第2話 絶対魔王討伐させたい神vs絶対行きたくない人間 2

前回のあらすじ 天国へ行きたい


「なんでよ!良いじゃない魔王討伐してよ!」

「歳はきっちり取るのに死ぬまで生ききるって何か怖いわ!」

「なんでよ!死なない体なんて人族の夢でしょ?」

「死なない体?生き返らせるって事はしっかり死んでんじゃねーか!」

「寿命があるって事と死ぬって事は関連付けられてて外せないのよ!」

「だったら不死身にしてくれれば良いじゃん!?」

「寿命があるから人族は生きるのに必死、ウォッホン、一生懸命なんでしょ!?」

「必死って言った?ちょっと言い方が酷いかなーって神様としての体裁を保つ為に柔らかく言い直した?」

「べ、別にそういうんじゃないしー神様ジョークだしー」

「ジョークになってねーよ!?魔王って事は魔族とかモンスターとかいるんでしょ?ただの人間がそんなとんでも生物に不死身ですらない生身の体で勝てる訳ないでしょ!」

「そこは大丈夫!質量保存の法則ってあるじゃない?そこまで大きくあなた達の世界と違わないけど、魔力やスキルがあるからどっちが強いかなんて一概には言えないし魔族にしたってすこーし人族よりも魔力の含有量が多いってだけで体格なんかほとんど変わらないわ」

「魔力が多いってどんくらい?」

「個人の能力に差は結構あるけど、平均で人族の20倍」


無理ゲー。そもそも魔法があるんじゃ質量保存されてねーじゃねーか。


「よーし天国は行きはあちらですか?」

「なんでよ!20倍なんて私達から比べれば誤差よ誤差!?」

「神様から比べれば俺達の差なんて対して変わらないのかもしれないけど!」


100と2000の差は酷いのに、100100と102000になると大した差に見えない。


「これは体格も変わらないってのも神様感覚じゃないんですか?」

「体格は本当よ!人族だって大きい人も小さい人もいるじゃない!?」


ん?人族?に比べて20倍?0は何掛けても0だよな?


「俺も魔法が使えるんですか?」

「そうよ!魔法が使えるのよ!不思議一杯よ!!」

「冒険できる?」

「大冒険よ!エルフがいるわ!」

「寿命長いの?」

「それこそ事故や病気で死なない限り生きるし、しかも皆美男美女!弓が使えるわ!」

「ドワーフは?」

「ものっ凄い武器作れるし力持ちで髭がモッサーってなってるわ!」

「そろばんは3級持ってるけど、剣道とか弓道とかやった事ないしなー。」

「大丈夫よ!魔法で肉体強化できるし、スキルで格好良い技なんかも使えちゃったりするから!」

「格好良い技?」

「そうよ!スパイラルピアーズ!なんつってバシュバシュバシュってバシューってやっちゃうわよ!」

「バシューってやっちゃったかー」


バシュれるくらいで俺の意志は変わらない。


「やっぱり天国で」

「なんでよ!!じゃあどうしたら私の為に戦ってくれるの!??」


これ本当に拒否権あるの?

「むふー」とエロスはふてくされているが俺の意志は固い。


「今魔王討伐に参加していただいた方には、私の分身ともう一柱付けて、二柱あげちゃう!!」

「お得ーってなる訳ないでしょ!神様の分身だから単位が柱なの?神様の分身を気軽に増やしたら有り難みなくなっちゃうよ!?通販番組並みにお手軽なの??とんでも能力寄越してくれれば良いのよ!?」

「もーう、この欲しがりさんめっ」

「能力の話ですよね?」

「性と愛の神の分身よ?そらもうあんた、あっちの方は凄いなんて言葉じゃ形容出来ないわよ、それが二柱も!?」


いやらしい顔をしてこんな宣伝文句で購買意欲を煽ってくる。中々出来る神様だ。

そんな事を言われたら一考の価値ありと判断せざる負えない。


「凄いで形容出来ない行為ってどんなんなんなんなん!?未成年ですけど大丈夫なんなんでしょうか!?」


興奮しすぎてなんななんなんなん♪


「あっちは15歳で成人よ!なんでもありありだわ!」


ビバ異世界!神様の分身貰って如何わしいドロドロのただれた生活をして余生を過すのも良いかもしれない!

だってチート能力くれないみたいだしね?しょうがないよね?


「……」


汚物を見る時の視線を俺に向けてくる。


「なーんちゃって」


テヘペロ


「ぐあぁあああぁ考えてる事がダダ漏れじゃねーか!!」


騙されたんだ!嵌められただけなんだ!?いや、ハメたかっただけなのか?


