に迷子になっていたから放っておけなくて連れて帰ってきてしまいましたわ!」
「けどこの子モンスターよ?(ナデナデ」
「こんなに可愛いんですのよ!?」
可愛いけどなぁ〜と思いつつメティスは困ってしまった。
オークは魔族側に与している勢力なので、神族であるメティスとしては敵対勢力だ。
だが、可愛く害のないオークベイビーなら見逃しても問題はないだろうと思う事にした。
「オークベイビーってこんなに可愛いの?ウリウリしたくなるわね」
「メティスもシャルロッテの魅力にメロメロですわね」
「んで、親はどうしちゃったの?やっぱりペチっと?」
「そんな蚊を叩くみたいにいかないですわ!?」
「やっぱりバキッとボキッとグチャッと?」
「ボカッともビチャッともやってないですわ!?シャルロッテを拾ったところを探してみたのですけど見当たらなかったんですわ」
「ヴォーヴォヴォー」と鳴き?ながらマリアとメティスの顔を交互に見るシャルロッテはなんとも可愛らしい。
「これは確かに保護したくなるわね」
「そうでしょう!」
「けど、あのアンポンタンが見たら絶対許さないわよ?」
「分かってますわ……。ですからこうやってコソコソと……」
よりにもよってギルドの馬小屋に隠していては、ヒデトだけでなく冒険者でもギルドの職員にも見つかっても、ただでは済まない。
「いつから隠してるの?」
「一昨日ですわ……」
うるうるした瞳でメティスを見るマリア。
「チックショー!私が男だったら押し倒してるところだったぜ!!」と心の中でおっさんの様な事を思ったメティスは、このペットを隠すのに協力する事にする。
もとよりそのつもりでマリアの後をこっそりつけてきたのだ。
「神様のご都合スキル『結界』を張るわ」
「結界?」
「そ、人から気づかれ難くなって意識を逸らしてくれて多少なら声を上げても大丈夫。ただ勘の鋭い人なら気付かれちゃう事もあるけど。ま、ここならそんな武芸の達人みたいな人はそうそう来ないでしょ」
こうしてヒデトに内緒でペット?を買う事にしたメティスとマリアの二人であった。
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