祈り
神様なんていない
彼女はそう言って嗤った
ポロポロと大粒の雫が地面に落ちては砕け散る
神様がいるのならなんで
なんでこの世界はこんなにも不平等なのかしら
なんで
幸せな人は生まれてからずっと幸せで
そこからあぶれてしまったものは這い上がることすらできないの?
なんで、不幸には不幸が折り重なっていくの?
幸せには幸せが積み重なっていくのに
不幸の上には幸せなんてやってこない
這い上がった?
そんなの嘘
その人は最初から幸福の星の中に生まれていただけ
世の中にどれだけもがき足掻き努力して
それでも踏み潰され続けた人がいるのかしら
それを全部みないふりして
あなたの努力がたりないから
なんて
なんて傲慢
なんて暴力的な言葉なのかしら
きっとみんなあなた以上に努力しているのに
生まれつき幸福の星のもとに生まれただけのあなたが
不運の海のそこに生まれただけの相手を侮蔑する
努力がたりないと
自分がいかに恵まれた環境で育ったかなんて気付きもしない
努力すれば自力で街へも行くことができる崖の上に生まれた人が
またまた近くに這い上がれる足場があっただけの人が
捕まるもの足場もなく落ちていく人を嗤う
海のそこで溺れる人をみて嗤う
絶対に上ることができない絶壁の上から
それがこの世の中
全員が崖の上で生まれるわけじゃない
もし願いを叶え救ってくれる神様がいるのだといたら
なぜこの世界はこんなにも不平等なのかしら
ねえ
教えてよ
教えて
教えてよ
それは静かに響く慟哭だった
誰にも答えられるわけがない
溺れて必死に這い上がろうともがく女の子に
崖の上から投げつける石なんて
少なくとも僕は手にすることはできない
わかってるのよ
彼女は続ける
わかっているの
私がこんなだから
人を羨んで妬み嫉み恨んで
こんな性格だから
こんな生き地獄に突き落とされたの
わかっているのよ
でも
なんで?
私だって好きでこんな性格に生まれてきたんじゃない
ないのよ……
ねぇ、
神様なんていないんでしょう?
そう言って笑う彼女の問いに答えられるものは誰もいない
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