「何を冷静に自分にツッコミを入れているの?突っ込むなら私の分身にしなさいって、そもそも突っ込むなってお話でしょ!」


この神様も中々やりおるな。


「そらそうでしょ!?だって思春期だもの!童〇だもの!?格好つけて後悔するくらいなら格好悪くても良いから自分らしく生きるんだよ!!それが俺の生き方なんだよ!」

「良いこと言ってる風に言ってるけど最低ね」

「最低かもしれないけどその先に希望があるのなら、あえてその最低の汚名を受ける勇気!」


エロスは首をふりふりしながらため息を吐いて処置なしと肩を落とす。


「じゃあ異世界行ってくるからとんでも能力寄越せよ!」

「なんか怒って自分の痴態を誤魔化そうとする人っているわよねー」

「べ、別にそういうんじゃねーし!ただ行きたくなる様なメリットがないだけだし!」


全然ごまけてないし、何ならむしろ悪化したから話題を変えてみた。


「魔王を討伐したらイケメンに生まれ変われるのよ?」

「魔王討伐できれば良いですけどね!」

「薄毛に悩まされる事もなく」

「ハゲてねーし!」


頭を隠す様に手で覆ってみるけど本当に剥げてない。薄毛でもない。本当だよ?ノリの良い俺はエロス様のノリに合わせてあげてるだけなんだからね!?


「ヒント:お父さん」

「お父さん、あなたのせいで俺、訳が分かららない世界で訳の分からない魔王討伐決心しなくちゃいけなくなるかもしれません」

「それにね、あなたのいた国の富裕層の割合が2%で超富裕層が0.15%なのね、0.15%の中に入れるのにメリットがないというの?」


やばい、説得されそうだ。


「その上イケメン仕様で、義理の母に姉妹も、えーい!可愛いおさげのツンデレ幼馴染みまで持ってけドロボー!」

「可愛いおさげのツンデレ幼馴染みまでつけてこのお値段なんですか!?」


いよいよ通販番組になってきた。


「だってこのまま普通に転生したら○○な親の元に生まれて△△な顔で✖️✖️✖️な人生を歩むかもしれないのよ?それで良いの?」


親身になってる風にこんな事言うのよ?これは詐欺師の常套手段だ。


「あげるだけあげておいて今度は脅迫ですか?言う事聞かなければ親ガチャ失敗させちゃうぞー?ってそういう事しちゃうんだー?神様がそういう事しても良いんだー?ご町内の皆さまー、神様はー天界公認の8○3でーす」

「ちょ、ちょっと大きな声で言うのやめなさいよっ、周りに聞こえちゃうじゃない、そういう事もあるわよって忠告してあげてるだけでしょ!?」


勿論周りには人どころか物もない。


「実際事が起こったらどこからともなく現れて『だから言ったじゃないですかー』って来るんでしょ?その時は『あーあれはあの時だから破格の条件だっただけでー』とか言って身体一つで異世界に行けって言うんでしょ!?」

「そ、そんな事しないわよ」

「はい、どもったー後ろめたい事があるからどもったー」


何だか楽しくなってきた。


「行けば良いんだろー行けば!はぁー、こうやっていっつも弱者は搾取されるばっかでよー、搾取する側は搾取される側の気持ちなんて考えもせずに代わりは他にいくらでもいるってよー」


俺はノリノリだ。


「あ、そう。行ってくれるんだ?」


あれ、なんか明るくなってきた?


「裁判だー訴訟だー最高裁まで戦うぞー」


光ってるのは俺?


「うふふ、言質はとったわ!」

「なんだって!?」

「言ったでしょ?強制じゃないって。自分から行きたいって思わせた上で言質が取れれば契約成立!」


確かにお父さんあたりで大分心が動いていたけどさ…。やっぱり剥げてんじゃねーかって?心配なだけだよ!


「ちくしょー詐欺だ!陰謀だ!クーリングオフだ!!」

「安心して良いわよ、あなたが私の分身に欲情しない様に魅了の耐性だけは付けておいてあげるからー、ただれた生活になられても困るからねー」

「心配する所ちっげーだろー!心の準備が!?浮いてる!?何これ怖い!」


魔王倒すまで死ねない異世界旅行とかちょっと勘弁して欲しいんですけど!

吸われてる!なんか吸い込まれてるってやばいって!


「変な小芝居するんじゃなかったあぁあああああ」

「いってらっしゃ〜い」

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